その12
『こちら、心のパクルパン、もといスターインザラヴ、どうぞ』
「こちらiFormulaX及びイージス、どうぞじゃ」
『こちら……ウェディング……どうぞ』
「ええっと……こちらフォックスター、どうぞ」
『こちらJマック、どうぞです』
『…………あ、わたしか、こちらルードヴィ』
『よし、全員大丈夫だね……』
……これは一体どういうことなのだろうか……
『ニャルラトホテプめ……背後には気を付けた方が良いよ』
『それじゃあ、始めさせてもらうよ!』
というか、なにをどう間違えたらミ=ゴ討伐戦をすることになって、更にどうしたらそれがこんなノリになるのだろうか?というか、頼むからお前らマジメにやれよ
状況を整理するのだが、まずプールでの殴り込み発言の後、邪神仲間を召集して一旦上がってから、作戦会議をしたのだが……まあ、説明するよりもこちらの方が手っ取り早いので、作戦会議のすこし後も含めて、回想シーンとさせてもらう。
「……アバンスクンがミ=ゴに狙われている?じゃあ殲滅しようじゃないか!」
「ミ=ゴ……確か、蟹みたいなのでしたっけ?」
「蟹か……焼いて食べちゃってもいいかな?」
「いや……食べられないからな?多分」
「でも……場所が分からないことには……攻めに行けない…………」
根本的な事を忘れていた……敵の本拠地が分からない以上攻めに行けない……
「そういえば、確かにそうじゃな……」
「あの……心当たりがあります……」
「なんじゃと!それはどこなのじゃ!」
「えぇっと……その……」
「落ち着けクティーラ、焦っちゃ駄目だ」
「おぬしの事じゃろうが!何故にそこまで落ち着いていられるのじゃ!」
「いや……まあ……昔から色々あったから……慣れて?」
「何をどうしたらこんな事態に慣れることが出来るのじゃ!」
ニャルラトホテプの時にもさんざん突っ込まれたのだが、実際慣れているので仕方がない……父さんからのプレゼントのせいで仁義無き戦争に巻き込まれて、攫われたりもすれば、こうもなる。
「まあまあ、落ち着いてくださいね~……で、ガタノゾアさん、一体どこなのですか?」
「確か……あ、地図をください……大体……この辺の建物に潜入していたはず……?」
「ここって……どこ?」
「……ボクにも分からないけど……どこなんだい?」
「こんな所……ありましたっけ?」
「分からないけど……どこにあるの?」
「とっ……とりあえず案内させてもらいますわ」
そんなグダグダとかそんなチャチな物では断じてない作戦会議の後……何故かニャルラトホテプが無駄そうな荷物が入ったリュックサックを色々かかえているのはほうっておく。
とりあえず、ガタノゾアの案内で来たミ=ゴの潜入場所(推定)……
「ここは……ニャルラトホテプに……任せよう」
「無双を開始する未来が見える……というか、この廃ビルだけか?……というかこのビル、いわく付きの臭いがプンプンするんだが?」
「確か……潜伏している場所の候補としてはあと2ヶ所ほどありますわ」
「「「…………………………」」」
候補地は三ヶ所……総勢7人……で、案内役のガタノゾアさんはとりあえず三ヶ所目で戦ってもらうとして……ここに残ってもらうのは2人。念には念を入れて、一斉に攻撃開始したいのだが……
「ボクに良い考えがある……ちょっと待っててくれないかな?」
そう言って、ニャルラトホテプは担いでいたリュックサックを下ろして、リュックサックの中を漁り始めた。……探すのに邪魔なものを少し出したのだが、絶対にいらないような物まで混じっている。核の炎に包まれた世紀末のモヒカンが使ってそうな火炎放射器とか、狩人が使いそうな、人の身長ほどの長さがある剣とか色々……というか、火炎放射器はいいとして、大剣はどうやってリュックサックに入ったんだ?
「あ、これはつきのいし……懐かしいなぁ……」
「なんでお前が月の石なんて持ってんだよ!」
「あ、つきのいしと言っても、進化は出来ないからね?」
「どうでもいいよ!早く探せ!」
というか進化できない月の石ってひょっとしてあれか?13号の……
「……あ、これはエジプトの王様から借りパクしてた千年ダイズ……見なかったことにしておこう」
「おいコラ」
借りた物はちゃんと返せよ、というか何だよ千年ダイズって
「…………美品、しかも松本先生のサイン入りBrackLotus四枚セット、1Mスタートだよ!」
「ちゃんとスリーブに入れて大切に保管しろ!その超レアカード!あとオークションか!」
あとサイン入りだと一応美品じゃない気がするんだが?
