第12話「境界線」
都市全域が単一の前提で完全に同期した状態を維持している一方で、その外側にある未統合領域との接触面において、構造の差異がはっきりとした“境界”として現れていることを確認する。
同じではない。
だから、線になる。
都市の外周。
道が続く。
だが。
途中で止まる。
見えない線。
人が立ち止まる。
「……何だこれ」
誰かが言う。
目には見えない。
だが。
感じる。
“違い”。
内側。
揃っている。
迷いがない。
外側。
揃っていない。
迷いがある。
「……気持ち悪いな」
外の人間が言う。
境界の手前で止まる。
進める。
だが。
踏み込みたくない。
「……何かある」
正確だ。
構造が違う。
対象の男が立つ。
境界の内側。
視線を外へ向ける。
「……止まってるな」
短く言う。
外の人間。
進まない。
判断が遅い。
迷いがある。
「……来ないなら」
問題ない。
こちらから行けばいい。
別の人間。
外側の個体が一歩踏み出す。
境界へ。
足が止まる。
「……やめとくか」
引く。
恐れではない。
違和感。
処理できない。
だから避ける。
「……面白いな」
観測する。
内部では存在しない反応。
だが。
長くは続かない。
もう一人。
別の個体が近づく。
迷う。
だが。
一歩踏み込む。
境界を越える。
その瞬間。
止まる。
思考が遅れる。
視線が揃う。
「……あ」
短く声が出る。
次の瞬間。
動く。
内側と同じように。
「……こっちだ」
自然に言う。
変わる。
外の個体が。
境界を越えた瞬間に。
「……やっぱりな」
観測する。
抵抗はない。
ただ、遅いだけだ。
なら。
時間の問題。
境界の外。
まだ変わっていない人間たち。
距離を取る。
近づかない。
だが。
完全には避けられない。
道は繋がっている。
人は動く。
接触は起きる。
「……来るな」
誰かが呟く。
その瞬間。
揃う。
視線が。
歩幅が。
選択が。
境界が揺らぐ。
線が、にじむ。
「……消えるな」
短く言う。
完全な壁ではない。
ただの“差”だ。
だから。
埋まる。
男の視点。
内側と外側の違いを明確に認識しながらも、その差が時間とともに消えていくことを当然の流れとして受け入れている。
「……いい」
一方。
高い位置。
都市の端。
境界線が見える。
揃っている側。
揃っていない側。
はっきり分かれている。
だが。
ゆっくりと。
確実に。
内側が広がる。
「……すぐだ」
止まらない。
戻らない。
「――全部、同じになる」




