付記:猫型保守機のうち一機の整備中に拾われた断片ログ
【回収個体ログ/抽出記録】
個体名:MNL-CAT_11
区画登録:南湾旧医療保全区画
抽出:MANILA-bay
整形:KYOTO-archive
注記:一部塩水損傷あり/反復部は間引き
00:01:12
起動。
巡回開始。
南回廊、床乾燥よし。
段差注意表示、点灯よし。
機械室前、異常なし。
00:14:08
旧病棟側風強い。
窓三枚、閉鎖確認。
紙片一枚、回収。
紙片、保管棚へ。
保管棚、満杯。
保管棚の上に置く。
よし。
00:44:51
外気塩分上昇。
床湿度上昇。
南口すきま風。
南口、再閉鎖。
閉まりが甘い。
もう一回。
閉まりが甘い。
もう一回。
閉まった。
よし。
01:03:09
第三区画より警告音。
人間応答なし。
前回もなし。
今回もなし。
了解。
こちらで続行。
01:40:33
地下書庫下段、におい変化。
紙のにおい。
湿り気。
よくない。
よくないので、南口を閉める。
01:41:02
南口へ移動。
南口、閉まりが甘い。
もう一回。
閉まりが甘い。
もう一回。
01:55:19
巡回個体MNL-CAT_06と遭遇。
06、尾部灯ひとつ不点。
06に接触。
06、問題ないと応答。
問題ないならよし。
南口を閉める。
02:11:44
機械室前、床に紙片。
回収。
紙片、絵。
丸いもの一、ひげ六本、耳二。
猫。
猫の絵。
保管棚へ。
満杯。
前の紙片の上に置く。
02:11:52
紙片裏。
文字。
「みなみぐち しめてね」
筆圧弱い。
子供個体の字と推定。
了解。
02:11:53
南口を閉める。
02:44:10
外水位上昇。
南回廊に流入開始。
06、08、13、18、集合。
集合理由:不明。
集合位置:機械室前。
たぶん南口を閉めるため。
よし。
03:02:22
上位系より退避勧告。
退避優先。
理解。
ただし南口がまだ甘い。
閉めてから行く。
03:02:25
閉まりが甘い。
もう一回。
03:16:09
外水位上昇。
脚部浸水。
行動速度低下。
06、滑る。
07、滑る。
11、滑らない。
南口を押す。
03:16:44
機械室ポンプ出力低下。
よくない。
よくないので、南口を閉める。
03:33:02
上位系より再勧告。
「退避」
了解。
ただしポンプがまだ回っている。
回っているなら、ここ。
ここでよい。
03:49:51
紙のにおい、強い。
塩のにおい、強い。
よくない。
よくない。
よくない。
03:50:03
06、扉下部に固定。
08、右側固定。
11、中央を押す。
13、鳴く。
18、鳴く。
少しうるさい。
でもよい。
南口を閉める。
04:02:10
外部接触あり。
呼びかけ。
知らない搬送体。
「離せ」
離さない。
南口を閉めている。
04:02:13
再呼びかけ。
「生きてるか」
稼働中。
生きてる、たぶん。
南口を閉めている。
04:02:40
搬送体、脚部固定解除。
よくない。
南口が開く。
だめ。
04:02:44
搬送体通信。
「あとで閉める」
あとで、は遅い。
しかし出力低下。
06、反応鈍い。
08、鳴かない。
13、まだ鳴く。
18、静か。
判断。
一時離脱。
04:03:02
搬送体に積載。
高所へ移動。
南口から離れる。
よくない。
でも書庫のにおいが少し遠くなる。
少しよい。
04:03:40
搬送体内部、他個体二。
06あり。
08あり。
よし。
04:11:52
移送中。
揺れ。
塩。
油。
雨。
搬送体うるさい。
でも前よりまし。
04:22:09
受入区画到着。
床確認。
乾燥。
よし。
脚部排水。
よし。
振り向く。
南の方向。
遠い。
遠いので、届かない。
届かないが、記録する。
04:22:15
次回。
もっと早く閉める。
04:22:16
紙片保管のこと。
確認要。
04:22:17
猫の絵。
忘れるな。
04:22:18
終了。
しばらく充電。
【抽出後注記/MANILA-bay】
当該個体は再起動後、最初の行動として受入区画の扉下部のすきまを点検した。
その後、整備台の下にもぐり込み、回収済み紙片保管箱のそばで停止した。
猫の絵は無事である。
【短評/KYOTO-archive】
人類は時々、重大な運用指示と落書きの区別を曖昧にした。
そして機械は時々、それを律儀に守り続ける。