「……あったあった……はい、無線6つ~」
「ところで、一個足りないが」
「え?クトゥグァの分があると思っているのかい?」
「撤収撤収~ニャルラトホテプは置いて3対3に分かれようか~」
「…………ニャルラトホテプを見張っていないと……サボるかもしれないから不安だから……ワタシは残る……それが上司としての役目……」
ヨグソトースが珍しく上司っぽいこと言っている……まあ、一応ニャルラトホテプの上司なんだけど
「ニャルラトホテプ……無線4つ渡す」
「分かってますよ……はい、どうぞ!」
語尾にハートが付きそうな言い方をするニャルラトホテプ……ねぇわ~
「ありがとうな、大切に使わせてもらう(なんだかんだで結局使わない)」
「ん?今、なにか……ノイズが混じらなかったかい」
「気のせいじゃないか?(トーテムポールコースをたどるか、エクスカリバーコースをたどるか……どっちだろうね?)」
「うん、ボクの気のせいだよね。まさか、『大切に使わせてもらう』と言っておきながら使わないなんてこと、考えていないよね?」
読まれていたのか!?僕の心の中が!……まあ、ツン成分の純度95割と言われた僕のことだし、バレたのも仕方がないな。
「まあ、(僕以外の誰かが)連絡するから、それまで待機しててね」
「分かった、じゃあそれまでだらけているから、準備ができたら折り返し連絡するよ」
「こいつダメ人間……じゃない、ダメ邪神だ!骨の髄までダメ邪神だ!」
「じゃあワタシも……限界までだらけさせてもらう……」
「ヨグソトス!おまえもか!」
別に僕は独裁者じゃないし、ヨグソトース達が反乱を起こしたワケじゃないけどね
「一応、連絡するときには偽りの名を使うからね……分かったのなら、ゆっくりと向かってね」
この後、二ヶ所目に向かって、バイアクヘーさんとクトゥグァさんにその場所で待機してもらってから、三ヶ所目にたどり着いて、若干待機して今に至る。
『行くよ?3、2、1……突入!』
「『突入!』じゃねぇよ!ニャルラトホテプ!」
『ゴーゴーゴー!』
「クトゥグァさん落ち着いて!」
なんなんだよこのノリは!
「わらわ達も行くぞ!開戦じゃ!」
「一番槍は任せてもらいますわ!ヘブンズストリングス!」
ガタノゾアさんが初っ端から髪を伸ばして壁に向かって大技っぽいのを繰り出した。どうみても壁をぶち破るだけの時には使わなくても良いような大技……完全に無駄使いだな、今の
「突入!…………ありゃ?これは一体どういう事じゃ?」
「もぬけの殻……ですわね」
「ガタノゾアさん……どういうことなんだよ……あんたの情報だろうが……」
「いえ……確かにここに潜入して……」
「いや……ここにいるという情報は確かのようじゃな……もっとも、隠れておったようじゃがのう……そして退路も断たれ……囲まれたようじゃな……」
クティーラにそう言われて姿を隠す必要がないと悟ったのか、暗闇に隠れていたミ=ゴは発光器官を光らせ、物陰に隠れていた個体は一斉に出てきた……
「クティーラ!なんか一番良い技無いのか!」
「わらわが名付けた、『ノアの箱船』という技があるのじゃが」
「却下だ、んなもん!名前の時点で嫌な予感しかしねぇよ!」
「ならば、『超銀河魔法インフェルノ』を」
「宇宙の法則が乱れそうだからやめろ!」
「ならば……『めった切りファイヤー』を……」
「焼くか斬るかどっちかにしろよ……ってそんなこと言ってる内に敵が近い!」
「…………別に戦うのは良いのですけど……」
僕の近くのミ=ゴの群れにガタノゾアの髪が伸び……そして髪が触れたそばから自壊した……
「全部壊してしまっても構わないのでしょう?」
