その11
ヨグソトースの謎特訓による怪我は(クティーラの謎の特技による魔法?で)治ったものの、あの件でイマイチ釈然としないことが多かった。
例えば、アトラク=ナクアの『邪神受けする』発言、血脈がどうとか言っていたがどういうことだったのだろうか?
「…………………………」(ジーッ)
「ニャルラトホテプ……お前いつからいた?」
「ずっといたよ!2、3時間前からずっといたよ!君が昨日帰ってきてからかなり部屋に引きこもっているのが気になって見に来たのになんだい!その言い草は!」
「ああ……ちょっと……考え事を……」
「ああ……とうとう2、3時間前には寝ていたことに関するツッコミを忘れるほどに衰弱……」
「そうか……じゃあツッコミがわりに一発……」
ガッ
「……本当に大丈夫かい?君の拳といい瞳といい、心がここにあらずっていう感じだよ?」
「ああ、そうか……」
正直な所、ニャルラトホテプの言う通り、昨日のアレを考えるので忙しかったりする。……顔はともかく、血がどうのこうのという話だが、一体どういうことなのだろうか?
「…………はぁ……」
「気分転換に……出かけたらどうだい?体を動かせば、楽になるかもしれないし」
「…………そう……だな……」
ニャルラトホテプにしては珍しくマトモな案のような気が……
「よし!そうと決まれば、準備はできてるから出発しようじゃないか!」
「まて!一体どこに」
「プールにさ……もちろん、クトゥグァを除いた邪神関係者全員呼んでね!」
「邪神たくさんで惨劇の予感がするんだが……僕の気のせいだよな?というか気のせいであってほしいんだが……あとクトゥグァさんも呼べよ」
「プールが温水プールになるけど……いいのかい?」
「マトモな邪神の比率少しでも増やさないとやっていけねぇよ……あと温水プールのほうがいいだろ、風邪ひいたら嫌だし」
「チッ……じゃあクトゥグァも含んだ全員で行こうか……義父さんと義母さんは……資料をまとめる作業で忙しそうだったから、そっとしておくかい?」
「まあ……書き置きは残しておくか……で、いつのまにお前は僕らの家族になったんだ?」
ニャルラトホテプの発言が気になった時にはハッタリかければ引っかかると見事なまでに引っかかったりする。
「…………いつもの調子に戻ってきたようだね……」
今回みたいに
「プールキタァァァァァァ!」
「政、お前はどこのヒーローのつもりだよ」
「プール……きたー」
「ヨグソトース、お前はテンションもう少しテンション上げても良いからな?」
「そういえばあーちゃん……水着は……どうするの?私たちは持ってきましたけど……」
「……一応あることにはあるんだけどな……ニャルラトホテプに用意させた僕が悪いのかもしれないけどさ……」
完全に自業自得かもしれないけどさ、一言だけ言わせてもらいたい
「………………布が……少なめだった」
「わらわに任せてほしいと言ったときにおとなしく任せておけば良かったのじゃ……」
「いや、極端に布が少なくて水着であっても隠す目的はないような領域じゃないから……大丈夫じゃないかな?」
「ニャルラトホテプ……ヤハリソウイウコトカヨ……」
「ちょっと……アツト君?カタコトでオンドゥルになっちゃってるよ?……待って!明らかに処刑する気満々……っていつのまにスタンド使いになったんだ――い!?」
絶対に許さない……ビキニだったのはまだいいとしても、布地がふつうより少なそうなのを買ってきたのは……絶対に許さねぇ!
