その33
誤字報告いつもありがとうございます。
「迷宮を変化させるというのは、どこまでやれるんでしょうか?」
「それは… 過去の所有者が明かしていない事だな。はっきり言ってわからん」
「もしも、ある程度自在に変えれるというのなら、1階層にでも特別室を作って、そこだけコカトリスを出現させるとか出来たらいいんですけどね」
「確かにそれは良い考えだな、出入り口に衛兵を置いて立ち入りを厳に規制すれば、低階層しか狩れないような冒険者でも間違ってやられる事も無くなるか」
ギルドマスターとサブマスターはあれこれと意見を交わし始める、そろそろ私、宿に戻りたいんですけどまだ終わらないのでしょうか。
「そろそろ戻っていいですか?」
「ちょっと待って、明日迷宮に入る時、俺も連れて行って欲しいんだが」
「何を言ってるんですか? そもそも迷宮の権利が欲しいのであれば、自力で到達してくださいよ。譲るとも言っていませんし、対価も思いつきません。なのでこの話はお断りさせていただきます。もし可能であれば、先ほどの特別室くらいの要望には答えたいと思っていますし、個人的には50階層を守っていた金色のコカトリスが狩れれば私は満足なので」
「アリシアさん、どうか話を最後まで聞いてほしいの。貴女は近い内に元の世界に帰っていくのでしょう? そうなればこの迷宮の所有者が永遠にいなくなることになるわ。そうなった場合、何か問題が起きた時に対処できる者がいないと町の存続にも関わるのよ」
「それは現在の状況と何も変わりませんよね? 元々最後まで行けていないのですから。スタンピードが起きないように設定する、それだけでも十分な成果だと思うのですけど」
ギルドマスターは腕を組んで考えだし、サブマスターも色々と思案しているようです。棚ぼたで美味しい所だけ総取りしようという考えが、そもそも気に入りません。
「アリシアさん、どうか対価を提示してくれないかしら? ギルドは中立組織、どこかの国や、貴族個人に権利が渡るよりは遥かに人々のためになるわ。ギルドが迷宮を所有しているという事実が一番重要なの」
「そうは言いましても、ギルドに所有権を譲ったとしても、その所有者が国や貴族に買収されたり、脅しや何かで屈服させられることもあり得るのではないですか? 自力で得た権利であるなら、それらを弾き返せるだけの腕力はあるのでしょうが、そうではないですし。現状でもすでにやり繰りが出来ていますからね」
「それは侮辱だわ、ギルドの役員には王侯貴族に屈服するような者はいないわ」
「そうなのですか? 私は一度経験があるものですから。ギルドに個人情報を売られたことが… まぁ私のいた世界ですけどね、ぶっちゃけて言いますと、それほど信用はしていないんです」
サブマスターは口を一文字に結んで何か言いたげな顔をしています。しかし、どれほど清廉潔白な人でも、力を手に入れると変わってしまう。そんな歴史は数多く残っているのです、はいそうですかと返事なんかできません。
もっとグっとくる理由があるのならば考えましたけど、今聞かされた話は綺麗ごとばかりですからね。
「それでは、明日の朝までに迷宮に対する要望をまとめておきます、それを渡すから検討をしてもらいたいの。そしてこれは依頼よ、明日私を護衛してブラックコカトリスが出現する階層まで連れて行って欲しいの。私自身がブラックコカトリスの強さを見に行って検証したいわ、もしも特別室のような事が出来るのなら知っておかなければいけない事だし」
「はぁ、なかなか頑張りますね」
「もちろんよ、というか簡単に諦められる案件ではないわ」
「まぁそれくらいならいいでしょう。朝の8時には出ますので、その時間にいなければ勝手に行きますからね。依頼料はまだ聞いてませんが、どのくらいで?」
「依頼料… 貴女が来るまで未踏破だった区域だから、金貨20枚でどうかしら?」
「わかりました、護衛はしますが寝具とかはご自分で用意してくださいよ? 食事くらいなら提供はしますけど」
「それでお願いするわ、できれば譲渡できる対価を考えていて欲しい所ね」
話し合いがようやく終了し、宿に戻ってベッドにダイブする。おっといけない、寝間着に着替えないとダメですね。
クリーンの魔法を使って綺麗にしてから着替えを済ます。
「しかしどうしたものですかね、もしギルドが迷宮を所有したなんて世間に知られたら、間違いなくその権利を欲しがる者が群がるでしょう。その土地を所有する貴族や王家、他にもいっぱいいそうですからね。そうなれば、手に入れるために所有者の家族や親戚が囚われて人質にされたり、危険な目に遭ったりとなる事でしょう。 その辺を分かっていなさそうですからねぇ、あの2人は」
過ぎた権利は身を滅ぼしかねない、自身だけに悪意が向かってくるならともかく、腹黒貴族であれば、平気で近しい者を盾にするでしょう。
これはアマンダ様にお願いする案件でしょうかね… とはいえ、フローラ様と違っていつ連絡が取れるか分かりませんからね。
まぁ、明日考えましょう。今日は疲れました…
─迷宮都市ボンボン、ギルドマスター執務室─
「まずはアレね、特別室が複数作れると仮定して、通常のコカトリスの部屋とブラックコカトリスの部屋を作る。一般冒険者が安易に入れないようなレイアウトを考えないといけないわね」
「出入り口を別に作れたらやりやすいんだけどな」
「一応それも考えておいて、ダメな場合は入り口からすぐの場所を二股にして、片方を特別室方向にすればいいわ。スタンピードは当然無しで、コカトリスも単体沸きに出来るのならそっちが良いわね」
「それはともかく、もしも改造が出来るのならば、その当日は閉鎖しないといけないよな」
「それは大丈夫じゃないかしら、元々ある場所はいじらないわけだし」
「そういうもんか?」
2人は思いついた事をメモに残していく、権利の譲渡は諦めていないが、最悪改装だけでもうまい事やってもらいたかったのだ。
「とりあえずこんなもんね、私はもう帰るわ。帰って明日の準備をしないと」
「全く急な話だからな… 俺も一緒に帰るとするか、現状何よりも最優先事項なわけだしな」
アリシアが宿屋ですっかり眠りについた時間、ようやく帰る事にしたようだ。帰ってからも準備があるのですぐには寝られないだろうが…




