第13話「圧縮」
選別によって局所的に固定されていた複数の現実が、互いに干渉し合うことで維持コストを増大させ、結果としてより強固な前提だけを残して他が連続的に消失していく流れへ移行していることを確認する。
残る数が減る。
それだけで、強くなる。
通り。
いくつかあった経路が、さらに減っている。
一つ。
それ以外は、見えない。
「……さっきまであったよな」
誰かが言う。
だが。
思い出せない。
「……気のせいか」
処理される。
消えたものは、最初からなかったことになる。
広場。
複数あった“通路”。
今は、一つだけ。
誰も迷わない。
全員が同じ経路を選ぶ。
「……これだな」
確認する必要がない。
選択は終わっている。
対象の男が歩く。
止まらない。
視線も動かない。
「……決まってる」
短く言う。
指を動かす必要もない。
すでに固定されている。
「……いいな」
観測する。
変質個体は、もう選ばない。
“残ったもの”に従う。
逆転が起きる。
最初は、個体が選んでいた。
今は。
現実が、個体を選ぶ。
「……圧縮だな」
数が減るほど、強度が増す。
別の通り。
最後まで残っていた別の現実。
それが、揺れる。
「……消える」
誰も選ばない。
維持されない。
その瞬間。
完全に消失する。
痕跡も残らない。
「……終わったな」
領域が統一される。
一つの前提。
それだけが残る。
男の視点。
複数あったはずの選択肢が消えたことに違和感を覚えず、最初からその一つしか存在しなかったかのように自然に受け入れている。
「……これでいい」
それで確定する。
一方。
通りの外れ。
歩く。
止まらない。
視線を上げる。
町。
ズレが消える。
重なりがなくなる。
矛盾が減る。
「……整ったな」
崩壊の先。
再構築が終わる。
「……いい」
残ったのは。
ただ一つ。
「――これだ」




