その10
のんびり不定期連載です。
─ガトー王国─
魔物を討伐しながら徐々に南下をしていた、魔法探知を頼りに引っかかる魔物がいれば即座に方向転換して殲滅しながら進んでいたのです。
しかし、今いる場所よりももっと南の方角で、途轍もなく巨大な魔力を感知しました。
「これは…凄まじい魔力ですね、しかし嫌な感じはしませんし…どことなくフローラ様の魔力が混ざっているような? これは大至急確認しなければいけませんね」
殲滅しながら前進しようと思ってましたが緊急事態なので、一気に現場に向かいたいと思います。これほど強烈な魔力であれば迷う事はありません、直行しましょう。
「おっと!」
感じていた魔力の塊が突然爆発したかのように拡散してきました、なかなかの衝撃波でしたが、このくらいならば私の魔法障壁を破ることは出来ませんよ!
『グオオオオォォォォォ!』
おや? なにやら見覚えのある真っ白な物体が浮いていますね…って、アレはハク? どうしてここに?
「ハクなのですか? 一体どうやってこの地に来たのです?」
『おお、我が主よ、戦いに出るというのに我を置いて行くとは何事だ! 我にも仕事をさせよ!』
「いや、私も突然こちらへ召喚されてしまったので、誰にも言う事が出来なかったのですよ」
『そうであったか… 主の気配が突然消えてしまったから探してしまったぞ』
「それはそれは、心配をかけてしまったようですね」
とりあえず、いつまでも浮いているのは目立ってしまうため、地上に降りる事にしました。
地上に降りたと言っても、私の身長ではハクの顔はかなり上にあり、見上げていると首が疲れてしまうので、ハクには『伏せ』の姿勢になってもらいました。
「それで、こちらへはどのような手段で?」
『ああ、創造神に働かせたのだ。協力したとはいえ我を転移させるとは、さすがは創造神といった所だな』
「あ、あの…助けていただいてありがとうございます?」
なにやら町から騎士の方が出て来て声をかけて来ましたね、ちょうどいいので私も情報収集といきますか。
「いえいえお気になさらず、こちらのドラゴンは私の従魔でハクといいます。怒らせなければ暴れる事はありませんので安心してください」
『我が主に不敬を働けば暴れるがな』
「ハク! ちゃんと言う事を聞いてくださいよ?」
『わかっておる』
「早速なんですが、ここは何という町なんですか?」
収納からもらった地図を出して騎士様に見せてみる。
「ここはショコラ王国レクタングル辺境伯領の城塞都市ビターです、地図でいえばここら辺です」
私が広げた地図を指さします。ふむふむ、ガトー王国とショコラ王国の国境付近だったのですね。という事は、今回の元凶である異界と繋がった場所に近いという事でしょう
「ハク、先ほど散っていった魔物の位置は捉えていますか?」
『捉えてはいるが、もうずいぶん遠くまで逃げていっているぞ』
「そうですか… 森に危害を加えずに殲滅する事は可能ですか?」
『む、それは難しいな。どんなに手加減したとしても、ある程度は凍り付いてしまうぞ』
「そう…ですよね、まぁそこは色々と考えますか」
「せっかくなので伺いますが、貴方達は魔物が湧き出てくるという場所を把握しているのですか?」
「いえ、この森は広大なうえ、すでに大量の魔物が徘徊していて調査する事も満足に出来ていない状況です」
「そうですか… それではお願いなのですが、この国の地理に詳しい方とお話ししたいのです。この森にいる魔物を全部ハクに追い出してもらおうと思ってまして、人が住んでいない地域を詳しく知りたいのです。 それと、そういった事案をその場で判断できる地位を持った方との会談を望みます」
「わかりました、お名前を伺っても?」
「名乗っていませんでした、これは失礼を。 私はアリシア・フォン・フェブリーと申します、創造神アマンダ様から勅命を受けて魔物の討伐をしております」
「創造神様から勅命を… わかりました! ちょうどこの町には辺境伯様が来ていますので、すぐに話を通してきます!」
「よろしくお願いいたします」
騎士様はすぐに町の中に走っていきました。破壊された門を見るに、先ほどまで魔物の襲撃に遭っていたのは容易に想像つきますが、復旧はそれほどかかる感じはしませんね。 偶然とはいえハクのお手柄です。
『しかし人間とは何かと面倒なものよな』
「そういうものなんですよ。何せ人間という種はとても数が多いので、上に立つ者がきちんと統治していかないと、瞬く間に木は切り倒されて森も拓かれ、自然をどんどん破壊してしまうのです」
『ふむ、まぁ我には関係はないがな』
「それはそうとハク、貴方から漏れ出る冷気がずいぶんと少ないようですが?」
「それは転移の際に我の魔力をかなり使ったからだな、しかしこの地もそれなりに魔力が漂っておるからすぐに回復するであろう』
「そうでしたか、帰る分も必要でしょうから無駄使いしないようにしないといけませんね」
それにしても辺境伯様がこの町にいるというのは良かったですね、国によって違いはありますが、基本的に侯爵と同等の権力を持っているはずなので、この場で即断してもらえるかもしれません。
いちいち王都に行って確認を…なんて事になれば時間だけ無駄にかかってしまいますからね。
「そうでした、ハク」
『なんだ?我が主よ』
「貴方は小さくなれたり人型になれたりとか出来るのですか?」
『何を言っている? そんな事出来る訳がないであろう』
「デスヨネ…」
確かに人型…というのはかなり無理がありますよね、でも小さくなるくらいはもしかしたらと思ったのですが…残念です。
それにしても、ただ待つというのは暇ですね、軽く何か食べましょうか。 収納からセリカ王国で買った果物を出します、どう見てもミカンなんですが、ちょっとつまむには手頃な大きさなんですよね。皮をむいてハクの口の中に投げ入れます…
『む?何を入れ… むむ?』
「貴方には小さすぎるでしょうが、果物は栄養があっておいしいんですよ」
『確かに小さすぎるが… これはなかなか』
どうやらドラゴンも餌付けが出来るかもしれませんね。




