33話
誤字報告いつもありがとうございます。
孤児院に戻ってきました。厨房の奥に作業部屋があり、そこで解体をする事になったのです。
ギルドでは簡単に依頼内容を確認し、受けてくれた彼女達パーティに指名依頼という形になって受けてもらう事が出来ました。依頼料は1人金貨1枚、解体作業としてはかなりの高額ですが、コカトリスというのが高級素材なのでこれが相場だと受付嬢さんに言われました。
受けてくれた3人パーティは、全員Bランクで『赤き咆哮』という名で組んでいるそうな…
リーダーで剣士のカレンさんが真っ赤な髪をしていてよく吠えるそうです、そして魔法使いのサーシャさんにシーフのエリカさん。エリカさんは黒髪で、どことなく東洋人な雰囲気があります。
気になったので世間話をしながらさりげなく誘導してみると、彼女の祖母が転移者っぽいですね。お婆ちゃんの名前がサキコというらしいので多分間違いないでしょう。
なのでエリカさんは日系クォーターという事になりますかね、私は転生でしたので、必要な知識は成長と共に得られましたけど、転移となると話は別ですよね。きっと大変だったと思いますが、子孫を残せるくらいにはうまく生きたんだと思います。
「それでは、今日はよろしくお願いします」
「おう、任せてくれ」
カレンさんが元気よく言います、体も大きいし剣士なので腕っぷしもありそうです。
コカトリスはサイズが大きいため、作業部屋の中にあったものは全て外に出し、床から天井までクリーンをかけて準備は万端です。そこにコカトリスを出してレクチャーを受けます
作業自体は普通の鳥を捌くのと変わらないそうです、ただ羽根が…非常に硬いのでむしる作業が一番大変でした。しかしこの羽根は素材として高値で売れるという事で、丁寧にむしる事になりました。
「とまぁ、こんな感じで終わりだ。何か分からなかったところはあるか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
「この肉は売らないのか?」
「売りませんよ、食べるつもりなので」
「ほほぅ、それなら私の分の報酬の肉も調理してくれないか?高級肉がどのように調理されるか興味ある」
「そうだね、普段ならすぐに売るか、売れない状況だったらその場で焼くしかなかったから、まともに料理として食べた事は無かったね」
カレンさんの話にサーシャさんとエリカさんも乗ってきました、まぁ3人分増える程度大した事は無いので了承します。
漬け込みに時間がかかるとの話をしたら、その間にギルドに報告に行って、それからまた来るとの事。彼女たちが出ていってから、私は巨大な鶏肉を一口サイズにカットする作業をしつつ、調味料を使って漬け込み用のタレを作ります。
現在午後2時なので、十分夕食に間に合うでしょう。
「ふふ、今日は鶏肉のから揚げ…おいしく作らないといけませんね!」
十分な気合いを入れ、お肉のカットに明け暮れる事にしました
ローレル王国王都、冒険者ギルド付近
「しかしさっきのコカトリス、狩りたてほやほやってくらい新鮮だったけど」
「うん、高い魔力に収納持ちだから、時間経過が抑えられているんだと思う。非常に優秀」
カレンとサーシャのやり取りを無言で見つめるエリカ、先ほどアリシアが言っていた鶏のから揚げという言葉、エリカは祖母の祖国では普通にあったというから揚げという料理を食べた事があったのだ。
遠い遠い国なので、もう帰る事も出来ないんだと祖母は言っていた。それなのに何故あのような若い子が遠い地の料理を知っているのかと不思議に感じたのだ。
自分も冒険者として3年前に家を出て、結構いろんな町を旅して回ったが、から揚げを見た事は無かったし、調理法も誰も知らなかったのだ。祖母はもう亡くなっており、母には料理の才能無くて再現できなかったので、もう食べる事は無いのだと思っていたけれど、もしかしたら今日食べられるかもしれない。
「ふふ、料理が楽しみね」
「そうだな、コカトリス自体食べるのも久しぶりだしな」
3人は報酬を受け取るためにギルドへと入っていった
孤児院厨房
「ふおおぉぉぉぉぉ!」
力の抜けるような気合いと共に、高速でお肉のカットを繰り返し、漬けタレに浸けていく。作業もかなり効率化しているので、食べ盛りの子供達が相手でも十分足りる量がカットできたと思います。
お肉だけではいけないので野菜を多めに入れた野菜スープも準備しておきます、これで大丈夫でしょう。
気が付くともう夕方の5時を過ぎていました、オークの油を温めて揚げる準備に取り掛かりましょう。
ふと見ると、赤き咆哮の3人が戻ってきていましたし、仕事を終えた子供達もぼちぼちと帰ってきています。職員さん達と一緒に段取りをして、熱くなった油の中にお肉を投入していきます。
ジュワー パチパチッ
油の中に入ったお肉が音を立てて揚げられていきます、この音いいですよね!
子供達も今日の夕食が何なのか興味津々の様子でこちらを見ています、職員さんに野菜スープの仕上げをお任せして、大皿にから揚げの山を作ります。
大皿に乗せたから揚げの山を作業台で待つ職員さんへと渡し、職員さんが個人用の小さな皿に小分けを開始。職員さんもから揚げから香る素敵な匂いにうっとりしているようです。
解体をしてくれた冒険者3人は、報酬に付けたお肉を全部食べたいと言っていたので、別のお皿に山を築いていく。
スープを先に配膳し、小分けされたから揚げのお皿が全員に行き届いたのを確認してから院長先生が厳かに言います
「大地の恵みに感謝を、そして素材の提供と料理をしてくれたアリシアさんに感謝を込めて頂きましょう」
「「「「感謝を!!!!」」」」
それからの光景はまるで戦争のようでした。ジューシーなから揚げをもりもりと食べまくる子供達、そこに男女の垣根は無く、全員が一切言葉を発さないまま食べまくってます。
「うまっ、なんだこれ」
リーダーのカレンさんが一言だけ喋り、その後は無言で食べだした。わかりますよ、おいしいですもんね!お肉を浸けるという事も、大量の油で揚げるという事も、少なくとも私が生まれて15年、この調理法は見た事も聞いた事も無いですからね。
お年を召した院長先生には少し油が重いかなと心配しましたが、黙々と食べているので多分大丈夫でしょう。それでは私も堪能するとしましょうか…
コカトリスのから揚げは最高でした! 少し乱獲してしまおうと、ひっそりと誓うのでした




