第43話
誤字報告いつもありがとうございます。
「ところでミルフィ、迷宮が氾濫した後というのはどうなるんですか?」
「え? どうなる… と言いますと?」
「迷宮内の魔物が溢れて外に出るんですよね? そうしたら迷宮内に魔物がいなくなってしまうではないですか。空っぽになってしまっては迷宮が攻略されやすくなったりするのでは… と、少々思ったもので」
「そう言う事ですか。それについてはあまり詳しい事は分かってはいないんですが、氾濫で外に出てくる魔物は迷宮内を徘徊しているものだけで、階層守護者… 所謂ボスと言われる魔物とその配下は動かないと言われてます。なので道中の難易度は下がるかもしれませんが、結局進むにはボスを倒さないと先へは進めないと言われています」
「その話は確証があるのですか?」
「一応そのように書物には書かれていますが、なにぶん古い物なので虚偽の可能性もあるとの事です」
「なるほど… もしもそうであるなら、尚更この場で迎え撃つのは良い判断でしたね。どれくらいの期間で魔物が復活するのかは分かりませんが、どうも待つという事は好きでは無いもので…」
「ですがお姉様、この場で溢れてくる魔物を討伐してドロップを拾いさえすれば、後は各階層のボスだけで最奥まで進めるという事です。やはり道中に現れる魔物よりもボスの方がドロップは良い物だと思いますよ?」
「そうですね! それは是非とも回収していかないといけません、殲滅が済んだら一気に行きましょう!」
「はいっ! しかしそうなると… 事前に1週間分取っていた宿代が無駄になってしまいますね」
「確かに宿代も馬鹿にはなりませんが、ドロップの回収さえきちんとやれば、そちらもすぐに回収できると思いますよ。もちろん私達が食べない分しか売りませんけどね」
「やはりそうなりますか…」
お茶を頂き、そのまま夕食まで終えて現在待機中です。
地揺れの頻度は益々増えていて、地揺れというよりも地響きに近くなってきています… つまり魔物の大移動はすでに始まっているのではないかと。
お姉様の展開した魔法障壁にはすでに魔物が張り付いており、もういつでも攻撃できる状態になっています。恐らく今ここにいる魔物は、この7階層や、近い階層から上がってきた魔物なんでしょうね。
討伐するかとお姉様に尋ねても、もう少し集めた方が魔力の消費が軽くなるからと言って放置されています。ですが、さすがに魔物の姿が見えているのにゆっくりお茶というのは落ち着きません! それに攻撃をする際は障壁を一度解除しなければこちらの攻撃魔法ですら阻害されて向こう側に行きませんから… これは中々スリリングな事になってしまうのでしょうね。
「残念ですが、さすがにこの状態でお風呂に入るのは精神的に厳しいと思うので、片が付いたらゆっくりと入りましょうね。さて、そろそろ一度殲滅しておきましょうかね… あまり集めすぎるとドロップの回収が大変になりますから」
「わ、分かりました!」
いよいよこの障壁が解除されるのですね? 心の準備は出来ていますが、いざとなるとこの状況は本当に怖いですね。
ほとんどが魚系の魔物ですが、時折お姉様の仰っていたタコ… オクトにそれに似た感じの白い魔物までいます。
「あの白い魔物も食べられるんでしょうか?」
「アレは多分イカですね… 美味しく食べられますよ?」
やはり… 食べるのですね。
お姉様が私にもわかりやすいように攻撃するための魔力を溜めていきます、一体どんな魔法を使うのでしょうか… いくら迷宮の壁が不壊と言われているとはいえ、お姉様がこうも魔力を籠めたらきっと壊れてしまうのでは? 得意魔法であるレーザービームだとすると… きっと壁すらも貫通していきますよね。
「では行きます、使う魔法はビームライフルですのでちゃんと観察するようにしてくださいね」
「ビームライフルなのですか? それにしては随分と魔力を籠められているようですが」
「レーザービームと違ってビームライフルは一瞬で発射され、すぐに私の制御から離れてしまうのです。なので途中で曲げたりできませんので… こうして大量に同時発射するのです」
お姉様が魔法障壁を解除、詰まっていた魔物達が一斉にこちらに向かって動き出すその直前に、眩い程のビームライフルが発射されました。
それは数百… いえ、数千にもなりそうな幾筋の光が一斉に魔物に向けて放たれ、光の線でありながら面制圧するかのような状態に… さすがにこれは神業と言うべき魔法なのでは?
「ふぅ、殲滅完了ですね。ちょっとドロップを拾ってきますね」
「あ、私もお手伝いします!」
まさに一瞬の出来事でした。
こうして落ちているドロップの数を考えるに、この場に集まっていた魔物の数も恐ろしい程だったのではないでしょうかね。
しかし迷宮不思議の一つであるドロップ品… なぜ倒した魔物がお肉のブロックになってたり、魚の切り身になって残っていくのかは解明されていませんが、山のように落ちている魚の切り身を見てお姉様の目が光っているようです。
「ふふふ、これはかなり効率の良い狩りが出来たのではないでしょうかね。スタンピード… これは使えますね」
いいえ、本来スタンピードと呼ばれる魔物の氾濫は、町や国を滅ぼしてしまうかもしれない危険な現象なのですよ。絶対に狩りの効率化を図るための現象では無いはずです!
「ミルフィ、一度拾うのを中断してください、第2波がやって来たようですので迎え撃ちます」
「は、はいっ!」
第2波… それはそうですよね、上層階に続く階段の前とは言え通路の直線部分はそれほど長くはありません。詰まってしまい直線通路から外れた魔物が押し寄せてくるのは当然です。
私もお姉様の横に並んで魔法攻撃の準備をします… たった今ビームライフルを観察したところですが、さすがにこの場で試すような真似は出来ませんのでスクリューアローを可能な限り凝縮しようと準備します。後はお姉様に合わせて放つだけです!
暗い通路お向こうから地響きが激しくなっていて、そろそろ視界にも入ると思います。
「では行きますよ、なるべく引き付けないと拾いに行くのが大変になりますので、そこは注意してくださいね」
「は、はぁ…」
これです。
大量の魔物が迫ってきているというのに全く危機感を感じさせません… 出来れば距離のある内にたくさんの魔物を倒したいと思うのですが、あえてお姉様は引き付けると言います… 遠くまで拾いに行くのが面倒だからという理由で…




