新たなダンジョンへ
――あれからさらに三日後。
体調もすっかり整った私がやって来たのは、メルクリウスから飛行機で十二時間。世界地図の左下にあるモロッペ大陸。近年魔石採掘の影響で森林破壊が問題視されてる土地である。
「――ガイドさんによると、もうすぐ到着みたいですね」
空港から魔石車両の荷台に揺られて三時間。獣道や野鳥の「ギャーギャー!」という鳴き声を聞きながら、密林をひたすら進む。
茂った蔦や小川が視界を遮るが、ジープさながらの車は密林をものともしない。
「セイラさん、暑くないか?」
「大丈夫。これくらいへっちゃらです」
亜熱帯の気候、ジメジメした湿気が肌に纏わりつくが、自分から言う必要はない。
「フレイは存在が暑苦しい。セイラ、無理するな。……清涼領域」
フレイに代わりサガが魔法を唱える。荷台を薄氷の膜が包み、冷んやり空気が気持ち良い。
「ありがとう。やっぱりサガさん、優しいね」
「と、当然だ。お前に汗は似合わないからな」
チョロい。そしてこれが姫プレイのコツ。男は健気な美少女をほっとけない。見返りを求めるでもない、自発的に『してあげたい』って思わせるのがネカマのテクニックだ。
フレイが悔しそうに、涼しげなサガを睨む。
(またやってる。けどお前らの格好が暑苦しいんだよな)
フレイは白鉄に赤い炎の模様を施したいつもの鎧。サガは灰色のローブと青いマント。少しはマチョを見習ってほしい。
「二人とも、今からダンジョンなのに喧嘩はだめマチョ。プロテイン飲むマチョ?」
荷台の後方で胡座をかく黒光り筋肉。ブーメランパンツから、プロテインのボトルを二つ取り出す。
「「いや、いいです……」」
「そうマチョ? じゃあせっかくだし、これ塗っとくマチョ?」
またパンツの中をガサゴソ。マチョ愛用のサンオイルが出てきた。ガチで四次元ポケットもビックリの収納力。
「「それもいいです」」
「マチョぉ……」
悲しげなマチョと目が合った。プロテインとサンオイルをゆっくり差し出してくる。
「え、えっと、じゃあ使わせてもらいま……」
「「させねーよ!」」
セーフ。息ぴったりの二人がパッと没収。流石私の下僕たち。
キキィッ、ガタン。
ちょうど車も止まった。どうやら目的地に着いたらしい。
「セイラ様と御一行! 地下ダンジョンに到着したヨ!」
サングラスの現地ガイドのおじさんが、運転席から大きな声を上げる。荷台からヒョコッと前を覗くと、ソレが大きな口を開けている。
「写真通りですね。ガイドさん、ありがとうございました」
「いいヨ! それじゃ一週間後のこの時間、また迎えに来るヨ!」
私たちを降ろし、元来た道を帰って行く文明の利器。残された私たちは、地下に続く遺跡の階段を見下ろした。
「セイラさん、俺が先行する。サガは周囲の確認と防御。マチョさんはセイラさんを頼む」
相変わらず主人公っぽく仕切り始めるフレイ。サガは頷き一つで応え、マチョは胸筋をピクピク動かして応える。
私も聖女衣装の懐からスマホを取り出す。
「それでは皆さん、配信開始しますねっ」
「「おう!」」「マチョ!」
配信開始をポチ。途端にスマホがふわりと浮き、魔力ホログラムを投射する。
「皆さん、おはこんにゃです! 今回は、この地下ダンジョンに挑戦しようと思います!」
漆黒魔石を手に入れるため、私たちの配信が幕を開けた――。