『なるほど……これが責任転嫁というものか……』
「まあ、ニャルラトホテプの思考を考えなかったアツト君のせいと言われればそこまでなんだけどね……」
「…………どうしようか……これ……」
みんなから離れたところで(というか1人だけ男でハーレム状態の政に至っては、男更衣室と女更衣室の壁がある)1人悩む僕……
選択肢は、おとなしくニャルラトホテプが用意したのを着る。これは恥ずかしいから墓地送り、ニャルラトホテプが気絶している隙に誰かに頼んでニャルラトホテプのを借りてきてもらって使う……なんかスク水がどうとか言っていたので、嫌な予感がするから除外
「これを……着るしかないか」
『妥協せずにそれを着るのか?』
「おい……お前なぁ……僕、着替えるんだぞ?」
『そうだな』
「僕……今女の子になってるんだよ?」
『何を今更確認する必要があったのだ?』
「だからね……」
分からず屋のスタンド?に言ってやる
「お前は女になってる僕の着替えを見に来たのか!?」
『何を言っているんだ、君は?わたしは一応これでも生物学的には女だ……』
「…………ごめん」
『分かりづらかったか……ならば』
といって、イストラルは……変身した……というより、姿を少し変えた。髪が長くなったし、服装も水着?……水着じゃないな、うん……貝殻は水着に入らないよね。下はマトモなのに……
『これならばどうだ?』
「ああ……女の子だね……無表情なのは相変わらずだけど」
『…………一つ聞くが、君は何故皆から離れたところで1人でいるのだ?』
「いや……ね…………今はこんな状態だけど」
『元々は男故に、恥ずかしいから……か?』
「じゃあ聞かなくてもよかったんじゃ……」
『…………それもそうだな……ところで、着替えないのか?』
誰のせいで着替えるのが遅くなったのか……まあ、文句は言えないけど。こっちから話しかけてたし
「……じゃあちょっと向こう向いてて……着替えるから」
『……そこの窓の付近……謎の気配を感じる』
「!?……確か鞄のこの辺に入れてあったよな……たったらたったったー、鉄板~!」
『君は何故プールに遊びに来たのにカードを持ってきているのだ?』
「たまたま入ってただけだ……拾った鉄板が」
ヨグソトースから受け取ったカード(公式がカードと言い張っているから、紙じゃなくて鉄板だけどカードなのだろう。紙じゃなくて鉄板だけど)をたまたま持ってきていてよかった。僕にとってこの位の大きさが投擲するのに丁度いいのだ。
「ブーストさん、君に決めた!」
ブゥン
『なるほど、君のような人もデュエリストに含まれるのか……』
誰がデュエリストだ、僕は間違っても物事をデュエルで解決しようとはしない。
パキンッ
「アイエェー!」
窓の辺りにいた何者かに当たったようだ……意味の分からない悲鳴だったが、何者だったのだろうか?
『なるほど……デュエリストにとって投げて返ってくるカードコントロールは必須なのだな』
「たまたま戻ってきただけだ……そういえば、あと当たったときの音……」
『ああ、悲鳴からして誰かに当たったのは確かだが……音が奇妙だ……』
カンカンッ
「軽くたたいた音がこれで、全力で壁に投げても……」
ガンッ
「こんな音で済むはずなのに……」
「ボクの復活だよ!さあ、一緒に」
「でもって全力で人に当てても」
ゴチッ
「イワァクッ!」
「こんな音しかしないし……」
『ニャルラトホテプ……ニャルラトホテプは犠牲になったのだ……実験の』
「ボクと……一緒に……飛び……込み……ぱたっ」
「あ、ちょっと外壁ぬけして見てきてくれないか?」
『…………君は酷いな』
「いやいや、そこで倒れてるニャルラトホテプ程ではないけどな」
このニャルラトホテプ≒原典(クトゥルー神話)で人類に核の技術を教えたニャルラトホテプだと思うし。
「とにかく、ちょっと外の様子見てきて欲しいんだが」
『……分かった』
幽霊さんが外に出て行ったところで
「さて、着替えるか……仕方ないけどこれに」
男らしく、一直線で突っ切るか……今違うけど
「……………………………………」
『どうしたのだ?顔を真っ赤にして』
「…………予想以上に恥ずかしいよコンチクショー……」
ニャルラトホテプめ……ここまで恥ずかしい事を分かっていながら買ってきたな……
『似合っている……と言うべきか……このような姿の者に対しては』
「お世辞か何か知らないけど、正直嬉しくない……」
『いや、お世辞ではなく本心から……』
「とっ……とにかく、外はどうだった?」
『恐らくだが……結論から言えば、誰か……もしくは、何かが『居た』』
「居たって事はつまり」
『さっきまでは何者かに見られていた可能性が高い……もっとも、恐らくカードを投げた時に去っていったがな…………さっきの音……わたしの推理が正しければ……』
「……おーい、イースさーん?なんで現場にまた戻っていったんですか~?」
『……これは…………やはり甲殻類の殻の破片…………たまたまここで蟹を食べながら覗いていた…………という線は除外して、何のために覗いていたのだ……誰かを狙っているのか?その場合、あの窓から見えていたのは……!?だがどういうことだ……動機が分からない……奴らと彼を繋ぐ線……何かがあるはずだ……何か………………』
現場に探し物をしにいったイストラルさんは置いといて、とりあえず着替え終わったから外に出て……あがって休憩中のバイアクヘーさんとエンカウントした。
普通すぎてコメントし辛い水着を着てるけど、ノーコメントにしておこうか。それと、僕を見た瞬間放心状態になっちゃってるけど……大丈夫かな?