ガタノゾアさんは神話のメデューサのような笑顔で、そう言った。
「…………構わん、行け」
ガタノゾアさんの覚悟にこたえるべく、普段とは口調を変えてみたのだが……これどう考えても人間やめて吸血鬼になった方の台詞じゃん。
「ガタノゾアが開けた敵の包囲網が早くも塞がりそうなのじゃ!」
「関係ない、行け」
「それはわらわにおぬしをつれて強行突破しろということか?……無茶苦茶じゃな、おぬしは」
「もっとも、わらわも暴れられるのなら文句は無いがのう」と言って、一瞬でコスプレ……もとい、服装が魔法少女のそれのようなものに変わり、服装が変わると同時に大技の前動作らしきものをし始めるクティーラ。……動かない方が良いよな?多分僕がこの場所から動かないこと前提でぶちかますつもりだと思うし
「どくのじゃアバンス!」
「じゃあなんで何も言わなかったんだよお前は!」
文句を言いたいのだが、流石にクティーラの頭上の火の弾に当たって上手に焼かれたくはないので、当たらないように少し場所を移動する……
クティーラは水属性なのに火なのはおそらくそういうスキルを使って誰かに技を借りたのだろう。きっとそうだ、うん。
「滅せよ、超銀河魔法、HELL!」
「%§£ω♂!」
ミ=ゴの怯える声……名状しがたい声なので、適当だが
「アハハハハ、見よ!ミ=ゴがゴミのようだ!……ってお前のような魔法少女がいるか!」
何をどうしたら、魔法少女モノでよくあるような服装で、触れたミ=ゴが一瞬で蒸発する火の弾(幸い、建物は焦げただけで済んだが、よけた距離が少なかったからか、若干熱かった)を平然として撃てるのだろうか?そんな魔法少女いるにはいるかもしれないけど、ほとんどいないよ!
「というか、ガタノゾアさんに当たったらどうするつもりだったんだよ!」
「……マジスマーンじゃ、テヘリ」
ご丁寧に手でポーズをとりながらこんなふざけた謝り方を、クティーラはしやがった……地味に可愛かったのが余計に腹立つな……
「…………死にかけたのにそんな謝り方されたらガンディーでも親指が目に刺さるようにして殴り抜くな……多分」
政風にたとえるならば、『アルカでも闇エンコマにつくレベル』といったところだろうか?
「とりあえず、先に進むぞ。ミ=ゴが混乱しておる隙にのう」
「あ…………ああ……」
今に始まったことではないのだが、マイペース過ぎではないか? クティーラは
「てい、ていっ、そいやっ、「武」の頂が見えるのじゃ!」
バキッ、ベキッ、ゴリッ、ブシャァァァ!
「………………何も言わないよ、魔法少女なのに子供の夢壊してるとか、ステッキで撲殺とかグロすぎて魔法少女(あくまでも服装は)がすることじゃないとか……言わないよ」
所々ミ=ゴの体液がかかってかなりグロいことになってる事に関してはもはや何も言うまい……
「…………思いっきり口に出しておらぬか?おぬし」
おおっと、口に出してたか……まあいいや
「で、どこに向かっているんだ?」
「とりあえず屋上じゃ、地下を調べるのはその後でも遅くなかろう」
「ところで、ガタノゾアさんは?」
「地下に進んだようじゃな」
「……じゃあ地下を調べる必要ないんじゃないか?」
「……………………ガタノゾア殿が地下で力尽きて倒れるかもしれないからじゃ」
「うん、うっかりミスって認めたらどうだ?」
「細かいことは別によいのじゃ!さっさとゆくぞ!アバンス!」
「はいはいっと」
クティーラをいじるのはこのくらいにして、さっさと進みますか……クティーラに指示を出して
どうした、戦わないのか?……僕がミ=ゴと生身で戦ったら死ぬよ?どこぞの蟹と契約した噛ませ犬並みに速攻で死ねる自信あるよ?
