28話
のんびり不定期連載です
翌日、アリシアはローレル王国辺境伯領の領都に到着していた。辺境伯と言えば、貴族としての立場は高く、国境の警備という名目の下、所持している武力もそれなりの物を持っているが、やはり辺境という事で人は多いが華やかさでは些か足りない部分がある。そんな中、冒険者ギルドを退会したために、どこで宿の情報を仕入れようかと思案していた
「まずは市場で食料の調達ですね、市場じゃ高級宿の話を聞けるかはわかりませんよね、普通の宿の話ならば聞けそうですが。とりあえず行ってみましょうか、新鮮な果物が手に入ればいいですね」
通行人に市場の場所を聞きながら町の中を進んでいく、普段の食事もお肉は少なめで野菜と果物が中心なので、オークは全然減っていかないけど野菜と果物は随時補充する事にしています。
オークなどのお肉は孤児院に寄付すればいいですからいくらあっても大丈夫。孤児院探しは自分が泊まる宿を確保してからにしましょう。
「高級宿かい?風呂があるかは知らないけど町の中心部に何軒かあったはずだよ?」
「本当ですか?なるほどありがとうございます。この辺の果物全部買います」
「はい毎度有り、普通の宿だと小銀貨5枚から銀貨1枚の間で泊まれるけど、高級宿の値段はちょっとわからないね」
「地元の人は行く事ないですもんね、行ってから聞いてみますよ」
「ほい、気を付けるんだよ」
市場で野菜や果物を売っていたおばさんに宿屋情報を聞いてみると、あっさりと情報は集まってしまった。奥様情報網恐るべし
野菜と果物の補充が完了したので、トコトコと町の中心部に向けて歩いていく。辺境伯領とはいえ開拓の最前線ではなく、言う程辺境感はないが、町中には一見冒険者風だが、素行の悪そうな所謂チンピラっぽいのは結構いる。
フード付きのローブを纏っているとはいえ、小柄であると自負している身としては絡まれたりする確率は意外に高い、特に夕暮れ時などは要注意な時間帯ですね。
しかし町の中心部に近づくにつれ、粗暴そうな輩の姿は少なくなっていく。安心して宿を探しましょうか。
一回りしてみたところ、高級そうな宿は3軒ありました。予定では今日1日だけ宿泊するつもりなので、近い所から聞いてみましょうかね
「お風呂はあるよ、うちは1泊金貨3枚だ。お嬢ちゃん、高いかもしれないが、うちは安全面でもそこそこ名前が売れているからゆっくり寝られる、ここに決めな」
「いえいえ、さすがに金貨3枚は高すぎだと思いますよ。なので他を当たります」
なんですか?この胡散臭いフロントマンは、怪しさ満開なので記録結晶に録画しておきましょう。それに金貨3枚はさすがにボッタにも程がありますよね、もしもそれが相場だというのならばお風呂は諦めるのも仕方が無いですね
「んー?そんなこと言わないで泊まっていきなよ。お金持ってそうだしうちの宿屋に還元してくれよ、もちろん有り金全てとお嬢ちゃんの身柄をな」
不敵な顔をして喋り終えると、後方にある出入り口に筋肉ムキムキの男性が通せんぼをしていました。何ですかこの宿は?私の身柄がなんですって?ああ気持ち悪い、こんなんでよく潰れないで今まで営業ができていましたね、やはり私の見た目で舐められてしまうのでしょうか、それにしてもこれはひどいですね。
「せっかくですがお断わりさせていただきます、他の宿に聞いてみますのでこれで失礼させてもらいますね」
「ああん?帰すわけねえだろ?アンタみたいなお嬢ちゃんが1人でうろつくのが悪いんだ、大人しく言う事を聞きな。飽きるまで犯したら奴隷商に売り飛ばしてやるから安心しな! よし、取り押さえろ!」
後方にいたムキムキマッチョが私に向かってくるので全身に身体強化、前世の記憶持ちの私が日本で培った現代格闘技の恐ろしさを教えてあげましょう
ムキムキマッチョが伸ばしてきた手を躱しながらインロー、膝関節の辺りにローキックを内側から打ち込みます。強化された私の足は鉄パイプよりも痛いですよ!
ゴンッ
軸足に直撃し、痛みと自身の体重の重さで体勢が崩れます、手頃な高さになった脇腹にレバーブローというか、肘で攻撃。悶絶した顔でうずくまったところにトドメとばかりに後頭部にかかと落とし、これで決まりですね。
ムキムキマッチョは僅か数秒で轟沈となりました。
現代格闘技のあるあるとして、ローキックで足を止め、ボディで更に動きを止めてからトドメ。完璧でしたね
「あらあら、この方はこの宿の用心棒か何かだったんですか?もう少し腕の立つ方を雇った方が良いと思いますよ。一応記録結晶にて会話から何もかもを記録していますので、今後同じような被害を被る方が出ないよう、町中に放送させていただきますね」
「待てやあああ!女だと思って下手に出てりゃつけあがりやがって、タダじゃ済まさねえぞ!」
フロントマンの男性が剣を手にしてカウンターを飛び越えてきました。大人しく待ってあげる意味もないので着地した足に向かってローキック!
ブチッ!
あらあら?なにやら出てはいけないような音が聞こえましたね、これは筋が切れてしまった音でしょうか
「ギャアアアァァァ!」
「全く悲鳴まで品が無いですね」
足を押さえているので頭部が良い高さにあります、迷わず側頭部に回し蹴りを
ゴキッ!
フロントマンの男性は蹴りの勢いのまま壁にぶつかり失神したようです。
「少しやり過ぎた感はありますが、女性客を獲物認定したくらいには外道だと思いますのでいいですよね」
予定の無かった戦闘にぐったりした気分で宿を出て、宿の前で先ほど記録した映像を空中に投影します。これでここを通る人全てがこの映像を目にし、きっと警備の者に連絡してくれるでしょう。
相手の2人は失神していますが、目を覚ましたとしてもローキックで足を痛めつけてあるので逃げ足も鈍る事でしょう。ちなみに記録結晶の映像投影は、込めた魔力が尽きるまで絶賛放送してくれます。今込めた魔力ですと、記録時間が短いのと相まって、2日程度は軽く消えませんね。お疲れ様です
しかし辺境だからという事では片付かないほどの治安の悪さですね。市場のおばさんはいい人だったのに、これだと他の宿屋に話を聞きに行くのも嫌になってしまいますね。自分でお風呂を用意できれば悩む事も無いのですが、浴槽を作るのが大変なのです。少なくとも私のような素人では水漏れしない器を作る事が出来なかったのです。
しかしこんなことが起きてしまってはさすがに考えものです。水もお湯も自分で用意できるので、どこかで職人に依頼して浴槽を作ってもらった方が良いかもしれませんね
そんな事を考えながら、一応次の宿に向かって歩き出した…