「…………ほぇ~」
「……嫌な予感がしたから忠告しとくけど、結婚してくださいとか禁止な、バイアクヘーさん」
「ハグさせてください! 一生離しません!」
「余計に酷くなってないか!?」
まあ、前半までは予想の範疇だったけど……一生離さないとか予想出来なかったよ!
「あっ……あーちゃん、私と超融合しましょう」
「なんで超融合を選んだんだよ、そこで」
「ではアクセルシンクロ」
「そもそもシンクロすらしてねぇよ」
「私とあなたでオーバーレイネットワークを構築」
「絶対にしねぇよ」
「では……」
「ネタがつきたのならいいからな?」
多分これ以上のボケはこの方向では多分無いよな……ネタ切れだし
「では、進化Vしましょう!」
「そっちに方向転換した!?」
「まあとりあえず……カモン!」
「なにそのネズミ取り!凄い笑顔で手を広げてるけど行かないよ!」
カモンって言われて行ったら間違いなく捕食(確実に、ぱっくりもぐもぐの方ではない……念のため)される。バイアクヘーさんだし
「ノリ悪いですね……普通そこは男としてパクルパンダイブしている所でしょうに」
「残念ながら今は女なんだな、それが」
「ぐぬぬ……あ、クティーラさんがナンパされそうですよ?」
「大丈夫だろ、クティーラだし……大丈夫じゃないのはナンパした側だし……肉体的にも社会的にも……あ、杖で殴った……エクスキュベーターに乗るのを拒否したばかりに殴られたパイロットのように口答えして……また殴られた、でもって更に殴る……一番下っ端に対するリュウセイみたいに殴りまくりだな…………ちょっと止めてくる」
「あ、カンニングペーパーどうぞ」
「何のためのカンペだよ、一体……」
「鬼丸「覇」、追加攻げ」
「やめろクティーラ!お前は……お前はそんな奴じゃなかっ……あ、カンペ忘れてた……『もうやめてクティーラ……羽賀(仮)のライフは0……』」
「……………………お主は何を言っておるのじゃ?」
「『もう勝負は』…………バイアクヘーさんにカンペ渡されたから読み上げただけだが?」
「何故おぬしはいきなり狂戦士の魂の回の台詞を読み上げたかと思ったのじゃ」
「なんか見覚えのある文章だなと思ったらやっぱりあの回のかよ……」
関係ないが、あのシーンから遊戯王に入った人は多いんじゃないかな?次点は恐らくエネコンだが
「今はバーサーカーソウルよりもバーサー蟹ソウルじゃな、主人公的に」
「今の主人公は海老……まあいっか……」
語呂悪いし……バーサー蟹ソウルと比べるとどうしても語呂悪いし仕方がないな。
「それはそうと、母上からの伝言じゃが……」
「ああ、クトゥルーさんから?」
「ガタノゾーアが脱走したらしいのじゃ」
ガタノゾーア……分類としては旧支配者に分類される邪神、姿の描写はかなり少なかったはず……まあ、そんなことはおいといて
「ムー大陸で崇拝されてた…………ところで、どこから脱走したんだ?」
「超古代都市ルルイエからじゃ」
なんだよ、超古代都市ルルイエって……自分の実家だからってちょっと格好よく言ってみたんじゃないのか? そもそも
「確かムー大陸に封印されてたと思うんだが……僕の記憶違いか?」
「恐らく、母上が面白がってペットとして持ち帰ったガタノゾーアが脱走したのじゃ」
「迷惑過ぎんだろうが! なんでペットとしてガタノゾーアを持ち帰った!」
「あるいは、そもそも脚本家がルルイエとムー大陸を間違えたかのいずれかじゃ」
「クトゥルーさんの仕業だな、分かった」
脚本家ってDA☆RE☆DA☆YO? あとムー大陸とルルイエを同じと解釈するにはかなり大雑把に解釈しないといけなかったと思うんだが……
「母上がガタノゾーアの居場所を探知した結果、この辺に似たような反応があったとの報告じゃ」
「……この辺? 周囲大体距離どれくらい?」
あと似たようなって何だよ、似たようなって
「1キロも無いようじゃ」
「……敷地内か、ちょっと探してみる」
「石化されないように気を付けるのじゃぞ~」
「そういえばそんな厄介な効果持ってたな!」