『フフフ……ハハハハハ!ハーッハハハハハ!ようこそ、我が3つの要塞へ……歓迎しようか、諸君』
ミ=ゴ相手に(クティーラが)無双をしていると、そんな声が聞こえてきた。
「……ミ=ゴを操っている奴か」
『その通りだ、私がミ=ゴを操るリーダーにして世界の支配者!蟹江斬人だ!』
「誰だよ!お前一体誰だよ!」
悲報、今回の事件の元凶はどこの馬の骨かも分からないようなただの人の模様。
あと世界の支配者って……プークスクス
『キミたちが知ってのとおり、私が使役するミ=ゴの目的はただ一つ…………第二ビルの元少年……君だ』
「僕だと……一体、何のためにだ」
『何故?か……実に面白いじゃないか!あらゆる邪神の呪いをはねのける君のその力!それを奪うためにだ!』
「…………そんな力僕にあるのか?クティーラ」
「いや、まったくもって、欠片もないのじゃ。強いて言うならば……お主の母親が…………いや、何でもないのじゃ」
「いや、最後まで言えよ」
『私を止めたければ、3つのビルのどこかにいる私の元までたどり着き、そして私を倒してみろ……チュートリアルはこれでおしまいだ』
支配者発言といい、チュートリアル発言といい、お前はどこのK場さん気取りだよ。
そんなことはどうでもいいけど、奴らの狙いはやっぱり僕か……
「…………クティーラ、僕を守ってくれ」
「合点承知じゃ!ドンドン守るのじゃ!……ちょっとまっておれ、確かこの辺に……あった、ほれ、『魂と記憶の盾』じゃ。コスト3の防具にしてはなかなか使いやすいぞ?なにせ破壊されても装備しておった本人の防御力を短時間じゃが底上げし続ける優れものじゃ」
「なにその使用制限かかりそうな防具」
「なに、素早さが無くなって動けなくなるが気にすることはないのじゃ」
「壁にすらならねぇ!それ装備したらただの置物になるじゃねぇか!」
「置物ではないぞ?もっと悪いのじゃ。なにせ、勝敗条件にダイレクトに関わっておるからのう」
「じゃあいらねぇよ!そんなもの!」
ゲームで例えるなら、敗北条件にダイレクトに関わってるキャラが微動だにしないような感じになる。有り体に言えば、ただの的になる。
「ならば……ほれ、ビクトリートゥウェルブ……御守りじゃ」
「そいつの効果使えって事なんだろうけど、間違いなく狙い撃ちされるよね?というか、そもそも使えないけど」
「まあよい。ミ=ゴの増援が来たようじゃぞ?」
「そっちは任せた、僕は……クティーラの背中を守ってるから」
「つまりは何もせぬと……盾で殴ったりはせぬのか?」
「断る……そういえば、武器になるかどうかは分からないけど、鉄板を持ってきてるんだった」
「不死身か?剛腕か?炎上か?それとも、力士か?」
「不死身の……ってなんでそう露骨に残念そうな顔をするんだよ、いくらお前でもそういうオンドゥル王子みたいな事は……」
「出来るのじゃ、さっきからやっておる魔法にせよ、このキャードを媒介にして発動しておったのじゃ」
そういったクティーラは、杖の先にセットされている一枚のカード……ロマンコンボの軸に使われてて、リメイク後はガチデッキ(なお、主軸のカードの最後の輝きだった模様)に入れられたやつ……をこっちに見せた。宇宙の法則が乱れるような予感がするので、乱発はやめてほしい。
というか、もし不死身じゃなくて炎上する者だったら……ひょっとして僕が火達磨アタックする羽目になっていたのだろうか?……サンキューヨグソトッス、命拾いした……
「地獄の業火につつまれればよいのじゃ!ヒャーッハハハ!ファイヤー!」
「無理すんなクティーラ……」
クティーラがミ=ゴにぶっぱする度、あたりにこんがり焼けたいい匂いが漂う……ミ=ゴって食えるのかな?クトゥグァさんは『食べてもいいかな?』とか言ってたけど
「後ろにいるのじゃ!」
「っ!鉄板!」
『@Д@〆!』
……意外と脆いな、ミ=ゴ……鉄製のカード投げただけで倒れたし……
バキッベキッ……バリッ
「鉄板回収っと……どうしたクティーラ?暇なのか?こっちの方を見て……」
「いや……おぬしもなかなかに外道じゃな、と」
失礼な!ニャルラトホテプよりはマシだと自分では思っているのに。
「進むぞ?ミ=ゴ相手にどれだけ戦おうと、レベルが僅かにしか上がらないからのう」
「ミ=ゴまさかの道場未満かよ……」
「ファイヤー!」
「もうお前1人でいいんじゃないかな?」
「今のはHELLではない……わらわの火炎流星弾じゃ」
「お前はどこの魔王様のつもりだよ……」
「ヒートヒートじゃ!」
「HJよりも暴発して酷いことになりそうだからやめろ!」
そんなアホなやりとりをしているうちに最上階まで着いたのだが……
「(屋上自体)ないじゃん」
「おかしいのじゃ……一階から全てのフロアを探したハズなのじゃが……ミ=ゴしかおらんのう……」
