27話
のんびり不定期連載です
セリカ王国の王都を出発してから3日、国境を越えてローレル王国に入りました。このローレル王国を更に越えればクリーム王国です、距離はかなりあるはず…
「まずはローレル王国の王都を目指しましょうか、やはりお風呂付の宿屋は大きな町じゃないとありませんからね、トラブルもあるかと思いますが、天秤にかけたら間違いなくお風呂に傾きます。なのでこれは最適解なのです」
前世でのお風呂好きと今世での綺麗好きが相まって、トラブルが待っているかもと思いながらもお風呂を優先する自分に言い訳するように、これが最適解だと言い切ってみる。
ベッドから身を起こし、全身にクリーンの魔法をかけてから着替えてベッドを収納する。出発する準備ができたら魔法障壁を解除していざ出発。
魔法障壁と呼んではいるものの実際には物理的な防壁に近く、直径2メートルほどの半球ドーム状で、魔法も弾くし風雨などの物理現象も防ぐ事ができる万能魔法だ。当然虫の侵入も阻み、野外だというのにベッドを真ん中に設置してそのまま寝る事が可能という優れもの。欠点をあえて挙げるとすれば、温度管理を別でやらなければいけない程度。十分すぎる程便利だった
当然自身が開発した魔法なので、これを使える者がこの世界に果たしているのかどうか… 当人にしてみれば、ベッドを置くだけの平らなスペースさえあれば立地に困る事は無いので非常に重宝していた。
朝日を浴びながら街道を西へと進む、朝から汗はかきたくないのでのんびり歩きながら
セリカ王国王都
アリシアが王都を出てから2日後の午前、3台の魔導馬車が連なって王都の入場門に到着していた。
「やっと着きましたか、安心したせいかゆっくりしすぎたかしら?」
「いえ、そのおかげで馬も護衛兵も気力は充分です。王妃様も顔色が良いようで安心できます」
「そうかしら?それでは王城に向かわせてちょうだい」
「承知しました」
王妃付きの専属侍女に指示を出し、魔導馬車は静かに王都内へと入っていった。
多くの人達が行きかう王都内を緩やかに進み行く魔導馬車、カムリ王国の国旗が掲げられた馬車に人々は即座に道を空けて進路を譲る。魔導馬車を引く馬も大きく威圧感があるので自然に道は開かれていく。2時間ほどかけてようやく王城に到着した
「セリカ国王の王妹にしてカムリ王国の王妃殿下が乗っておられる、国王陛下に至急伝えたい事案があり、謁見を望んでおられる」
「はっ、至急伝達する。兵を先導させるので後についていってください」
「承知した」
城門でのやり取りが終わり、馬車がいよいよ城内に入っていく。小さな窓から城を見ていた王妃の笑みは深くなっていた
「やっとあの馬鹿兄をお仕置きできますわね、フフフフフ」
(王妃様の笑顔がすっごい怖いんですけど!国王陛下、ご愁傷様です!)
向かい側に座っていた専属侍女の額に汗が伝っていた
勝手知ったる城の中をズンズンと歩み進める王妃と護衛一行、目指すは謁見の間。お昼前のこの時間は謁見の間で仕事をしているはずだと考えての行動だった。自身の立場は隣国の王妃だが、嫁ぐまでの間はこの城で育ったので謁見の間がどこにあるかなど聞かなくても分かる。迷路のような通路を迷う事も無く進み、その部屋に辿り着く。
「カムリ王国王妃アルフィナ、謁見を望みます。開門なさい」
「ご無沙汰しております、アルフィナ様におかれましても、変わりが無いようで安心いたしました」
「挨拶はいいですわ、至急陛下に話したい事があります」
「はっ、しばしお待ちください」
衛兵が確認の後、謁見の間に続く扉が開かれた。中に入ると現在謁見している者がいるので入り口脇で待機する。いかに隣国の王妃でありセリカ国王の妹であっても他者の邪魔をし、追い出してまで自分を優先する事は越権行為にも程がある。
本来であれば別室で待機し、呼ばれたら初めて謁見の間に来るのが普通だが、本来次の順番であるはずの者を後回しにするために直行したのだから十分越権行為ではあるが、次の順番の者が知らなければ問題は無いと思ってたりもした
いよいよ前者との謁見が終わり退室していくのを見て、王妃はズンズンとセリカ王に向かって歩き出した。近衛兵も王妃の事は知っているので特に騒ぎだす事も無い
「陛下、いいえお兄様。あの神託は一体どういう事なんですか?あれでセリカ王国の名はどれほど地に落ちたと思っていますか?使徒様の温情により加護が戻ったとしても、周辺国のセリカ王国に対する印象は落ちる所まで落ちたと言ってもいいでしょう」
「おいおいアルフィナよ、挨拶より先にそれか。まぁ言い訳はできんがな、それでも使徒殿と直接会談して許しを得ることができたのだ、卑屈になる必要はないぞ」
「使徒様にお会いなされたんですか?どうでしたか?」
「どう…と言われてもな、元は公爵令嬢だったのだ、それにふさわしい容姿をしていたぞ。気は強そうだったがな」
「そうでしたか、私もお会いしたかったですね。それはさておき、私はしばらくの間ここでお世話になります」
「なんだと?それはカムリ王国の意図か?」
「いいえ、私個人の考えです。陛下は近いうちにフローラ様のお怒りを買う事になるでしょう、巻き添えになりたくないんです」
「なんとまぁ…一体何をしでかそうとしておるのだ?」
「使徒様を15番目の妻に娶ろうとしております。止めるよう何度も言ったのですが、自分の妻になる事は誉だと言ってきかないのですよ。すでに捜索隊を出していますので、もし接触して…と考えたら恐ろしい事になると断言できます」
「そうであるか、まぁ友好国の王妃として滞在は許可するが、兄として庇えるかどうかは向こう次第だぞ?」
「それで構いません、ありがとうございます。それとお兄様、公務が終わった後で個人的にお話があります、時間を取っていただきたく存じます。逃げると余計ひどくなりますからね?」
王妃がにっこり微笑んでいるが、背後にドス黒い何かが見える気がする国王陛下だった
「も、もちろん話というのならば聞こうじゃないか。公務が終わったらだからな?忙しいからいつ終わるかはわからんからな?」
この兄妹を昔からよく知る近衛兵達は、この後始まるであろう兄妹喧嘩という名の折檻に、ただただ公務に差し支えないよう手加減してほしいと願うばかりであった




