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礼御は蓮武と分かれ帰宅した。
明日は午前中に出発し、目的の場所へ向かうらしい。蓮武は「十分に休んで、備えて―――覚悟しておけ」と言い残し、去った。
「ただいま」
抑揚のない声で礼御は自宅の扉を開いて、部屋に入ると、同居妖はまったく出迎えもせず、またゲーム画面の前に座ってはしゃいでいた。
「お前らな……もう少し可愛らしく主の帰宅を迎えられないのか」
礼御がベッドに腰掛け、そうぼやくと、二人の妖怪は適当にそれに答える。
「おかえり、ダーリン」(玉藻)
「おかえり、お兄ちゃん」(紅子)
「…………」
礼御は溜息をつき、そのままベッドに寝転がった。濃い夜だった。いや、まだ日は明けてないのだけど。
横になったまま、しばらくの間ゲーム画面を見た後、礼御は、風呂に入って寝るか。丁度全裸だし、と思い、起き上った。
それと同時にどうやらゲームが一段落ついたらしい。玉藻は「うっしゃー!」と、紅子は「やったー!」と歓喜の声を上げ、礼御の方を振り返った。
「「…………」」
礼御は二人の妖から見ると、全裸で見知らぬタオルケットにくるまっているのである。
「礼御……お前、まさかその姿で帰ってきたのか?」
「あ? そうだけど?」
礼御は玉藻の質問に何気なく、そう答えた。するとみるみる内に二人の妖が青ざめた。
「……へ、変態じゃ」
「露出狂!」
「おまわりさん、わしのご主人様です」
「二人の少女を監禁してます」
交互にまくしたてるものだから、礼御は焦って否定する。
「待て待て! 誤解だ!」
しかし玉藻も紅子も礼御の性癖を目の当たりにしたと、抱き合って震えていた。
「何が誤解じゃ、この変態! いつもわしらをエロい目で見ておったのじゃろ? 近寄らんでくれ!」
「いつもあたしにエロい格好させて、夜は全裸で露出を楽しんで……。とんだキチガイだ!」
緩んだ顔でエロゲに熱中する奴と、いきなり全裸にしてくる奴に言われなくはないな。
礼御は呆れつつ、こんな変態まがいの姿で帰宅することなった原因を二人に話した。二人は少し真剣な表情になったものの、ゲームを前にする表情に比べたら、比べるまでもなくどうでもよさそうであった。
「そんなことになったのか……」
礼御がこの夜起こったこと、そして明日のことは話すと玉藻はゆっくりと頷きながらそう言った。
「大変だったな」
「まあな」
「では明日で……色々変わるのかもしれないな」
そう玉藻は呟くと、「よし」と勢いよく立ちあがった。そんな玉藻に紅子は「なんじゃ、なんじゃ?」と興味を大いに引かれていた。
「頑張った礼御にご褒美だ!」
「いや、俺はとくに頑張っていないぞ?」
「なるほど、ご褒美じゃな!」
「あぁ、ご褒美だ」
玉藻と紅子は互いを見つめ合い、にやりと笑った。
「そんな変態なご主人様は何を要求かのぉー?」
「そりゃ、変態だものぉ。決まっている!」
玉藻と紅子は全裸になり、全裸の礼御を風呂に引っ張り込んだ。有無を言わさない。ご丁寧に、姿の変えられる玉藻は――なぜか――幼い少年に化けていた。紅子も「もっと若い姿になれれば!」と本気で悔しがっている。
礼御は抗うのも面倒だし、明日に向けて身体を休めるためにも、二人のおせっかいを受け入れた。




