その41
誤字報告いつもありがとうございます。
「あ、アリシア様、レシピの方は書き終わっていますのでこれをどうぞ」
食堂に入るなり料理長さんが駆けつけてきてくれました、ありがたい事です。
「ありがとうございます、これで私の野営料理も満足のいくものになるでしょう」
「いえいえこちらこそ、頂いたブラックコカトリスのお肉… 非常に美味しい物でした。もしよろしければ、コカトリスの単価の倍値でもう2つほど買い取りたいのですが、いかがでしょうか?」
「いえいえ、もう2つくらいでしたらレシピのお礼の追加という事で構いませんよ。是非とも受け取ってください」
いきなりたくさんのお肉を納品されても大変だと思ったので、お礼として2つお渡ししましたが、正直少ないと思っていたのですよね。使い切れるのであれば、追加で出す事くらい何ともありません。
「本当ですか? いやぁ有難いです。まだ流通していない肉なのでしょう? とても貴重な食材を味わえると店主も喜んでおります」
「いえいえ、是非ご堪能下さいませ」
「それでは夕食の方をお出しします」
「はい、お願いします」
料理長さんも喜んでいるようで良かったです。今日はちょっとワインでも飲んでしまいましょうか! 一応この世界でも生まれた世界でもすでに成人しているのですが、なぜか前世の記憶が邪魔をして、20歳未満は…と自重していました。
しかし、今日は新たなソースを手に入れたという事でお祝いしてもいいでしょう。
「あ、今日はワインを頂けますか?」
「はい、お待ちください」
ふふっ、お酒なんて前世以来ですね。少し楽しみです、今の体はお酒には強いのでしょうか… これも調査ですよね!
ワインはすぐに出てきたので、一応礼儀に則って香りを楽しみ、スっと喉を通しました。
「ほほぅ、これは甘くて美味しいですね! 今後はワインも買っていきましょうかね」
前世の記憶では、ワインのアルコール度数は12%前後でしたか… 喉もお腹も熱く感じますね。ああ、段々顔も熱くなってきました、もしかして私はアルコールに弱いのでしょうか。
いえいえ、アリシアとして産まれてから初めてのお酒です。きっと体が驚いたのでしょう、これから慣らしていけば大丈夫ですよね。
まぁ弱いなら弱いで、少量で酔える省エネ体質という事で考えましょう。
「さて、それでは食事にしましょうか」
「アリシア様、ギルドの方がお見えです」
…、なんという間の悪さ。ま、まぁそろそろ来ると分かっていて食堂に来たのは私ですから、これで怒るのは筋違いですね。
「あ、アリシアさん、食事の邪魔をしちゃったみたいだね。私もご一緒してもいいかな?」
「はぁ、別に構いませんが」
テネシーさんが登場です。なんでしょうか、今朝は結構疲れ切った顔をしていたと思ったのですが、なんか元気ですね。
テネシーさんは簡単な軽食を頼んだようで、注文してすぐに届きました。それじゃあ私も遠慮なく頂きましょう。
ワインで喉を濡らしながら、ナイフで切り分けたお肉と野菜を食べていく。やはり野営時の自作ご飯と違ってとても美味しいです、まぁ比べたら怒られますね。特に会話をすることも無く、もくもくと食べていきます。
テネシーさんはパンをスープに浸しながらもチラチラと視線を送ってきます。ふっふっふ…美味しそうなのでしょう、ちゃんと注文すれば良かったのです、まぁお値段は高めだと思いますがね。
ほどなくして夕食タイムは終了、この時点で9時少し前。今から話し合いなんてちょっと嫌ですねぇ、なんとか追い返せないでしょうか。
「ようやっと話が出来るね、アリシアさん。それでね? まだ案は煮詰まってはいないんだけど、コアの事を詳しく知りたいと思って聞きに来たの」
「そうですか。確かに迷宮内部を改変させる力はありましたよ、無制限ではありませんが」
「え? 何か制限があったの?」
「ええ、それと49階層を少しばかり改変してみまして、野菜がドロップする魔物が出現するようになっています。実際に倒して食べてみましたが、良いお味でした」
ガタン
おや? 何か後方で異音が… くるりと振り返ってみると、料理長さんとばっちり目が合ってしまいました。 もしかして迷宮産のお野菜に反応したのですか?
「それで、49階層では何が採れるのかな?」
「現状ではカボチャ、イモ、ネギ、タマネギ、トウキビ、そしてりんごを落とすドリアードが出るようになっています。お野菜の魔物はたいして強くは無いようですが、ドリアードはブラックコカトリスよりも難易度は高いかもしれません」
「そ、その野菜を見せてもらっても?」
「まぁ見せるだけなら…」
収納からそれぞれの野菜を取り出す。
カボチャ、横幅が40センチと地上で栽培される物よりもやや大きめです。
イモ、これも敢えて言うならソフトボール大と言うべきか、直径が12~3センチと大きいです。
ネギ、根っこに近い白い部分の直径が3センチほど、長さも1メートル以上あり、振り回せば凶器になるかもしれません。
タマネギ、これは野球ボール大、直径10センチ程で、よく見るサイズですね。
トウキビ、太い部分の直径が10センチほどあり、長さも40センチを越えるサイズ。とても甘くて美味しいです。
リンゴ、直径が14~5センチもある大型で、真っ赤に熟した美味しいりんごです。
ふと背後に気配を感じ、チラリと視線をやると… 料理長さんがギラギラした目で食材を凝視していました。
もしかしたら、迷宮素材での料理がしたくてこの町で働いていたのかもしれませんね。目が合うと、ずんずんと歩み寄って来て口を開きました。
「この食材を売ってはいただけませんか?」
「ええ?突然ですね」
「私の目から見ても、鮮度の良い上級な食材だと思います。これらを使って是非とも調理をしてみたいのです」
「まぁ料理長さんにはお世話になっていますから、譲るのは一向に構いませんが。採集する手段を手に入れないと、継続して買い取ることは出来ませんよ?」
「それでも構いません! この食材を見て腕を振るわないなんて、そんな料理人はきっといないでしょう」
なんだかすっかり燃えていますね、熱血漢です。まぁお野菜の魔物はたいして強くないので低階層に出現させても良いかもしれませんね。
まぁそれも、今後のギルドとの交渉次第ですけど。
とりあえず、カボチャは大きいので1個、それ以外は2個ずつ譲る事にして、明日の夕食に出してもらう事になりました。




