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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第1章「異常個体」

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第18話「進化」

 ――沈む。


 意識が、深く、ゆっくりと沈降していく。


 だがそれは、途切れる感覚ではなかった。むしろ逆だ。輪郭が削がれるどころか、曖昧だった部分が一つずつ明確になっていく。


 思考が、澄む。


 自分という存在が、より精密に“定義されていく”。


 ……これは、崩壊ではない。


 再構築だ。


 身体が溶けている。


 形を失い、境界を曖昧にしながら、内側から構造が書き換えられていく。


 だが、その変化に混乱はない。


 恐怖もない。


 すべてが、理解の中で進んでいる。


 捕食してきたもの。


 牙獣鼠の敏捷。


 腐食狼の耐久。


 腐敗人形の特性。


 そして――人間。


 それらすべてが、ただの“蓄積”ではなく、“再配置されるべき要素”として並び替えられていく。


 無秩序だった情報が、意味を持つ。


 断片だった能力が、体系として繋がる。


 ――侵食。


 その概念が、核として浮かび上がる。


 ただ食うのではない。


 ただ取り込むのでもない。


 理解し、解析し、最適化し、そして侵す。


 対象の構造を崩し、自分の構造として再定義する。


 その機構が、自分の中に組み込まれていくのが分かる。


 ……なるほど。


 思考が、静かに結論へ至る。


 前の状態――あれは“暴走”だった。


 処理が追いつかず、ただ加速した結果としての破綻。


 だが、今は違う。


 これは。


 ――制御された加速だ。


 その差は、決定的だった。


 視界の奥で、表示が展開される。


────────────────────────

【システム】


進化進行中……


構造再構築:完了

適応補正:最適化

侵食機構:展開


────────────────────────


 処理が速い。


 だが、負荷はない。


 むしろ余裕がある。


 思考と処理が、完全に噛み合っている。


 遅延がない。


 破綻もない。


 すべてが、意図通りに動く。


 その時、記憶が流れ込む。


 今までに捕食したすべて。


 動き。


 構造。


 弱点。


 それらがただ再生されるのではなく、“解析済みの情報”として提示される。


 どこを壊せばいいか。


 どう侵せばいいか。


 その答えが、最初から存在している。


 ……効率が違う。


 そう結論づける。


 この段階に至って、ようやく理解する。


 進化とは、単なる強化ではない。


 同じ延長線上の成長ではない。


 ――段階の切り替え。


 それそのものだ。


 やがて。


 変化が、静かに収束する。


────────────────────────

【システム】


進化完了


────────────────────────


 浮上する。


 意識が、ゆっくりと現実へ戻る。


 視界が開く。


 そして、最初に理解する。


 ――違う。


 見えているものは同じはずなのに、捉え方がまるで異なる。


 空間。


 距離。


 気配。


 それらが“感覚”ではなく、“情報”として処理される。


 曖昧さがない。


 誤差がない。


 すべてが、明確だ。


 身体を動かす。


 滑らかに、無駄なく。


 以前より軽い。


 だが同時に、密度がある。


 単純な強化ではない。


 構造そのものが変わっている。


 その確信がある。


 静かに、自分の状態を確認する。


────────────────────────


個体名:未設定

種族:捕食侵食体

ランク:E


レベル:1(再構成)


【ステータス】

HP   :40 / 40

MP   :10 / 10


攻撃  :12

防御  :4

敏捷  :10

知性  :5


【スキル】

・捕食 Lv2

・酸分泌 Lv2

・逸脱吸収 Lv2

・危機感知 Lv1

・嗅覚強化 Lv1

・耐久強化 Lv1

・反応強化 Lv2

・気配遮断 Lv1


【固有能力】

・侵食解析

 対象の構造を解析し、最適な侵食手段を生成する


【称号】

・規格外個体

・存在汚染


【状態】

進化完了


────────────────────────


 ……明確だ。


 前とは、比較にならない。


 特に。


 “侵食解析”。


 これがすべての核になる。


 対象を見れば分かる。


 どこを壊すべきか。


 どう侵せばいいか。


 最短経路が、最初から提示される。


 ……無駄がない。


 その結論に至る。


 その時。


 遠くで、気配。


 異形。


 まだいる。


 そして。


 別方向に、人間。


 複数。


 そのすべてが、同時に把握できる。


 距離。


 強度。


 危険度。


 すべて。


 ……いい。


 その感想が、自然に浮かぶ。


 前とは違う。


 不確定ではない。


 曖昧でもない。


 ――判断できる。


 やれるか、やれないか。


 その答えが、最初から出ている。


 そして。


────────────────────────

【エラー】


干渉レベル上昇


────────────────────────

────────────────────────

【エラー】


観測対象外領域へ接近


────────────────────────


 ……問題ない。


 その表示に対して、何も感じない。


 危険も。


 異常も。


 すでに“前提”だ。


 ゆっくりと、身体を広げる。


 新しい構造。


 新しい機能。


 そのすべてが、自然に馴染んでいる。


 違和感はない。


 むしろ。


 これが“本来の形”だとすら思える。


 そして、結論を出す。


 ――次は、逃げない。


 あの異形。


 あの人間。


 すべて。


 捕食対象だ。


 その判断に、迷いはない。


 恐怖もない。


 ただ、最適な順序を考えるだけだ。


 どこから崩すか。


 どこを侵すか。


 どう処理するか。


 その答えを導きながら。


 俺は、静かに闇の中へと踏み出した。

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