重大な事を忘れていた。ガタノゾーアの姿に関する描写が少ないのは、H.P.ラヴクラフト御大が実質的に他人の名義で書いた短編一本しか出ていないからだけではなく、姿を見たら生きたまま石にされてしまうという設定の邪神だからだ。一応直視しても石にならない方法があることにはあるのだが……現状実行不可であるため、もうほとんど詰んでいるような状況……諦めるか、うんそうした方が良いよ。
「頼んだのじゃ! わらわはナンパしてくるストライクゾーンが低めの輩の相手で忙しいのじゃ!」
「…………諦めたい……」
探索開始から10分経過……未だにそれらしき影見つからず、ナンパされた数3回、いずれもどこからともなく飛んできた杖によって撃墜……
「なんで動く度にナンパされるかな……次ナンパされたら相手の心も体もドボドボもといボロボロに」
「俺と付き合っ」
「嫌です」
ナンパ者Aがプールに投げられた……
「ゲフゥッ」
「一緒に」
「1人で行きなさい」
足技でプールに落とされ……
「ろーりえッ!」
「俺と一緒にや」
「お断りします」
カウンター気味にプールに放り込まれ……
「ラスストっ!」
「親方さ」
「うるさい」
カウンター気味に腹パンされ……
「マッスグッ!」
まさに男にとっては地獄絵図としか言いようのない光景だった……まあ、さっきまでナンパされていた身としてはスカッとする光景だったが
……なんか女性が凄いこっちの方見てるけどそっとしておこう。こっちの方向いて歩き出したから逃げよう。……厄介事の予感がするし
「待ちなさい、何故逃げるんです?」
「………………………………」
無視……とりあえず嫌な予感がするから無視して逃げよう……多分逃げきれないけど
「あなたを見たとき、心に決めましたわ……あなたと……契約したいと……って」
「……………………………………」
「逃げるのなら容赦はしません…………メデューサ・テンタクル!」
無視し続けたからと言って触手を伸ばしてきますか?まあ、触手と言ったけど実際は多分髪ですけど。
「……………………動けない?」
触手に触れられた瞬間動けなくなったんですけど……なにこれ?
「さて……話を聞かせてもらおうかしら…………」
女性が舌舐めずりをすつつ、動けなくなったボクを抱え、野獣の眼光としか言いようのない視線でで睨み付けていた……誰か……助けて……
「金の針~、ブスリ」
「にゃぁぁっ!?」
ガタノゾーア! てめぇ! ……というかこいつの目的は何だ?
……周りは薄暗くて、恐らくプールから少し離れた林(森?)と言うことしか分からない……こんな場所に連れてきた理由は?
「さて、あなたの主の……クトゥルー? には気付かれないように気を使って連れてきたつもりですけど……いつあの子のお迎えが来てもいいように説明させていただこうかしら……」
「あれのどこが気を使ってだ……白昼堂々と誘拐劇を演出しておいてどこが気を使ってだ!」
「最近の若い子がキレやすいのは女の子も男の子も同じですね、分からないわ」
「最近の若い子って……お前」
「何かおっしゃりまして?」
「いえ、なにも」
「そう……じゃあいいですわ………………………………ん? そこにいるのは……量産型のミ=ゴ……もとい、ゴ=ミが2体……いけるわね」
「え? ミ=ゴ?」
ミ=ゴって確か…………あれ? ひょっとして、さっきの事件の犯人は
「メデューサ・テンタクル!」
少し離れた場所の木にガタノゾーアさんが触手を伸ばすと、ミ=ゴらしき物が落ちてきた。
「終わりよ……テンタクル・ブレイク!」
落ちてきたところで追撃するように、髪の毛を伸ばして攻撃し……ミ=ゴを破壊した。…………量産型らしいし、破壊で大丈夫のハズ
「じゃあ改めて、自己紹介にしましょうか……私はガタノゾアですわ」
「ガタノゾーアじゃなくてガタノゾア?」
「ガタノゾアですわ、ガタノゾーアではなくて」
ガタノゾーアじゃなくてガタノゾアらしい……
「…………どう違うんだ?一体」
「タダの旧支配者と暗黒の支配者ぐらい違いますわ」
「なるほど……分かるか!」
……まあ、本人曰わくガタノゾーアでは無いらしい。じゃあ、ガタノゾーアはどこに?