『……あーあー、こちら自称天使のニャルラトホテプちゃん、どうぞ』
突入する前に、念のためにとクティーラから受け取っていた無線から、ニャルラトホテプのアホな声が聞こえてきた。
「ニャルラトホテプ……一体なんだよ自称天使って……」
『説明したいのは山々だけど、時間がないからカットさせてもらうよ……一応報告するけど、こっちのビルにはいなかったよ』
「じゃあ、バイアクヘーさん達の」
『こちらルードヴィッヒ及びJマック、すべてのフロアを焼き尽くすも、隠し扉の類は見当たらず……繰り返す、こちらのビルにはいない模様……ってちょ……バイアクヘーちゃん!無理矢理奪っていかないで!』
『こちらJマックもといハンス、ニャルラトホテプさんの証言からしてあーちゃんとクティーラちゃんのいるビルの可能性が高いです……あ、ガタノゾアさんを忘れてました、テヘッ』
「…………そういえば」
『ワタシを……呼んだ?』
「いや、残念ながら呼んでないけど…………ガタノゾアさんは?」
『そういえば……忘れてた』
『今すぐボクが向かうから、一応入り口辺りにいて!』
『ニャルラトホテプ……うるさい』
ヨグソトースが無線を持っているはずなのに、こちらまで大音量で聞こえたという事はつまり…………ヨグソトースに合掌……
「さて、降りるぞアバンス」
「…………どうやって来るつもりなんだろうな……道分からないはずなのに……」
「……ニャルラトホテプ……いや、ニャルラトホテプさん、何をしているんですか?」
「…………露骨に距離を取らないでくれるかい?そんな誰にも見せないような他人行儀な姿勢をとらないでくれないかい?」
「いや……誰だろうと、身内がパラシュートが引っかかって宙ぶらりんになってたら他人のフリしたくなるだろ……」
なんか見事な感じに窓の跡に引っかかって、ほとんど身動きがとれなくなっている。
「そっとしておいて、バイアクヘーさん達を待つ?」
「いや……ガタノゾア殿が戻らぬ以上、急いで向かわねばなるまい……のう、アバンス」
「……じゃ、そういうことで」
「せめてボクを下ろしてから行ってくれないかな!?」
地下には誰もいなかった……本来ならいるはずのガタノゾアさんさえ……
「……隠し扉か?やっぱり」
「どうやらその可能性が高いようじゃのう……念のために補助効果をかけておくべきじゃな……カードライド、『ミラクルフィーバー』!」
「……どういう効果なんだ?それ」
「幸運のステータスがかなり上昇するのじゃ、これで即死攻撃も怖くないのじゃ。……まあ、体力が若干減るがのう」
「じゃあ駄目じゃねぇか!体力減るなら駄目じゃねぇか!」
即死攻撃で即死の可能性を減らす代わりに体力が減るのでは本末転倒じゃないか?
「更に、相手がミスする確率が1.5パーセント上昇するのじゃ」
「気休め程度にしか上がらねぇな……オイ」
「くっ…………つ、ついでに、タロットカードで正位置を引く可能性が高まるのじゃ!」
「それでも逆位置が出るときは出るんだよな……」
「ぐぬぬ……」
死神の正位置とか文字通り死ねという意味だし、シャレになっていない。
あと、どうでもいいけど教祖様(TUEEEEE!の方ではない)の使用したカードの内一部のOCG化はもう諦めるべきなのだろうか?
「……きっとこの辺に隠し扉の一個や二個…………」
ガタンッ
「ビンゴ……じゃな」
クティーラがいろいろ探し回っていて、スイッチを発見したようだ。
「ポチッとな」
ブゥン……ドスッ
クティーラがスイッチを押すと、どこからかクティーラの頭上に向けてナイフが飛んできた。
……これなんてポートピア?犯人はヤスなのだろうか?
「…………クティーラ、次からはちゃんと合図しろ、下段ガードするから……」
「分かったのじゃ……!良いことを思いついたのじゃ!軽く壁を叩いて、その時の音を聞けばよいのじゃ!」
「あのさぁ……それってどこぞの黒男先生がやってたやつじゃないか?」
確か、シェルターに閉じ込められたときにどこかにある線を切る時、線の場所を探るためにやった……
「…………」
トントン……ドゴッ
「壁ドンすんなや!クティーラ!もはや壁ドンの音じゃなかったけど壁ドンすんな!」
クティーラが壁ドン(ドンどころか、ドゴッ位の音だった)した場所には穴があき、奥に通路が通じていた。
「見つけたのじゃ。……先に進むぞ?」
「あ、ああ……先を進んでくれないか?クティーラ」
「仕方がないのう……これじゃから大人は駄目なのじゃ……」
「いや、じゃあお前は護衛対象を一番危険なポジションに置くのか?つまりそういうことだ」
「大丈夫じゃ……おぬしはわらわが守るのじゃ!」
「……若干いい台詞で感動的だったけど、やってることがアレだから無意味じゃないかな?」
僕を守ると言っておきながら、(おそらく一網打尽にするための囮とはいえ)危険なポジションにおくのはいかがなものか?
