その45
誤字報告いつもありがとうございます。
「1階層は改めて検討するとして、これが2階層の図面、通路以外にはコカトリスの出現地点に設定してもらいたいのよ。もちろん通常のコカトリス部屋とブラックコカトリス部屋と分けるけど」
「それはいいとして、狩れるだけの力を持った冒険者は確保できてるんですか?狩れなければ意味はありませんよ?」
「それは大丈夫、ブラックはともかく通常のコカトリスであれば、私と旦那の2人でも狩れるから」
「はぁ… それよりもお野菜の狩場を作った方が良いと思いますよ? アレも弱い魔物を選べば初心者でも狩れますし、需要はあるから売れますしね。この町のお野菜は外部から流通させているのでしょう? 自給できるようになれば安心感が増えると思いますが」
「弱い魔物と言うと、例えば?」
「イモとネギなら初心者でも余裕で狩れると思いますし、タマネギとトウキビは遠距離から攻撃してきますので経験者でないと厳しいかもしれません」
「イモとネギかぁ、どっちも需要は高いよね。確かに自給できるようになるんだったら町としての出費は減るけど、商人から苦情が来そうね」
「それを考えるのは領主様であり代官様です。次に進みましょうか」
テネシーさんから出された要望は、どれもこれもギルド最優先になっていて、完全に迷宮の利権を取り仕切る内容になっていました。確かに町に住む低取得者にとっては良い話ではありますが、これでは商人と領主様関係から恨みを買うばかりではないでしょうか。
しかも… 隠し通路を設けて自分達の家族を匿うための部屋を用意するとは…
「これだけ改変してしまうと、利権を求めて貴族が必ず動きますよ? お野菜やお肉に対する税が上がってしまいそうです。そうなると今まで以上に高価になってしまう可能性が高いですね」
「一応冒険者ギルドはどの国にも属さない組織だから、あまり無茶な圧力は来ないと思うのよ。もちろん表向きは…だけどね。ギルド本部としても、職員に給金が出せるだけの収益があるのなら反対はしないと思うしイケると思うんだけど」
「表向きはってわかっているのでしたら、ちゃんと裏対策はしてください」
「わ、わかってるわよ。とにかく、1階層と2階層は狩る人がいない状況だから、改装するならここが一番なわけよ。コカトリスのエリアには、初心者や力の無い冒険者が入っていかないように検問を設けて死者を減らして行こうと思うの」
「まぁ死者が減るのは良い事ですが、迷宮の基本は人集めからです。1階層にお野菜のエリアを作り、力の無い初心者や孤児達にも狩れるような場所を作れば間違いなく繁盛するし、飢える者が大幅に減ります。売らないで自分で食べる事が出来ますからね。まぁただ、獲物の取り合いや横殴りなんかが横行しそうなので、広いエリアにしなければいけませんけど」
「ふむふむ、それで2階層にコカトリスの狩場をって訳だね?」
「その方が良いと思いますよ。コカトリス部屋は立ち入りを制限するのですよね? そして3階層にタマネギとトウキビといった、少し難易度の高い魔物を置けばいいのです。ドリアードはブラックコカトリスと同等以上あると思うので危険ですね」
「うーん、まだまだ詰めが甘かったかな」
「大甘ですよ、ここは迷宮の所有者としてはっきり言わせてもらいます。 やり直しです!」
「ぐぬぬ…」
ぐぬったってダメです、ノリと勢いだけで決めたような案に同意などできません。
「もう少し冷静に考えて練り直してくださいね、私が元の世界に帰るまでに」
これ以上は時間の無駄だと判断し、立ち上がります。使った時間は2時間ほどでしょうか、この時間なら夕食までの間に制御室の置くテーブルを探しに行けますね。
「わかったよ、すぐに練り直すから。案がまとまったら宿に使いを出すから、その時はよろしくね」
思いの外あっさりと引き下がってくれました、雑だった認識はあったんでしょう。
よし!それでは買い物の続きをしましょう! テーブルは適度な大きさで頑丈なのが良いですよね、最終的には制御室の置き去りにしても良いと思うので、高価な物は避けましょうか。
午前中に回った工業区域に再び向かい、家具や調度品を制作販売している所を探します。いや、ソファーとテーブルはセットになってる場合がほとんどですね、もう一度ソファーを買った工場を伺ってみましょう。
そして本日2度目の訪問、工場長らしきおじ様に声をかけて伺ってみます。
「ふむ、さっきのソファーに合うテーブルか。まぁ知ってるとは思うがここは迷宮都市だ、貴族や高位な奴なんか全然いない町だからな、高級品は少ないし、新規で作るのなら時間もかかる」
「いえいえ、高級志向はあまりないので普通ので構いません。在庫があるのならば見せていただきたいのですが」
「そりゃー構わないぞ、嬢ちゃんは金払いは良いからな、好きなもん選んでくれ」
おじ様に連れられて製品を置かれているスペースにやってきました。ふむふむ、前世の記憶にあるホームセンターの家具コーナーのような感じで並んでいます。
製品は木目調しかありませんが、なかなか見た目の良い物が揃っていますね… サイズはどうしましょう、制御室はそれほど広くはありませんが、少しくらい大きめのテーブルでも問題は無いでしょう。
「それでは、これにします。おいくらですか?」
「おっ、それは金貨2枚だな。確かにこの色合いならあのソファーに合うと思うぞ」
選んだのは白っぽい木でできたテーブルで、大きさは60センチ×100センチくらい。手頃な大きさなのではないでしょうか。
金貨2枚を支払ってテーブルを収納します。他にも製品があるので色々と見せてもらい、他に欲しいものが出来たらまた来ると告げて工場を後にしました。
「あっさりと決まったので時間が余りましたね、制御室に行って設置でもしてみましょうか」
思い立ったが吉日という事で、後は夕食を食べて寝るだけなので、大量の魔力を使ってその場から制御室まで転移する事にしました。
さすがに戦闘前に転移魔法で消耗する事はしません。薄暗い制御室、部屋の真ん中には大きな水晶のようなコアが鎮座しています。 金色コカトリスがいた部屋に向かう扉の反対方向に、とりあえずソファーを置いてみました。
「やはり良いソファーですね、これならお昼寝も捗ってしまうのではないでしょうか」
せっかくなのでテーブルも置き、眺めてみる。
「これはアレですね、お茶セットが必要かもしれません!」