「…………どこに行ったのじゃ、アバンスは?…………よし、探してみるとするかのう」
見える範囲におったら苦労しなかったのに……あやつめ、いったいどこに行ったのじゃ?
「え?アツトがどこに行ったか知らないかって?……イストラルが一緒に居たと思うんだが……というか、イストラルどこに行ったか知らないか?」
持っている情報は無いに等しく、逆にわらわが聞かれる始末…………
「正直に言わせてもらうのじゃが……おぬし、アクア・マスターよりも役に立っておらぬのう」
アクア・マスター……三行で言うならば
良いイラストじゃ
感動的なFT(己の弱さが敗北させるのだよ!)じゃな
じゃがゴミスペックじゃ。
「えっ…………酷くないか?」
「おぬし自身の弱さが、敗北させるのじゃよ!」
「…………流れるプールで流されてくる………………」
そう、言い残して去っていった…………じゃがわらわは謝らないのじゃ。
「え?アバンスさんですか?」
流石にクトゥグァ殿は、さっきとは違ってまともな証言をしてくれるのじゃろうかのう?
「さっき…………遠くだったので、イマイチ分かりませんでしたが、女の人と話をしていましたよ。気が付いたらその人もアバンスさんもいなくなっていましたけど……」
証言をまとめるとこうじゃ。さっき謎の女性とアバンスが話しているのをクトゥグァ殿は見たが、気が付いたら2人ともいなくなっていた……
わらわとしては、アバンスと話をしていた謎の女が犯人だと思うのじゃが……なにせ証拠や状況に関する情報がかなり不十分じゃ。ゆえに、まだ断定するような時期には思えぬが、仮に犯人はその女と考えておくべきじゃな……
『……クティーラか』
「どこをほっつき歩いておったのじゃ?アバンスの護衛をほったらかしにして?」
『……率直に言わせてもらうのだが……彼は狙われている』
「なんじゃと?何にじゃ!」
『これは推測にしかすぎないのだが……おそらく、ミ=ゴだ』
「ミ=ゴ?…………ちょっと待っておれ……」
わらわには分からないことでも、母上ならば何か知っておってもおかしくないはずじゃ……
『クティーラ?ガタノゾーアは見つかったの?』
「いや違うのじゃ。ひとつ、聞きたいことがあるのじゃが……ミ=ゴとは一体何なのじゃ?おそらく、アバンスがミ=ゴに狙われておるのじゃが……」
『ミ=ゴね……確か、地球でいうジュラ期に地球の鉱物を狙ってきた生物だったかしら……分類としては菌類だけど、見た目は甲殻類……要は、蟹みたいなものね。……そんなのに狙われるって、アツトさん、一体何をやらかしたの?確か、狙われる条件はミ=ゴが凄く気に入った人間か、逆に凄く嫌っている人間かのどちらかだから……』
……アトラク=ナチャが言っていた、『アバンスの血脈』の話に何か関係があるのかもしれぬ……
「ひとつ、聞きたいのじゃが……アトラク=ナチャは、アバンスの事を『邪神受けするステータス』だとか言っておったのじゃが、それと今回の件は……関係があるのじゃろうか……」
『………………………………そうかも知れないわね……だとしても、なんでミ=ゴが狙っているのかしら……』
「ほぇ?」
『仮に邪神受けするステータスにしても、何でミ=ゴが狙う必要があるのかしら……』
「そういえばそうじゃのう……アバンスを手に入れたところで、ミ=ゴにはなんのメリットも無いのう……」
言われてみれば、リスクしかないのう。ハイリスクローリターンどころか、ハイリスクノーリターンの極みじゃな。
『しかも、周りにはニャルラトホテプ、クトゥグァ、そしてあなたとハスターの眷属の……バイアクヘーでしたっけ、の4属性全部の邪神が揃っていて』
「母上、わらわ達はカードゲームのクリーチャーでは無いのじゃぞ……」
『アリ1匹入り込めないような、完璧な防御よ。なのに、何故狙うのかしら……』
……関係ないのじゃが、『アリ1匹入り込めない防御』という表現は若干フラグにしか思えぬ。
『より詳しく言うなら、闇にのまれたり、焼き蟹にされたり、精神壊されたり、かまいたちで蟹の刺身にされたりするようなリスクを犯してまで欲しがる理由は何かしら……ミ=ゴが直接的に得する理由はないはずよ……直接的には』
直接的にミ=ゴが得するような事は無い……つまり母上が言いたいことは
「……間接的に得する理由があると言うのことじゃな」
『これはあくまでも推測にすぎないのだけど……言った方が良いかしら?』
「推測に過ぎない事でも良いのじゃ……教えてくれぬか?母上」
『ミ=ゴを影で操っている人……邪神の可能性がかなり高いけどね……がいて、その人物が得をする……そういう事も考えられるのよ……そして、事件の発生したタイミングからして、一番可能性が高いのは……』
「ガタノゾーア……じゃな」
『そうよ……流石は私の娘、鋭いから説明しなくて助かるわ。さっき連絡したように、その辺にガタノゾーアだかガタノゾアだかの反応があったから、気を付けてちょうだいね』
……一文字違うだけでかなり違うと思うのじゃが……細かい違いで済むのじゃろうか?