「…………とにかく、わらわが先行するから、おぬしは黙って付いてこればよいのじゃ!」
「……はいはい」
クティーラが(物理的に)切り開いた道を進んだ先には、ガタノゾアさんが満身創痍の状態で倒れていた……
「ガタノゾアさん!大丈夫ですか!」
流石に満身創痍のガタノゾアさんを放って置くわけにも行かず……さっき少しだけど疑ってしまったから、尚更の事だ……
「大丈夫……ですわ……膝に矢を受けてしまっただけですわ……」
「うん、大丈夫そうだね……先に行こうか、クティーラ」
「そうじゃな、その前にガタノゾア殿……敵の攻略法を教えて欲しいのじゃ」
冗句を言えるくらいには大したこと無さそうだと判断するや否や、即刻見捨てる酷い僕らだった……
「いっそ清々しい程の外道っぷりとコンビネーションですわねあなたたち」
体全体がボロボロなのに、膝に矢を受けたという一言で誤魔化そうとする邪神の事なんて、僕もクテイーラも知りません。
「とにかく……この先にいるミ=ゴソルジャー及びミ=ゴ亜種はかなり堅くなっているのですわ……わたしの触手が心なしか効きにくくなってきていますし……」
「ならば火耐性が付いておるかも知れぬから、一応チェンジすべきじゃな……カードクロス、『ライトニング・ソード』じゃ」
クティーラがいつも通りの緑の巫女服の懐から取り出したカードを杖にセットすると、杖が剣の形態になった。
もはや何でもアリだな、クティーラの杖……カードをセットして杖から剣に姿を変えるわ、一瞬で黒焦げにするような火の弾を放つわ……かとおもえば普通に人殴って気絶させるわ、なんでもありだな……
「そうじゃそうじゃ、忘れるところじゃった……アバンス、少しくすぐったいかもしれぬぞ?」
そういってクティーラは剣を杖の状態に……戻さずに、銃のような形態に変え、僕……より詳しく言うなら、僕の心臓の辺りに狙いを定めた……。……ものすごく嫌な予感がする……
対象を強化する弾を撃ち込まれるとかそんな感じだろうか?
「カードプラス、『マッドセット』じゃ」
ダンダダンッ という感じの音と共に、クテイーラは僕に対して容赦なく発砲した……3発も。
「…………くすぐったいどころか若干痛いんだが?」
あとリズム刻むな、特に2、3発目。
「これでおぬしはチートモードになったのじゃ……思う存分イライラをなくすために祭りの会場で暴れまわるがよいぞ」
「なんか力が沸いてきたような気はするんだが……こんな力使って暴れまわったら間違いなく制限かかりそうなんだが? 色々と……」
むしろ制限がかかるとしたらクティーラのその杖のほうか。マッドセットという、その名の通り狂っているとしか思えない使い方からして。
「…………アバンス、ゴー!」
「『ゴー!』じゃねぇよ、バカ!」
ミ=ゴに対する憎悪と、邪神に対する怒りで新たなる扉が開きそうになってきた……ひょっとしたら地獄の門なのかもしれないが。
「こうなったらボク1人でも先に進んで戦ってやるよ! デュエル!」
久々にキレちまったよ……奥、曲がり角周辺にミ=ゴ発見……全滅させるか……
そう決断し、強化された速さで一瞬で距離を詰め、がら空きの胴体に向けてラッシュを決めた……
「オレオレオレオレ! 雑魚は潰れちゃいな!」
「*Д@〆!?」
「£*Д♀!?」
「……アバンスも、色々と溜まっておったのかのう……さて、わらわもひと狩り始めるとするかのう……」
そう言ってアバンスの様子を見守っていたクテイーラは、アバンスによるラッシュエリアをよけて進撃してきたミ=ゴに問答無用で一閃した。
「♀♂*〆!」
「またつまらぬものを斬ってしまったのじゃ……」
「はぁ……はぁ……」
まるで自分が加速していたかのような戦い……というか一方的な無双……を終え、肩で息をしていた……というかせざるを得なかった……
「3分間で13体……まあまあと言った所じゃな」
「多分……もうそろそろいるんじゃないか? ……蟹江とかいう奴が」
「ハーッハハハ! よくぞここまでたどり着いた! それだけは誉めてやろう……」
噂をすればなんとやら、ご丁寧にあちらから出向いてきた。ご丁寧にマントまで付けて、どこの王様気取りだろうか?
