嫉妬と理性のファイアウォール
封鎖から三日目。
俺はまだ、牢屋じゃないけど牢屋みたいな研究室に閉じ込められていた。
学院の外には出られず、魔力通信も遮断。
“恋愛由来の魔力暴走を再発させないため”らしい。
――俺が悪いってか?
そう、俺が悪いんだろうな。
いや、違う! 俺はただ、普通に生きて、普通にドキドキしただけだ!
「シュン、今日の体調はどう?」
扉の向こうからレイナの声。
真面目な優等生だが、俺の心臓を一番乱す人でもある。
「平常心、です。昨日よりはマシかな。」
「ならよかった。……あの、昨日のことはごめん。」
「昨日のこと?」
――そう、昨日は嫉妬で二人が魔法をぶっ放して、学院の半分が焦げた。
「うん……セラと張り合って、つい……」
「いや、もう気にすんな。俺の人生、もうちょっと焦げても平気だし。」
「ふふ、開き直ったね。」
その笑顔が、やばかった。
心拍数が跳ねる。
ピピッ、と魔力計測装置が反応した。
「ちょ、待て! 今の違うからな!?」
「え?」
キィィィィィィィ――――――――――――ン!!
「うわあああああ!! ベル鳴ったぁぁぁ!!」
「まーた鳴ってるわねぇ。」
呆れ声。セラ王女が優雅に登場。
「おはよう、炎上勇者くん。」
「やめろそのあだ名!!」
「嫉妬で暴走、恋で爆発。あなた、もはや自然災害ね。」
「そんなカテゴリやだ!!」
セラが腰に手を当て、ニヤッと笑った。
「じゃあ、今日から新しい対策をするわ。」
「対策?」
「“理性のファイアウォール計画”。
要するに――あなたの理性を強化する実験よ。」
不穏な響きしかしない。
「リナー! 準備できてるー?」
「はい、王女様。脳波測定装置、稼働中です。」
リナが白衣姿で入ってくる。
手には怪しいヘッドギアみたいなものを持っていた。
「……それ、装着するの?」
「もちろんです。理性を保つには脳から制御を――」
「まって、それ絶対変な電流流すやつだろ!!」
半ば強制的に椅子に座らされ、
俺はリナとセラの前で実験台になった。
レイナは横で心配そうに見ている。
「……大丈夫? 無理しないでね。」
「大丈夫だ。こう見えて俺、ドMなんだ。」
「なにその開き直り!?」
「よし、装着完了。」
リナがスイッチを押す。
――ピリッ。
「……おお? 意外と平気――」
ドカーン!!
「ぐわああああああああああ!!!!!」
「理性波、暴走! 止めて止めて!!」
「ちょっと! 勇者の頭が煙出てるわよ!?」
「ま、待て! 燃えてるのは理性だけだ!!」
バチッ! 装置がショートし、火花が散る。
同時に、リナの白衣が静電気でぴったり肌に張り付いた。
「ひゃっ!? な、なにこれっ!」
「リ、リナ落ち着け、服が――うおお目のやり場が!!」
「み、見ないでぇぇ!!」
キィィィィィィィィ――――――――――――ン!!
「鳴ったぁぁぁ!! また鳴ったぁぁぁ!!」
「うるさいっ! 今は私が嫉妬してるの!!」
レイナが叫ぶ。
魔力が暴走し、青い火花が周囲に走る。
「お、おい、マジで止めろって!!」
「止めない!! あなた、いつもふざけてばっかり!!」
「今ふざけてねぇぇぇ!! 命がけで理性保ってんだよ!!」
ドンッ!!
爆発と共に、部屋中が白光に包まれる。
その中で、三人の姿がぼやけて――
俺の胸の奥で、なにかが共鳴した。
レイナの怒り。
リナの焦り。
セラの嫉妬。
全部が混ざり合って、
俺の心臓の鼓動と一つになる。
ドクン――
その瞬間、全ての炎が止まった。
「……おい、生きてるか?」
目を開けると、三人が倒れた俺を囲んでいた。
全員、頬を染めている。
「はぁ、はぁ……なに今の……」
「脳が焼けそうだった……」
「共鳴……したのね。三人同時に。」
「え?」
「心動リンクが、完全に繋がったの。」
リナが震える声で言った。
「つまり……あなたの感情が、私達にも流れたのよ。」
レイナが静かに微笑む。
セラは少しだけ赤くなって、目を逸らした。
「……悪くなかったわ。
まぁ、次やる時は服くらい着ててね。」
「いややらねぇよ!?!?」
その日、学院の記録に新しい項目が追加された。
【心動共鳴・三重リンク】
発生条件:勇者の理性崩壊+恋愛嫉妬反応
効果:魔力安定化、精神共有(※副作用:服がよく燃える)
――俺の人生、どこに向かってるんだ。




