その123
誤字報告いつもありがとうございます。
「アリシア様! 馬車が浮いています! これはすごいですね!」
やたらと興奮気味なミルフィ… まぁ今の荷台には荷物が積まれていませんからね、この状態ならば軽々と浮くでしょう。
せっかくなのでその状態のまま荷台を引っ張ってみます。
「ほぅ、これは全然重量を感じませんね。荷物を積んでみないと分かりませんが、それでもこれなら馬への負担は大幅に軽減されるでしょう」
「つまり… 馬が疲れにくくなるばかりか速く走れるという事ですね?」
「そういう事ですね、これで移動時間はかなり短縮できるのではないでしょうか。まぁ突貫工事の簡易版ではありますが、有用性は高いと思いますよ?」
「素晴らしいです! 我が家の馬車にも取り付けていただけるのですよね?」
後方から急に声がしたので振り返ると… カラメル様がやってきていました。ミルフィの侍女が知らせたのでしょうかね…
どのみち合計4台の荷台に取り付けようとしていましたので、その場で許可をもらって早速取り付け。『統合』の魔法により一体化させているので、取り付け場所はどこでもいいので後部に取り付けます。
これで魔石の取り換えや、魔道具としての機能のON-OFFの作業をしやすくしておきます。
「一応魔石はブラックコカトリスのを使っていますが、稼働したままどれほどの時間機能するかは検証していないのでわかりません。移動中に様子を見ながら交換していく感じになります」
「貴重な魔道具をありがとうございます。下世話な話になりますが、この魔道具を譲ってほしいと思うのですが… 対価には何をご用意すればよろしいでしょうか」
「別に譲るのは構いませんが、恐らく使用する魔石は高品質でないと満足に稼働しないと思うのです。もしかしたらそっちの経費が嵩んでしまう可能性もありますよ?」
「今回使用するブラックコカトリスの魔石ですが、ブラックコカトリスの魔物ランクはどれほどなのですか?」
「私がギルドで聞いた話ではAランク相当だという事です。まず使ってみて、消耗具合を確かめてから考えた方が良いでしょうね」
カラメル様も魔石の話になると少々渋い顔になっています。いくら辺境伯領に魔物が多いとはいえ、Aランクはさすがにいないでしょうし、いたとしても討伐するのにかかる被害や経費を考えれば無理もありません。
まぁ検証していないから、現状一番魔力がこもっていると思われるブラックコカトリスの魔石を使用しているだけで、最低ラインはどこにあるかは不明ですので、解明するために落ち着いたら検証するのが良いでしょう。
とりあえず突貫工事でしたが、オリジナル魔法も含めてどうにかごり押しする事が出来ました。後は荷を積んだ時の浮き加減ですね… 貴族家の長期移動の際は荷物がとても多くなりますからね、ミルフィは家出だというので大した荷物は無いかもしれませんが、カラメル様は… 最初から長期の予定で来ているので結構ありそうですよね。
まぁそれでも、浮かないまでも軽減できるだけで十分な成果だと思っていきましょう。
さてさて、時間も時間ですしお風呂にでも行ってきましょうかね… 大勢で入るのも楽しいですけど、やはりボッチ気質なのか、1人の方がのんびりできてしまうんですよねぇ。
そんな訳で、随分と長期にわたって滞在してきた迷宮都市ボンボンですが、今夜が最後の夜となります。とはいえ、機会があればまた来たいですけどね。
ともかく、夕食時には結構なご馳走が出てきまして… なんだか恐縮してしまいましたね。
各種コロッケやメンチカツなんかを小さくして食べやすいサイズで揚げていたおかげで、油っぽいにもかかわらず、各種それぞれを堪能してしまいました。
やはり小さいサイズで色々と種類が楽しめるというのは良いですよね、通常サイズだと1個… 頑張って2個食べて終了ですもんね。
何はともあれ、明日の朝は朝食後に出発という事で予定が立っています。
立地的な面で言えば、ボンボンの町からパスタ王国に行く上で、レクタングル辺境伯を通るとしても大した遠回りではないんですよね。 確かに辺境伯領から北にあるガトー王国との国境は険しい森があって、魔物が多数いるとの事ですが… それは陸路を行けばという事ですからね、私には関係ありません。空路で急行するつもりですから、人員だけが問題あるくらいですね。
ミルフィと侍女が1人… それであれば私が2人を抱えて飛べば済みますから、そこは譲れない条件ですね。
まぁ今回作った浮遊板を改造して、風雨を防げる状態にして私が飛行魔法で引っ張っていくという手もありますね… でもまぁ、どうせ何日かは馬車の中で過ごす事になるのです、その時間を使って何か考えましょう。
ああ、考え事をしていたらすっかり眠くなってしまいましたね… 明日の事は明日に考える事にして、今日はもう寝ましょう。
翌朝、いつも通りの時間に朝食を取りに食堂に入る。
目を潤ませたチロルさんに挨拶し、ついでとばかりにぎゅーっとハグをしておきました。チロルさんは私よりも少しだけ身長が高いので、私が抱きしめるというよりも、抱きしめられたという感じになってしまったのは少々悔しい所です。 身長…もう少し伸びませんかね。
朝食を終えた後は、玄関ロビーで皆さんが降りてくるのを待つ事にします。どうせ荷物は全て収納しているので、見た目だけなら身一つでいつでも出られますからね。
これも日本人気質なのでしょうが、待たせるよりも待つ方が気が楽なのです。
「あっ、そういえばギルドの方には何も連絡を入れていませんでした。どうしましょうかね… 別にわざわざ言わなくても問題は無さそうですが、いちいち町を出る報告をする冒険者も少ないでしょうし、放っておきますかね」
テネシーさんには先日大量の黒コカ肉を卸しているので、きっと儲かってウハウハ状態になっているのでしょう。そんな状態でうっかり会ってしまうと… 間違いなくお肉を要求されますよね、在庫はあるのでそれは構わないのですが、お金の補充も出来ているので特に問題はありませんね。
ぼやーっとソファーに身を沈めて考え事をしていると、カラメル様と従者の方々、そしてミルフィとゆかいな仲間たちが降りてくるのが見えました。
「アリシア様! おはようございます」
「おはようございますミルフィ、カラメル様もごきげんよう」
「すぐに朝食を済ませてきます、今しばらくお待ちください」
「いえいえ、食事はゆっくりしっかりとってください。待つのは苦になりませんので」
そんな感じで食堂に入っていく皆さんを見送りました。