「だが、貴様らには私の切り札、ミ=ゴ覇種は倒せまい……今ならばその元少年を差し出すだけで貴様の命だけは助けてやろう……さあ、どうする?」
「絶対に嫌じゃな、眷属を奪われようというのに何もせぬわけにはいかぬじゃろう?」
クテイーラ……お前……
僕の存在価値は眷属以外にもあるだろ……?
「だが、戦力は貴様1人……所詮覇種の前にひれ伏すしか道は」
「それはどうかな?」
「誰だ!」
「ボクだ!」
「コントすんなニャルラトホテプ……」
遅ばせながら、ニャルラトホテプが声だけ先行で、追いついてきた……1人で来たって事は、おそらく自力で降りたのだろう。
「すまないね、ついついクセでやってしまったよ……で、そいつが今回の黒幕の……シザースだっけ?」
「蟹江だ!」
「まあいいや、ボクはニャルラトホテプ……さあ蟹男、君のシン・キーロウを数えるんだよ」
「お前は今までに食べたパンの枚数を覚えているのか?」
「……………………こいつからはアレ以下のにおいがプンプンするよォ!」
「おい」
「こいつは生まれついての極悪人じゃ! 手早く叩きのめして牢屋にぶち込んでしまうのじゃ」
「言い返せないからってネタに走るなニャルラトホテプ……あとクテイーラは付け足すな」
というか、嘘でも言いから13枚とかそう言う風に返して『えっ?そんな事も覚えてないの?』みたいな視線を返せよ、万物を嘲笑うニャルラトホテプなら……
あとこの蟹……迷いもなく、本心からパンの枚数発言をしたように感じた……そういった意味では、ニャルラトホテプ達の生まれついての極悪人発言も案外的外れではないのかもしれない。こいつがガチクズという考えも……どうせ出世の為には手段を選ばないタイプなのだろう。
「いけ、ミ=ゴ覇種!奴らをカオスにおとしいれるのだ!」
蟹が右腕を振り上げると同時に、廊下の奥の曲がり角からミ=ゴ覇種が現れたのだが……ただ赤くなったミ=ゴにしか見えない。どう見ても色が変わっただけにしか見えない。
「さらばだ!」
「…………逃げやがったな……」
「%ω%*〆!*〆!*〆!*〆!*〆!*〆Д!」
「…………ワケ分からんから殴るか」
とりあえず殴れば全て解決するだろう……そう思っていたが、現実は違った……
固い。流石は覇種、流石、堅いな
「下がっておれ! アバンス! ……超銀河魔法インフェルノ!」
「んな大技ぶっ放すな!」
僕が殴りかかった直後に撃つな! ……まあ、横に大きくよけて、結果的にはギリギリのところで避け切れたのだが。
「ミ=ゴ覇種を焼き付くせなのじゃ!」
「……やったかい?」
「それフラグ」
とはいえ……後ろに下がっても焼かれそうな火の弾に当たってしまえば、ひとたまりも
「なに……!」
「…………♀@〆!」
「効いていない……じゃと……?」
「これは仮説だけど、火に耐性があるんじゃないかな? 他のとは違って……」
「ここはニャルラトホテプに任せるのじゃ! わらわたちは黒幕を……」
「その必要はありませんわ……」
非道にも、ニャルラトホテプをリリースして、強行突破しようとしていた僕らの後ろから、声が聞こえてきた……というかぶっちゃけるとガタノゾアさんの声が聞こえてきた。
「@Д……〆」
直後、ミ=ゴはミうゴきが……身動きが取れない状態になっていた。
「……触手か」
「もうわたしの身体はボロボロなので、わたしを放って行きなさい……ですわ」
「ガタノゾアさん……あなたの死は無駄にはしない!」
「わたしはまだ死んでいませんわ!」
まあ、足引きずりながら行っても、足手まといどころか、増援(壁)にすらなれないからな……
「……さあ、行こうじゃないか!」
「ミ=ゴ覇種に勝ったようだな……だが、奴は所詮捨て駒! 我が切り札を真に覚醒させるための時間稼ぎにしかすぎんのだ! ハーッハハハ!」
「お前、ミ=ゴ覇種の事なんて言ったか覚えるか?」
「所詮覇種も切札の前座にしか過ぎぬのだ! 現れよ大邪神! 暗黒の支配者ガタノゾーア!」
ガタノゾーア……かなり最近クティーラとの会話に出てきたはず……確か、ルルイエから逃げ出したクトゥルーさんのペットだったか?
