第48話
誤字報告いつもありがとうございます。
駆け足で進みながら、対クラーケンについての話をお姉様としていました。なんでも触手1本で大型の船に巻き付き、船を破壊しながら海へと引きずり込んで捕食する海の悪魔という異名を持っているとか… ここは迷宮だからどれだけ大型でも、倒してしまえば迷宮に吸収されてしまい、ドロップが出てくるのでちょっと惜しいとか… え? 惜しいんですか?
「それはですね、ちょっとしたお城くらいの大きさだと思うので、足1本あるだけで1年は食べるのに困らないと思いますよ。そんな足がいっぱいあるのです、惜しいと思ってしまうのは仕方のない事です!」
やはりお姉様はお姉様でした。
それほど巨大で強力な魔物だというのであれば、普通なら恐ろしいと思ってしまうものですよね? ですがお姉様にとっては、そんな怪物と言われるような魔物であっても食材として見ているんですね…
「とにかくです! 魔物が目の前に立ちふさがるなら倒して進むのみ! 行きますよミルフィ!」
「はいっ!」
その通りですね、私はお姉様についていくのみ、いつかお姉様に追いつけるよう…
一方その頃。
カッポウの町にある冒険者ギルドには大勢の冒険者達が集まっていた。
迷宮方面の見張りにたっていた者、避難した住民の護衛に当たっていた者、海へと進んで行く魔物を見届ける者。
過去の例を見ると、スタンピードが起きてから3日もあれば、迷宮内部の魔物達は全て出尽くされると言われていたため、避難していた住民がこぞって町へと戻ってきたからだ。
「さて、過去に起こったスタンピードの統計を見ると、遅くとも3日あればスタンピードは終息すると書かれている。しかし! 皆も知っての通り今回のスタンピードは今までに起きた現象とは何かが違うと思われる。すでに町の者が戻ってきてしまっている事だし、今後の動きについて話し合いたい。
何か意見のある者はいるか?」
仕切っているのはギルドのサブマスターだ。ギルドマスターは貴族邸に行ったまままだ戻ってきていないし、先日送った異変についての話は返事すら来ていないのだ。
「別にいつもより少ないって言うんだったら、それはそれで良いんじゃねーか? 今回は魔物が少なかったってだけだろう?」
「いや、それにしても少なすぎるんだよ。ギルドにあるスタンピードの記録から考えても、過去に起きたどんなスタンピードの1割程度しか魔物が出て来ていないんだぞ? 偶然にも階段付近で魔物同士がかち合って、道を塞いでいるだけかもしれないだろ」
「ああ? あんな魚の魔物程度にビビってんじゃねーぞ? 1割だからなんだって言うんだよ!」
「おお! そこまで言うんだったらお前が迷宮に入って確認して来いよ! 魚の魔物程度余裕なんだろ? もちろん誰も手伝いには行かねーぞ? まだ終息宣言は出されて無いんだからな」
「ああ? やんのかオラァ!」
「おお! 上等だコラァ!」
「おい止めねーか! 今はそれどころじゃないって言ってんだろ! だが確認はした方が良いかもしれないな。よし、それでは言い出しっぺのお前らのパーティで迷宮内を調査して来い、迷宮内でスタンピードが起きた場合の対処方法は知ってるんだろ?」
「ああ? マジで言ってんのかよ!」
すでに喧嘩に近い喧騒が続いているが、誰一人として迷宮に向かおうとする者はいなかった。
結局のところ、町の門は閉められたままになり、人の出入りがあるたびに随時開閉する事になる。そして迷宮側には今後も見張りが立ち、交代制で24時間監視を続けるという事で話し合いは終了した。
「…で、実際はどう思う?」
サブマスターは近くにいた職員に問いかける。
「そうですね、どこかで詰まっている… だと思いますね。うっかり近づいて敵視を取ってしまったり、ましてや討伐なんて事をしたら残りが一気にという事になるんじゃないでしょうか」
「やっぱりそうだよな… チッ、どうして俺がこの地にいる時にこんな面倒な事に…」
「同感ですな。Eランクあたりの冒険者でも使い捨てますか?」
「最悪はそうするしか無いだろう。一応身寄りの無い冒険者を見繕っておいてくれ、いざとなれば俺が直々に指名依頼を出す」
「了解しました。依頼料の設定は?」
「うーん、払う気はあまり無いが、万が一何事も無く戻ってこられたら面倒だ。危険手当込みで小金貨3枚って所だな」
「分かりました、ではそれも含めて準備をしておきます」
「うむ、頼んだぞ」
サブマスターはやれやれといった態度を見せながら、ギルドの奥へと入っていくのだった。
20階層のボスを討伐後、魔物のいない迷宮内を駆け抜けてまいりました。そしてお腹が空いたかな? というタイミングで今までのボス部屋よりも豪華な扉が見えてきました。
ふむ… やはりお姉様の考察通り、30階層しか無い低層迷宮だったという訳ですか… もちろんまだ確認していませんので、結論を出すには早いのですがね。
「お姉様? 豪華な扉ですね…」
「はい、とても立派です。まさかとは思いましたが、本当に30階層までしか無いのでしょうかね… 一応中を確認してみますか」
こそっと覗き見をするのかと思いきや、お姉様は大胆にもバーン! と扉を開け放ち、入り口付近で仁王立ちして中を見始めました…
「お姉様? それはちょっと目立つのでは?」
「別にいいのです! それよりもミルフィ… こちらもどうやら予想通りみたいですよ」
「ふぇ?」
何が予想通りなのか… 言われて中を確認してみると、広い部屋の中央には青色で、まさに巨大としか言えないサイズのタコが居座っておりました。
そして私達の姿を視認したのか、みるみるうちに青い体は真っ赤に染まっていきます…
「ふむ、明らかに警戒色… というかお怒りのご様子ですね。しかしタコの方でしたか… これではドロップはあまり期待は出来ないですね。ミルフィ、サクっとやっておしまいなさい!」
「そんな簡単に言わないでください! 見た感じとても強そうなんですよ?」
「大丈夫です、間違いなくミルフィの方が強いですから。さぁ行くのです!」
むー! お姉様から突撃命令が出てしまいましたのでとりあえず行きますが、なんですかあのウネウネは! 間合いも広そうですし、もうこの場から攻撃を開始してしまいましょう!
「スクリュービーム!」
「なんと!」
何と言う事でしょう! タコ型のクラーケンと思われる魔物は、多数ある触手を盾にして私のスクリュービームを防ぎました!?
ああでも、触手の方にはかなりの損害は与えているみたいですね… しかしこれは手加減したのがいけなかったようですね。
「次は本気で撃ちます!」
「その調子です、どんどん行きましょう!」




