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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第4章「潜入者」

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第8話「孤立」

 ギルドの中に入った瞬間、昨日までわずかに残っていた複数の違和感の痕跡がほとんど消え、空気が不自然なほど均一に整っていることに気づき、その中でただ一箇所だけ“濃度の違う部分”が浮き上がっているのをはっきりと認識する。


 静かだ。


 整いすぎている。


 「……消えたな」


 視線を流す。


 テーブル。


 カウンター。


 人の動き。


 「……軽い」


 判断が速い。


 会話が繋がる。


 違和感はない。


 ほぼ。


 「……一つ以外は」


 例の男。


 席に座っている。


 だが、周囲と噛み合っていない。


 「……浮いてるな」


 「おう」


 男が声をかける。


 こちらへ。


 「……ああ」


 「今日どうする?」


 「……いつも通りだ」


 「分かった」


 会話は成立する。


 問題はない。


 だが――


 別の男が口を挟む。


 「お前さ、最近変じゃねえか?」


 例の男に向けて。


 「……何がだ」


 「なんかピリピリしてる」


 「……してねえよ」


 否定する。


 だが、弱い。


 「してるって」


 笑いが混ざる。


 「……違う」


 「ほらな」


 別の声。


 空気が変わる。


 「……逆転したな」


 疑う側が。


 疑われる側になる。


 例の男の視線がこちらに向く。


 強い。


 だが――


 孤立している。


 「……分かるか」


 周囲は気づかない。


 合わせている。


 「……ズレてるのはお前だ」


 空気がそう判断している。


 「……くそ」


 男が小さく呟く。


 理解できない。


 だが、否定できない。


 「……何かおかしいんだよ」


 小さく言う。


 「何が?」


 誰かが聞く。


 「……分からねえ」


 同じだ。


 だが、違う。


 「……共有できない」


 疑念が、伝わらない。


 「……孤立だな」


 席を立つ。


 男が一人。


 外へ出る。


 「……逃げたか」


 歩く。


 後を追う。


 通り。


 人の流れ。


 男は止まらない。


 だが、落ち着いていない。


 「……壊れてるな」


 角を曲がる。


 路地へ。


 「……来いよ」


 男が言う。


 振り返る。


 「……来たか」


 距離がある。


 だが、近い。


 「……お前だろ」


 「……何がだ」


 「全部だよ」


 言葉が乱れる。


 だが、核心に近い。


 「……証拠は?」


 「ねえよ!」


 強く言う。


 「……だろうな」


 「でも分かる」


 同じだ。


 最初と。


 だが――


 「……一人だな」


 共有されない。


 理解されない。


 「……意味がない」


 距離を詰める。


 一歩。


 「……来るな」


 男が下がる。


 「……終わりだ」


 気づいている。


 だが、遅い。


 動く。


 速い。


 押さえる。


 終わる。


 喰う。


 思考。


 記憶。


 「……深いな」


 かなり近かった。


 確信に。


 「……惜しい」


 処理。


 終わる。


 外へ出る。


 通りへ戻る。


 「……消えたな」


 完全に。


 「……整った」


 ギルドへ戻る。


 空気は同じ。


 軽い。


 均一。


 「さっきのやつは?」


 誰かが言う。


 「知らねえ」


 流れる。


 「……問題ない」


 視線を上げる。


 空間。


 向こう側。


 観測者。


 「……見てるな」


 人間は消えた。


 疑念も消えた。


 だが――


 「――上は残る」

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