その124
誤字報告いつもありがとうございます。
2頭引きの馬車が3台一列になって街道を疾走していきます。馬達は小走りな感じで軽快に走っていきます。
「速いですねぇ! それなのに振動も少ないし揺れません!」
「完全に浮かせたら振動も無くなりますが… それだと馬が方向転換した時に荷台が振り回されてしまいそうですね… やはり微妙に接地している方が安定感が出ますか… そうなると足回りを改造すればもっと乗り心地が良くなりそうですね」
「足回り…ですか?」
「あ、いえいえ… すいません、ただの独り言です」
そうなんです、それぞれの荷物を積んだらちょうどギリギリ地面に接地した感じになったのです。
人の手でも簡単に引けるくらい軽く感じてましたので、馬が2頭で引けば… それこそ素で走っているのと同じような状態なのでしょう、軽やかに走っています。
まぁただ… 大きな石とかを踏んでしまうと良い勢いでジャンプしてしまうのですよね。しかもこれが緩やかでもカーブの最中であったなら… ちょっと怖いかもしれません。
やはりこの不安を解消するためには足回りの改造を考えるしかありませんよね… しかし、残念ながらそんな知識は持ち合わせていないのです、でも何か考えないとまずいですね。
前世である日本は技術大国でした、発明自体は他の国の人がしたとしても、それらを絶妙に進化させるのは得意な国民だったと記憶しています。
この世界の人では得られない経験を、私はしてきたはず!
確か記憶では、自動車がほとんどの世帯が持っているような社会でしたが、あえて観光地では人力車や馬車なんかもあったはず。舗装された道路を走るものでしたが、足回りにはそれなりの科学が採用されていたのではないかと思います。
やはり跳ねるのを押さえる装置… ショックアブソーバーでしたっけ、アレを開発できれば言う事無しなのでしょうが、仕組みは全然知りません。
「はっ! そういえば、精密機械や炭酸系の飲み物を運ぶトラックにはエアサスというシステムがありましたね、空気圧を利用して衝撃を緩和する… こっちの方が使えそうな気がしますね!」
「えあ…?」
「あ、すいません… 考え事をしていたもので、つい口に出てしまいました」
「一体どのような事を考えてらしたんですか? 不思議な単語が出てきましたけど」
「いえいえ、馬車の乗り心地をもっと良くするには…って考えていたんです」
「これ以上乗り心地が良くなる方法があるんですか? この状態でもすごく良くなったと思いますが」
「確かに従来の物に比べたら良くなったと思います。ですが、従来の物よりも速度が出るとなれば… 耐久性であったり安定性であったりと、考える事は増えてしまうのですよ」
「なるほど… 確かに速度を出せば、地面と干渉している部分の損耗は無視できませんね」
ミルフィの返事に感心してしまいます。この子… やはり年齢の割には頭の回転がものすごく速いですよね。
普通に走らせる事と、速度を出して走る事の違いをちゃんと理解しているんですね。
「これはアレですね、パスタ王国のミノタウロスを討伐した暁には、馬車の部品用に強度の高い金属を採集してみましょうか。やはり不思議金属の代表格であるミスリルか、金属系で最硬と名高いアダマンタイトとか… それ系の素材が取れるかどうか調べましょう」
「ミ、ミスリルを使って馬車を作るのですか? いったいどれほどの価値になるのやら…」
「買って作るのでしたらその心配も分かりますが、自分で採集して作るのでしたら問題はありませんよ。要はそれに伴うメリットの方が重要ですから」
「はぁ…」
3台の馬車群は、軽快な速さで道行く他の馬車をどんどん追い越し、通常の走行であれば10日から2週間かかる行程の3分の1を1日で走り抜けたのだった。
日が暮れ、街道沿いにある休憩用の広めのスペースに到着した私達は野営の準備を始めていました。
「では、魔道具をお貸ししますので調理の方をよろしくお願いします」
「はい、お任せください」
カラメル様の連れていた侍女さんに、自分が普段使っている調理用の魔道具を貸して夕食の準備をお願いし、私はミルフィとお風呂の準備を始めます。
浴槽は1つしかありませんが、私が足を伸ばしても余るくらいのサイズなので、頑張ればなんとか5人は詰め込めます。
なぜ5人か… それは! 普通の貴族令嬢であれば1人でお風呂に入る事は難しいのです! 当然カラメル様もミルフィも侍女を伴って入るのが普通なわけで… 5人という事ですね。
もちろん順番はありますが、他の侍女さん達にも入ってもらう予定です。レディたるもの清潔な心身は基本ですからね、ここは譲れません。
護衛の男性陣には… どうしましょうか。さすがに浴槽を使わせるというのは抵抗ありますよね、特にカラメル様とかが…
他にお湯を張れるだけの大きな入れ物が無いので、せめてタライかなんかにお湯を入れてあげて拭いてもらいましょう。数日とはいえ、旅のお供の方々が不衛生なのはいけないですからね。
そのような行程で旅を続け、城塞都市ビターの近所に到着したのは3日目の夜半だったため、無理をせずに野営をし、4日目の朝にめでたくガナシュ家のお屋敷に到着しました。
「強行軍でもないのにこれほど早く到着するとは… アリシア様のお作りになった魔道具の効果のほどに驚かされました」
護衛騎士のリーダー格だった女性がわざわざやって来て、声をかけてきました。
「まだまだ不完全なんですが、お役に立てたようで良かったですよ」
「これで不完全なんですか? 十分実用に耐えるものだと思いますが」
「いえいえ、今回の行程で雨が降りませんでしたからね。これで雨が降ったりすると… 途端に足元がおぼつかなくなり、滑ったり横転したりという危険性があるかもしれません。なにせ実証実験が皆無の魔道具でしたから、まだまだ改良の余地は見えますね」
「そうですか… ともかく長期を予想していた旅路がたった4日で戻ってこれたことには驚かされました。荷物を積んでこれなのであれば、輸送に関して色々と常識が覆させることでしょう」
確かにそうかもしれませんね、今回は盗賊とかと遭遇しませんでしたけど、万が一遭遇したとしても、高速移動できるのであれば、無理無く逃げられることもあるかもしれません。
しかーし! この魔道具の研究はしばらくお預けですよ!
次はパスタ王国まで飛んでいくための道具を作らなきゃいけませんからね!




