#3 恋愛映画
映画の内容はまあ、良くも悪くも王道な感じだ。
幼馴染みが様々なトラブルを乗り越えて付き合うことになる……って感じだが、出演者の演技と演出、カメラワークでかなり引き込まれる感じの作品になっている。
普段はこの手の映画は見ないオレでもかなり楽しめる内容だ。
様々な場面が展開し、いよいよクライマックスに差し掛かる。仕事で海外に行く女を男が引き止めるシーン……結末はどうなるんだろうな……。
オレは何気なくマコ姉を見る。マコ姉は真剣な表情でスクリーンを見つめている。
楽しみにしてたからな。
スクリーンにまた目を向ける。いよいよクライマックスだ。
女はそのまま海外へ行ってしまう。
そして数年後、男の前に彼女が現れ、そこでエンディングになった。
エンドロールが流れ終わり、館内が明るくなる。
うん、結構楽しめたな。と言うか、ほんとに話題にならないのが惜しいくらいの出来だと思う。
「フレイ……どうだった?」
「あ、ああ…すげぇ、すげぇ、よかった……うう……」
めちゃくちゃ泣いてる。うん、目を抑えながら大泣きしてる。
そこまで……いや、確かにいい映画だったけどさ。
「あー……はい、ハンカチ」
「ああ、わりぃ……」
フレイは涙を拭くと、鼻までかむ。
うーん……まあ、汚いけど、仕方ないか。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……うん、大丈夫……だ……」
とは言うけど、目が真っ赤だぞ、おい。
「とりあえず、出ようぜ」
まあ、ここにいるわけにもいかないからとりあえず出るか。
フレイとマコ姉と一緒に外に出る。
「じゃあ、ゴミを片づけてきますから。カズくん、フレイさんをお願いしますね」
マコ姉はそう言うとゴミをもっていってしまう。
オレはフレイをベンチに座らせ、その横に座る。
うん、正直、こういうのは苦手だ。俺がゴミ捨てに行けばよかったかもしれない。
そんな事を考えていると、フレイは何とか落ち着いた顔を上げる。そして、ハンカチをオレに返してくる。
「ぐす……ありがとな……」
「あ、ああ、気にすんな」
「なんだよ。俺が泣くのがそんなに変な事なのかよ」
フレイは少し不機嫌そうな顔になる。オレの戸惑いが表情に出ていたらしい。
いや、まあ、それは。
「いや、まあ、意外かなって」
「うるせぇ。ああいう話が好きなんだから仕方ないだろ。はん! わかってるよ。似合わねぇって言いたいんだろ?」
「別にそんな――」
「フレイさん!」
いつのまにか帰ってきたマコ姉が会話に割り込んでくる。
そして、フレイの手をしっかりとつかんだ。
「フレイさん。ああ言う感じのお話が好きなんですか?」
「え? あ、ああ、好きだけど……」
「じゃあ、私のお気に入りの映画を一緒に見ましょう!」
「え?」
「カズくんは全然こういうお話の良さをわかってくれないんですよ」
マコ姉はメガネの奥の目を輝かせながら語る。まあ、マコ姉は恋愛系の話が大好きだからなぁ。
でも、そんなに詰め寄ったらフレアだって困るだろ……。
「わかるぜ!」
え? なんですと?
「そうなんだよ。俺も仲間の男ばっかりだったんだけどさぁ。この手の話はほんと通じなくて、参ってたんだよな」
「わかります。話が合わないってありますよね! うちの会社でも男性は話が合わないし、女性も少ない上にみんな話に乗ってくれないんですよ」
「うんうん、わかるわかる。オレも同僚の女剣士に話したら、将軍って子どもみたいにかわいらしいご趣味をお持ちなんですね、とか言いやがるんだぜ?」
二人はすごく盛り上がってる。え? フレイはそんなに好きなのか?
なんだろ、すごく疎外感を感じるんだけど。
「ところでどんなお話が好みなんですか?」
「オレか? そうだな……やっぱ、最初は対立してたけど、何回も戦って、お互い実力を認め合う……とかだな」
「いいですね! 私は幼馴染みのお話が大好きなんですよ!」
「あ、わかる! いいよな!」
あ、こりゃ、完全においていかれてるな? 仲がいいのは構わないんだけどさ。
でも、これは話が終わらないパターンだよな……。
「はい、ストーップ! 買い物の時間が無くなるって」
「なんだよ。せっかく盛り上がってるのに邪魔すんじゃねぇよ」
フレイは不満そうな顔でオレを見る。そんな顔されても困る。
「はいはい、もう、ほら、買い物行くぞ……つーか、その前に腹ごしらえでもするか」
時計を見る。なんだかんだやってたら、もう昼近い。たぶん買い物も時間がかかるだろうから先に飯を食べときたいな。
「そうですね。じゃあ、先にお昼にしましょうか? 何か食べたいものはありますか?」
「オレはなんでもいいけど……フレイはどうする?」
「え? 俺か? 俺は別に何でもいいぞ」
「なんだよ。遠慮しなくてもいいのに」
「いや、どんな店があるとかよくわからないからな。任せるぜ」
「そうか、そうなると……」
やっぱり肉か? でも、むこうでもステーキとかそう言うのは珍しくもないからなぁ。せっかくなんだから、珍しいものを食べてもらいたいけど……。
「そうだ! 寿司! 寿司がいい!」
「お寿司……ですか?」
「ああ、向こうの世界だと食べられなかったんだよ」
そうだ。むこうじゃ生の魚なんてとてもじゃないが、衛生面とかで危なくて食べられなかった。
だから、こっちの世界に帰ったら食べたいと思ってたんだよな。
これはこっちの世界でしか食べられないし、フレイも喜ぶはずだ。
「スシ? なんだそりゃ」
「おう、生の魚をコメの上にのせて食べるんだよ。こっちの世界じゃごちそうなんだ」
「え? 生の魚を食べるのか? おい、大丈夫なのかよ」
「ああ、こっちじゃ普通だぞ」
「そうなのか……よし、なら食べてみるか」
フレイは笑いながら言う。
「マコ姉もそれでいいよな?」
「はい、私は構いませんよ。じゃあ、回転寿司のお店は一階ですからさっそく行きましょう」
「ああ、じゃあ、行こうか」
オレとフレイとマコ姉の三人は一階へと向かった。
あ、やばい、考えただけでよだれが口の中にあふれてきた。今から食べるのが楽しみだ。




