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Heinvia Story  作者: Frey
プロローグ
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プロローグ


世界最高の自由度を誇るVMMORPGを触れ込みとして、「ハインヴィア・ストーリー」がリリースされたのは、入間いりま 風吾ふうごが13歳の時だった。

圧倒的な世界観を前に、風吾はすぐさまハインヴィアの虜となった。


とは言え、リアルを疎かにするつもりはなく、ゲームの世界に没頭しつつも学生の本分を忘れることなく過ごしていた。


幸い、頭の出来は良く、高校・大学と順当に卒業しゲーム仲間にも恵まれた。

マルチプレイ推奨のゲームにおいて、身近な人間とファンタジーの世界を共有するということを誰よりも楽しんでいた。


風吾がハインヴィアへかける情熱は高く、ゲーム内有料コンテンツはもちろん、オフラインのイベントには必ず参加し、ガチャ要素のあるオプションは網羅するまで回した。

その効果もあり、ゲーム内で知り合った仲間も含めて立ち上げた彼のギルドは1位の座を築き上げ、その牙城を崩せる者はいまだに現れていない。


いや、”いまだに現れていない”という表現は正しくないかもしれない。

今現在、ハインヴィアのサービス開始からまもなく15年が経過しようとしており、そもそもギルド戦が行われるほどのプレイ人口が残っていないからだ

 

風吾の仲間もそのほとんどがすでに引退か別のゲームへ移ってしまっており、残った人間もボーナスを受け取るためにログインだけしているような有様である。


しかし、風吾はハインヴィアの世界を離れることができなかった。

過去の栄光にしがみ続けている部分もある。

それ以上に、青春時代のすべてをつぎ込んだこの世界を手放すことが彼にはできていなかった。

 

ただ、すべてのコンテンツをクリアしてしまいハインヴィアでは文字通りやることがなくなってしまった一方で、ハインヴィアにすべてを注ぎ込んだ結果、その他にリアルでやりたいこともないという現実に、28歳になった風吾が葛藤し始めているのも事実だった。


「さすがにもう、卒業するべきかぁ...」


風が吹き抜ける小高い丘の上に立ち、風吾はつぶやいた。


最初は身内だけで組んだ小規模な集まりだったが、最後は誰もが及びつかない最高峰へと至ったギルド発祥の地である。


だが、かつて苦楽を共にしたギルドの仲間はもういない。

気の遠くなるような時間をかけて育てたキャラと装備を生かせる機会ももうない。


様々な感情が渦巻いた結果、風吾はついに引退することを決意した。


「最後くらい、おもいっきりかっこつけて終わろう」


そうして風吾は、使い続けてきた愛剣を競り立った丘の頂上に突き立てた。

身に着けていた防具も一緒に地面に置き、名残り惜しそうに装備を見つめながら


「今更新規で始める人なんていないだろうが、ハインヴィアをこよなく愛した俺からのプレゼントだ」


そう言った瞬間、唐突にシステムウィンドウが開いた。





『ゲームのクリア条件を満たしました。特典を受け取りニューゲームしますか?』





「えっ?なんだこれ」


 風吾は困惑した。


ハインヴィアには、シナリオに沿って冒険を進めるメインクエストは存在するが、装備の作成やキャラクターの育成、ゲーム内でのプレイヤー間の交流を主としているためメインクエストをコンプリートしてもゲームクリアとはならない。

そもそも、MMORPGには明確なゲームクリアという指標がないのが一般的である。

 

もちろん、公式の発表でもこのような仕様は公開されていないし、他プレイヤーで特典付きニューゲームをプレイしている存在など風吾は聞いたこともなかった。


それでも、最初は驚きはしたものの風吾は喜んでいた。


「もともと、引退するつもりだったんだ。1からやり直しになったとしても全人未踏の周回プレイ、やってみる価値はあるじゃないか」

 

風吾は、ウィンドウに表示された『はい』を選択した。



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