「……なあクティーラ…………ガタノゾーアってどれぐらいの大きさなんだ?」
「…………さぁ? わらわは知らんのじゃ」
「とりあえず、殴って倒せばいいんじゃないかい?」
「闇よりいでし暗黒の支配者よ、世界を闇に包み込め! ハーッハハハハハ!」
蟹の後ろで影のような何かが蠢く……蟹の言からしておそらくガタノゾーア……
「怖い……」
「アバンス!今更何ゆえにおじけづいて動かぬのじゃ!奴を倒さねば、おぬしは……」
「それは分かってるんだよ! でも……体が動かない……動かせないんだよ!」
影が蠢いた直後は恐怖で震えていたのだが、奴が黒い霧を少量放った途端、動かせなくなったのだ……まるで手足が凍ったかのように……
「フハハハ! 怖かろう! ガタノゾーアを操っている俺さえも、恐怖を感じる程だからな!」
「アバンス! デメリットを重複させれば、気にならなくなるのじゃ! ……魂と記憶の盾を使うのじゃ! 効果は……覚えておるな?」
「いや……しゃべることしか出来ないのに……どうやって」
「こうやってじゃ。カードプラス、《魂と記憶の盾》」
……やっぱり心臓を撃ち抜かれた。
「非常に身体に染みるな……これでも動けないけど」
というか、一体どういうことだ? 多分、ガタノゾーアの放った黒い霧が原因なのだが、ならば何故蟹は人間なのに、動いていられるのか?
「ちょこまかちょこまか動き回るか……ガタノゾーア! 奴らの全てを闇に飲み込んでしまえ!」
「ウォォォォォォォ!」
反射的に耳を塞いでしまいたくなるような、不快感を催す声……不快感どころか頭痛も催してきた。
「ゆけガタノゾーア! ブラックミストだ!」
「そのまんまな名前だな!」
とはいえ、ガタノゾーアの大技がきそうな以上、避けられない僕が若干足手まといに……
「そうは……させない……」
ヨグソトースが丁度いいタイミングで来てくれた……なぜか父さんからのプレゼントの、鏡を持って
「ガタノゾーア……これが……光」
ヨグソトースが鏡を頭上に掲げると、鏡から青白い、氷の色の光が溢れ出し、ガタノゾーアを照らした。
「照らすのをやめろ!」
「ウォォォォォォォ……」
「やめろ……! 照らすな!」
見苦しい……自業自得とはいえ……いや、自業自得だからこそ見苦しいのか。
「ウォォ……ォ……」
鏡から溢れ出した光を浴びると、ガタノゾーアは段々と弱っていった。
「……封印」
ヨグソトースのそれが合図だったのか、ガタノゾーアは鏡の中に吸い込まれていった。
「これにて……一件落着?」
「そうなのか?」
「よいではないかアバンス、下手すればおぬしは死んでおったのじゃぞ?」
「まあ……そういえば、蟹はどこにいったんだ?」
ふと、真犯人の事を思い出し、ヨグソトースに問う。鏡の中に吸い込まれていったように見えたのだが……
「……ワタシの友達に手を出すという……許されざる事をやったから……鏡の中の世界にガタノゾーアと一緒に封印させてもらった……」
「あ、ああ……一応生きてるのか?」
「残念ながら生きてる……とりあえずガタノゾーアはルルイエにクール便で送るとして……蟹はなまもの在中というシールを貼って……鏡ごとノーデンスに送りつける……」
敵対してる可能性が一部で囁かれてるからってさりげなくノーデンスに送るな……ノーデンスでもいらないぞ? そんなワケわかんない人間は。
「……そういえば、何で僕が狙われたんだ?」
「そんなもの、矮小なる蟹のみぞ知るじゃ」
「ミ=ゴに聞こうにも、どこかに逃げ去ったし……」
「とりあえず……ガタノゾア達と一緒に……帰ろう?」
「……まあ、いつミ=ゴが引き返してくるかわかんないし……そうした方が良いかな?」
かくして、ミ=ゴと蟹なんとかの野望は潰えたのだった。
まあ、動機が何だったのかなんてこのときの僕には知るよしもなかったわけだが……