「……そんなにアバウトでよいのか?正直、わらわは心配なのじゃが……」
『大丈夫よ、能力的には変わりないから。大体、地球の物語に良く出てくるヴァンパイアと、クトゥルー神話のスターヴァンパイアぐらいにしか違わないから』
「母上、その2種族はドラゴン・ゾンビとブラック・コマンド・ドラゴンぐらいに違うのじゃ……」
『まあそれはいいとして……』
「良くないのじゃ!」
『ああ、ガタノゾーアとガタノゾアの違いを教えて欲しいの?ガタノゾーアは……オウム貝を3つ並べたような姿の怪獣――貝だからじゃないからね――で、ガタノゾアは、見た目は人だけど、本性は……ギリシャ神話のメデューサが近かったかしら……まあ、そんな感じよ』
「分かるような分からぬような……」
『じゃあ、ガタノゾーア探し、頑張ってね!』
「ま……待って欲しいのじゃ!まだ話は…………またいつも通りじゃ……」
まあ、本題は済んでおったし、良かったのじゃ……酷いときは本題に入りすらできずに終わるからのう……
『……で、どうだったのだ?』
「仮にアバンスが狙われる理由が本人にあるとして考えたのじゃが、何者か……第1候補としてはガタノゾーアがあがっておるのじゃ……が、ミ=ゴを操っている可能性が高いのじゃ。そうでもせねばリスクが高いのにアバンスを狙う必要性が無いからのう……」
『なるほど、ならば急いで彼を探さ……』
「その必要はありませんわ……」
その言葉とともに、アバンスを抱えた女が飛んできた。
「……おぬし、何者じゃ!」
「始めまして、クティーラさん……わたしはガタノゾアと申します。……決してガタノゾーアではありませんわ」
『ガタノゾーアではなくガタノゾアか……本質的には似たものと聞いたのだが……』
「まあ、特技は同じ様なものですからね……色々なものを石に出来ますわ……その気に」
「が……ガタノゾア……い……いつまで僕を抱えてるつもりだ……」
「……すいません、うっかりしていましたわ」
「で、ミ=ゴが僕を狙っているって、本当なのか?」
「ええ、そうでないと量産型のミ=ゴが2体も、しかも殺気をむき出しで現れるようなことなんてありえないのですわ」
『更衣室でも狙われていたとなると……考えるまでもないだろう』
「まあ……確かに……」
「じゃが、理由が分からないのじゃ…………ミ=ゴの連中がアバンス、おぬしを狙っている理由が……いや、ミ=ゴを操っておる者の目的が……」
確かに分からないな……そもそもミ=ゴの上に何者かがいるなんて事は聞いてないし。ミ=ゴが僕を狙っている理由も分からないけど。
「とりあえず……殴り込みに行くか、売られた喧嘩は大人買いだ」
「おぬし……すっかりこちら側に染まってしまったのう…………まあ、『郷に入れば郷にしたがえ』じゃ……そうなるというのもありじゃ」
「…………ひょっとして……戦力は実質2人だけ……ですの?」
「いや、ヨグソトースとかニャルラトホテプとかバイアクヘーさんとかクトゥグァさんも一緒だから……多分」




