第10話「崩し」
夜の通りに立ち、過剰に整えられた人間の流れと判断の一致を俯瞰するように観察していると、この均一さが自然発生ではなく“自分を支点とした補正の結果”であることが明確に見え、その構造を逆方向に捻れば一瞬で崩壊に転じると理解する。
滑らかすぎる。
無駄がなさすぎる。
「……脆いな」
歩く。
人の流れに入る。
ぶつからない。
避ける。
繋がる。
「……揃いすぎだ」
一人の男。
正面から来る。
視線を合わせる。
ほんの一瞬。
「……ずらすか」
意識を傾ける。
ほんの少し。
男の足が止まる。
判断が遅れる。
その後ろの人間が詰まる。
「おい、どうした」
連鎖する。
流れが詰まる。
「……そこだ」
もう一人。
別方向。
同じように揺らす。
会話が途切れる。
言葉が出ない。
「……広がる」
数秒。
通りの流れが乱れる。
小さく。
「……いいな」
さらに押す。
複数人。
同時に。
判断がずれる。
動きが噛み合わない。
「ちょっと待て」
「何だよ」
声が重なる。
ズレる。
「……崩れる」
ギルドへ入る。
中も同じ。
整っている。
「……なら」
踏み込む。
中央へ。
視線が集まる。
自然に。
「……外す」
意識を反転させる。
“補正しない”
その瞬間。
会話が途切れる。
動きが止まる。
「……あれ?」
誰かが呟く。
「何の話してたっけ」
「……戻ったな」
混線。
空白。
再発。
「……続けるか」
さらに押す。
複数人。
同時に。
言葉が出ない。
判断が止まる。
「おい、どうしたんだ」
「分からねえ」
空気が乱れる。
「……いいな」
崩壊に近い。
だが――
「……まだ浅い」
止める。
意識を戻す。
瞬間。
流れが戻る。
会話が繋がる。
「……何だったんだ?」
理解されない。
「……操作できるな」
外へ出る。
通り。
さっきの乱れが残っている。
わずかに。
「……残る」
完全には戻らない。
「……癖になるな」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者。
明確に反応している。
【システム】
――異常拡大
――制御不能
「……来たな」
数が増える。
圧が強くなる。
「……遅い」
歩く。
止まらない。
町の中心へ。
人が多い。
密度が高い。
「……ここか」
立つ。
中央。
「……全部崩せるな」
可能だ。
一瞬で。
「……だが」
まだ早い。
「……次だ」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
「――来い」




