私は最かわ聖女様
見た目は聖女、中身は三十路男! その名は……セイラ・トゥルサス!
――前世の記憶に残るアニメのキャッチフレーズを脳内改変しながら、私は肩を震わせていた。
星々の明かりが降り注ぐ荒野。数分前までダンジョンだった物の瓦礫、残骸が光の粒子となり夜空に昇っていく。
その星屑を散りばめたような大地に立ち、鈴のような声を降らせる。
「……みんな……」
冷たい風が吹き抜け、私の黄金の髪と瞳を揺らした。
頭上の魔力ホログラムをバレないようにチラ見。金の刺繍を施された純白のケープが風になびき、空色のタイトドレスが華奢な体つきを浮き彫りに。
(っぱ私可愛すぎる)
――もちろん映像だけじゃない。配信画面からはスパチャとコメントも鳴り響きまくってる。
『まじでこのダンジョン攻略するなんて……』『感動した。三万ゼニー投げるわ』『セイラ様愛してるちゅっちゅ』
流暢な自動読み上げ音声とピコンピコンとスパチャの音。吊り上がりそうになる口元を噛み締め、快感の音を全身で謳歌する。
「……ぷふっ」
余韻はこれくらいで十分だろう。そろそろいつものアレで決める時間だ。
『早くフレイ君とサガ様復活させろよノロマ』
(あ? 今なんつったクソアンチ。どうせ行き遅れババアの妬みだろ?)
……とは顔に出さずスルー。私が反論するまでもなくコメントが溢れ返る。
『妬み乙』『黙って見てろババア』『イライラすんなよ。更年期でちゅかー?』
完璧。同接一二〇〇万、訓練された信者の口撃にババアも憤死しただろう。
「みんなやめて。私が弱いからいけないの。そのバ……視聴者さんにひどいこと言わないで」
ここいらで鎮火。スパチャも一億ゼニーを突破したし十分。今度こそフィニッシュブロー。胸の前で両手を組み、膝をついて祈りのポーズ。
「すぐに治してあげるから。……いくよ」
ザワザワ流れる音声。みんなのお待ちかね、アレの時間。
笑いそうになるのを必死に堪え、涙を浮かべて口にする。
「せーの……完治の光!」
『『『完治の光いいいいいッ!』』』
優しい光が溢れ――ない。私にそんな力あるはずない。だが瓦礫の下に届いた声が、彼らを無理やり叩き起こす。
「セイ、ラ……さん……」
消えゆく瓦礫に炎が灯る。巨大な火柱が上がり、空気を焦がし尽くす。燃え盛るような真紅の髪と瞳の勇者・フレイが復活。
「……セイラ」
残骸が凍り付く。大きな氷柱が形成され、雪の結晶が空気に舞う。清流を思わせる水色の髪と瞳のクール眼鏡・サガが復活。
「……ま……マチョーッ!」
光の粒子が弾け飛ぶ。汗とサンオイルの匂いが空気に混ざり、大気を震わせる。完璧なサイドチェストを決める我らがタンク・マチョが復活。
『最強パーティ復活!』『絶対おかしいでしょ。魔力の光なかったんですけど?』『プロペラとかも速すぎて逆に遅く見えるだろ? セイラ様の魔力も一緒だボケ』
ピコンピコンピピピピコン! 沸き立つコメント。さらに伸びるスパチャ。
勘のいいアンチコメもすぐ流れる。嫉妬と妬みはただの快感。体の芯から喜びで震える。
(……姫プレイ、チョロすぎて草)
「セイラさん! 怪我はない?」
「すまないセイラ、助かった」
「マチョ、寝てたマチョ?」
立ち上がり、心配そうに私を囲うイケメン+筋肉。これこそが私の下僕。私の魅力とプラシーボ効果で無限復活する結論パ。
口を手で覆い、嬉し涙なんかも零してみる。
「よ、良かった……みんな、無事で……っ」
『8888888』『ありがとう……ありがとう……』『俺、一生セイラ様に付いてくわ』
私の前で跪いた三人の顔を順番に抱擁。今日一番の感動に沸き立つコメントを聴きながら、宙に浮かぶスマホに手を伸ばした。
――これが私、佐藤武尊の新しい人生だ。
ご高覧ありがとうございます。
現在2話目まで執筆してあります。
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