第49話
誤字報告いつもありがとうございます。
加護の力を出来る限り引き出しつつ魔力を練っていきます。本来であれば、このちょっとした時間… 唯一動きが止まってしまう時間が私のような魔法使いの弱点となるのですが、クラーケンらしき魔物は初撃のスクリュービームで受けたダメージのため動けなくなっているようです。
まさにチャンスですね! 次こそ沈めてみせます!
「それっ!」
手加減無し、本気で練り上げた魔力を籠めたスクリュービームを発射!
指先から飛び出した魔法は一筋の光線となり、溢れた魔力がその周囲を回転しながら追随するような… 不思議な形状となってクラーケンらしき魔物を正面から貫きました。もちろんそこから横薙ぎにして、完全にとどめを刺します。
「ま、魔貫光殺ぽ…ぅ? まさかここまで再現できるなんて…」
「え? なんですか? それは」
「い、いいえ、何でもありません。ともかく! 今のは威力、速度共に素晴らしい魔法でした。言う事無しですね」
「あ、ありがとうございます! ちょっと撃つまでに一瞬溜めなくてはいけないのが難点ですが、上手くいって良かったです!」
ふふっ! お姉様に褒められました! しかし、まかん… 何とかというのは何なんでしょうね、もしや過去にこういった魔法を使う人がいたんですかね? まぁお姉様が何でもないというので深くは聞きませんが…
真っ二つに切り裂かれた魔物は迷宮へと吸収されていき、ドロップ品らしきものが落ちているのが見えますね。早速見に行ってみましょうか。
「お姉様、ドロップの確認をしましょう」
「そうですね! とはいえ、あの形状の魔物であれば… せいぜいタコ足くらいかと思いますが…」
おや、あまり嬉しそうではありませんね… まぁタコの魔物は群れの中に結構いましたし、タコ足という素材もかなり拾っていますからね。しかしボスからのドロップであれば、きっと上質な物に決まっています!
お姉様と共に部屋の中央へと向かい、ドロップの確認を行います。
「むむ? これはすごく柔らかくて良い感じですね! やはりボスだけあって質は良い物だったという事でしょう。拾っていきますか」
「はい。それで… 今日はこれからどうしますか? 奥の方を確認しておきますか?」
「そうですね、時間的にそろそろ夕食の準備をしたい所ですし、今日はいっぱい走りましたからゆっくり体を休めたいですね。扉の向こう側を確認してから休む場所を探しましょうか」
「はいっ!」
ふぅ… 正直に言えばもうお腹が空いているのです。お姉様の言う通り今日はずっと走っていましたから、かなりエネルギーを消費しているという事でしょう。ふふっ、夕食が楽しみです。
ドロップの確認後、部屋の中を見て回り他に何か落ちていないかを確認してから奥にある扉を開けて進みます。
「あっ、これはやはり…」
「制御室ですね… 30階層が最下層でしたか。となると、この部屋は安全地帯という事ですね?」
「まだ確認が済んでいないので安心はできませんが、ボンボン迷宮と同じだと考えるとそう言う事になりますね。しかし最下層でしたか… どうです? この迷宮… 貴女が管理者になりますか?」
「管理者… ですか、確かに名声と考えれば辺境伯家としては是非とも持っていたい権利ですが、レクタングル辺境伯家が2つも迷宮を管理しているというのは国家間としてはどうなるんでしょうね」
「どうにもならないと思いますよ? ワーショク王国としては是非とも権利を取っておきたい所でしょうけど、欲しいのであればこうして最下層まで探索し、迷宮のボスを討伐すればいいだけなのです。
何もしていないのに権利だけヨコセなんて話は放置で良いと思いますよ」
「そ、そうでしょうか…」
確かにお姉様の言う通りですが、そういった理屈を理解できない王侯貴族というものはどこにでもいるもので、自分の持つ地位だけで何もかも手に入ると勘違いする者が大多数を占めているのも現実です。
ましてや私はこの国の貴族でもありませんし、おかしな軋轢が生まれなければいいのですけど。
「そもそもですよ? 今まで誰も最下層まで到達していない迷宮で、しかも何回もスタンピードが起きるまで間引きすらできない状況では誰が所有者になっているかなんて分からないんじゃないかと思うのです。なのでこっそりと所有しておけばいいんですよ」
「な、なるほど?」
お姉様は時々貴族らしからぬと言いますか、とても大胆な発想をする事がありますよね… まぁ確かに誰も確認する事は出来ない状況だとは思いますので、こっそり所有してしまっても大丈夫ではないかと思いますが… いえ、やはりせっかくなのでこっそりと所有してしまいましょう。お義母様にだけ報告しておけば何とかしてくれると思いますし、出現する魔物の特性上物理攻撃しかできないお義母様はこの迷宮には来ないと思いますしね。
制御室に鎮座している迷宮のコアを眺めながら夕食になります。お姉様の収納にある在庫からミノタウロスグレートのお肉が出てきます… 普通に高級肉ですね。
一口サイズに切り分けつつ塩胡椒を振りまき、ジュージューと美味しそうな音を出しながら焼いていきます。しかしどうしてお肉を焼く音というのは食欲をそそるのでしょうね、お肉重視の辺境伯領で育ったからなのでしょうか… お姉様はどちらかというと野菜や果物を多く食べていますが、もしかしたらお姉様が小柄なのはそこに理由があるのかもしれませんね!
食事が終わり、管理者の登録をどうするかと話し合いをしましたが… これからお風呂に入り、いつでも寝れる準備をしてからやる事になりました。
お義母様の時も見ていましたが、かなり苦しそうだったんですよね… それで寝る準備を整えてから始めれば、苦しむ時はベッドの上で… 少なくともお義母様の時のように、ソファーにもたれかかって耐えるという事は無くなりそうです。
「さて、始めますか。これは私も経験ありますが、あまりに多くの情報が頭の中に入ってくるので、恐らくその情報を処理する過程で激しい頭痛がやってきます。痛みに耐えるという事は大変な事ですが、私が付いていますので安心してくださいね」
「はい! この迷宮を私の手中に収めてみせます!」
激しい頭痛… かなり怖いですがもう後には引けません、この迷宮の所有者になり、まずはスタンピードが起きないようにしないとですね!




