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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第2章「侵食知性」

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第7話「選択」

 目を開けた瞬間、外の気配がそのまま流れ込んでくるような感覚があり、壁一枚隔てているだけで完全には遮断されない音や振動が、連続した情報として頭の中に広がる。


 足音が通り過ぎる。


 会話が混ざる。


 扉の開閉音が周期的に繰り返される。


 「……朝か」


 時間の経過を、光ではなく“流れ”で認識する。


 眠っていない。


 だが、動いてもいない。


 その状態を維持したままでも問題はないが、この行動自体が“人間としての再現”になっている以上、無意味ではない。


 体を起こす。


 動きは安定している。


 昨日よりも自然だ。


 「……馴染んできたな」


 意識しなくても崩れない。


 それが変化だ。


 部屋を出る。


 廊下に出た瞬間、複数の視線が一瞬だけこちらに向くが、すぐに外れる。


 注目されていない。


 それが分かる。


 「……通ってるな」


 違和感はある。


 だが、排除されるレベルではない。


 外に出る。


 光。


 人の流れ。


 昨日と同じだが、見え方が違う。


 「……多い」


 情報量が増えている。


 いや、拾えている。


 会話の断片。


 動きの癖。


 視線の意味。


 「……理解が進んでるな」


 説明するまでもない。


 処理できている。


 歩く。


 流れに乗る。


 自然に。


 違和感は出ない。


 出ても、埋もれる。


 「……問題ない」


 ここまでは、順調だ。


 だが。


 足が、わずかに止まりかける。


 匂い。


 近い。


 人間。


 単体。


 裏路地。


 視線が少ない。


 「……いるな」


 条件が揃っている。


 遮蔽物。


 孤立。


 音の少なさ。


 「……喰える」


 思考が浮かぶ。


 自然に。


 抑えようとする必要すらないほど、当たり前の選択肢として。


 視線を向ける。


 路地の奥。


 一人。


 荷物を持っている。


 注意は前。


 後ろは見ていない。


 「……弱いな」


 戦闘能力ではない。


 状況認識の話だ。


 「……行ける」


 距離。


 時間。


 介入のリスク。


 すべてが許容範囲に収まっている。


 一歩。


 足が動く。


 自然に。


 流れを外れる。


 人の密度が下がる。


 音が減る。


 「……今なら」


 さらに一歩。


 距離が縮まる。


 呼吸が聞こえる。


 背中が見える。


 「……」


 手を伸ばす。


 そのまま届く距離。


 止まる。


 ほんのわずか。


 理由は明確だ。


 「……ここで喰うと、どうなる」


 場所。


 時間。


 処理。


 証拠。


 その後の動き。


 「……面倒だな」


 処理はできる。


 隠せる。


 だが、リスクがある。


 今は内部に入った直後だ。


 「……優先順位」


 整理する。


 捕食。


 情報取得。


 潜入。


 「……今は」


 手を引く。


 静かに。


 気づかれないように。


 「……まだだな」


 男がそのまま歩いていく。


 何も気づかずに。


 「……逃がしたか」


 そういう見方もできる。


 だが。


 「……違うな」


 逃がしたんじゃない。


 “選ばなかった”。


 路地から出る。


 再び人の流れに戻る。


 音が増える。


 視線が散る。


 「……今は、人間として動く」


 決める。


 明確に。


 曖昧にしない。


 「……捕食は、その後だ」


 記憶の中の情報を引き出す。


 ギルド。


 人が集まる場所。


 仕事。


 情報。


 「……効率がいい」


 自然に足が向く。


 迷いはない。


 「……まずは中に入る」


 構造の中心へ。


 より深い場所へ。


 建物が見える。


 人の出入りが多い。


 武装した者。


 軽装の者。


 様々だ。


 「……ここか」


 立ち止まる。


 一瞬だけ。


 呼吸を整える。


 違和感を抑える。


 「……行くか」


 扉を押す。


 中へ入る。


 空気が変わる。


 視線が集まる。


 だが――


 「……通るな」


 止められない。


 拒まれない。


 「……問題ない」


 足を進める。


 内部へ。


 人間の構造の中へ。


 さらに深く。


 「――侵入、継続」

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