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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第2章「侵食知性」

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第12話「観察」

 通りに出た瞬間、人の流れの中に自然に溶け込みながらも、ただ歩いているのではなく“それぞれがどのように動いているか”を分解するように見ている自分に気づき、単なる適応とは違う段階に入っていることを理解する。


 誰もが同じように動いているわけではない。


 歩く速度。


 視線の向き。


 距離の取り方。


 それぞれに微妙な癖があり、その差が“個体”としての識別に繋がっている。


 「……面白いな」


 同じ種。


 同じ形。


 それでも完全には揃わない。


 「……だからズレる」


 逆に言えば、そのズレに紛れれば見抜かれない。


 立ち止まる。


 通りの端。


 邪魔にならない位置。


 視線を動かす。


 観察する。


 対象は一つに絞らない。


 複数。


 比較する。


 荷物を運ぶ男。


 重さに応じて歩幅が変わる。


 足の運びが遅れる。


 だが、止まらない。


 「……維持してるな」


 子供を連れた女。


 視線が頻繁に動く。


 周囲を確認する。


 危険を避ける動き。


 「……優先順位が違う」


 武装した男。


 動きが少ない。


 だが、止まってもいない。


 余計な動作を削っている。


 「……近いな」


 だが、完全ではない。


 わずかに揺れがある。


 「……全部違う」


 それぞれが“基準”を持っている。


 統一されていない。


 だから――


 「……合わせられる」


 歩き出す。


 今度は、自分の動きを固定しない。


 対象を選ぶ。


 近くの男。


 荷物を持っている。


 その動きをなぞる。


 少し重く。


 少し遅く。


 「……こうか」


 違和感は出ない。


 むしろ、自然に見える。


 次。


 別の男。


 軽装。


 動きが速い。


 だが、無駄がある。


 その無駄を再現する。


 「……こうだな」


 さっきとは違う動きになる。


 だが、問題ない。


 むしろ――


 「……見えなくなるな」


 個体としての特徴が消える。


 “誰か”になる。


 視線が流れる。


 誰も止めない。


 誰も見ない。


 「……これか」


 理解する。


 擬態ではない。


 “埋没”だ。


 ギルドへ向かう。


 途中で何度か動きを変える。


 対象を変える。


 再現する。


 「……自由度が上がってるな」


 固定しない方が、見えにくい。


 ギルドに入る。


 空気が変わる。


 視線が来る。


 だが――


 「……薄いな」


 昨日より弱い。


 認識されていない。


 完全ではないが、確実に変化している。


 例の男。


 視界に入る。


 こちらを見る。


 一瞬。


 だが、すぐ外す。


 「……気づいてるな」


 完全ではない。


 だが、何かを感じている。


 男の視点。


 目の前の存在を見た瞬間、昨日までの“引っかかり”が薄れていることに気づくが、それが消えたわけではなく、形を変えて分かりにくくなっているだけだと直感的に理解する。


 違う。


 だが、言語化できない。


 カウンターへ向かう。


 動きは変えない。


 今は固定する。


 「……報告だ」


 依頼書を出す。


 声は自然。


 抑揚も問題ない。


 「早いわね」


 受付が言う。


 だが、昨日ほどの違和感はない。


 処理が進む。


 確認。


 報酬。


 流れは同じ。


 「……通る」


 完全ではない。


 だが、問題にならない。


 振り返る。


 例の男。


 視線が合う。


 一瞬。


 逸らさない。


 だが、長くも見ない。


 「……」


 何も言わない。


 だが、伝わる。


 外に出る。


 空気が変わる。


 人の流れに戻る。


 「……なるほど」


 固定する必要はない。


 状況に合わせる。


 対象に合わせる。


 「……それでいい」


 歩きながら、次の対象を探す。


 情報。


 動き。


 癖。


 すべてが材料になる。


 「……まだ足りない」


 量が足りない。


 種類も足りない。


 「――増やすか」

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