義妹とぷちデート
じゅわじゅわと肉の焼ける音が響く。
焼き肉店『牛郭』のテーブルには空きがあり、幸い個室を利用できた。
おかげで、のんびりと歩花と焼肉タイム。
網の上に肉を並べ、程よい焼き加減でお皿にとっていく。
「焼肉っていいねぇ、お兄ちゃん」
「ああ。焼くのも楽しいし、なにより美味しい」
秘伝のたれも最高なんだよなぁ。
醤油と塩だれの二種類が楽しめるし、どっちも甲乙つけがたい。
それに、カルビやハラミ、ロースが美味すぎる。
豚や鳥肉も追加注文していく。
更に。
カルビ専用ごはんも焼肉に合う。
パリパリの海苔がふんだんで幸せ。
そして何よりも歩花が幸せそうで、俺も幸せ。
「デザートも食べ放題なんだよね」
「らしいな、歩花」
牛郭は最近、デザートを食べ放題にしたらしい。攻めてるなぁ。
でも、そんな食べられるかどうか。
結構お腹がいっぱいになりつつある。
が、せっかくの機会だからな。
食べられるだけ食べておこう。
◆
「――ふぅ。お腹いっぱい」
お店を去り、俺たちは夜の街中を歩く。
さすがに食いすぎて消化したいので、散歩することにした。
「いっぱい食べたね、お兄ちゃん」
「食べすぎたよ。歩花も結構食ったな」
「うん。いつもよりはたくさん!」
珍しく歩花はデザートまで食べていた。
いつも小食なのに驚きだ。
けど、満足そうだし、なにより幸せそうなのでよかった。
賑やかな夜の喧噪を抜けていく。
この先の目的地は、歩花に委ねられている。
そう、今の俺に決定権はない――というか、任せている。歩花のしたいことが俺のしたいことなのだ。
そうして到着した、とあるお店。
そこは全国チェーン店の有名なカラオケ店だった。
「ねえ、お兄ちゃん。カラオケ、いいよね?」
「もちろんだよ。俺も歌いたいと思っていたところ」
というか、歩花はすでにお店を予約していたようだ。
最近は多くなってきた『無人型のカラオケ店』。
清算や清掃に至るまで100%セルフという。
「まずはこの端末で部屋番号を……」
「ふむ」
「三階みたい。行こっ」
歩花は楽しそうに俺の左腕に絡む。
豊満で柔らかいモノに包まれ、俺はこれだけで幸福。
エレベーターで三階へ向かい、まずはドリンクバーへ。当然だが、自分でグラスを取り、自分で好きな飲みものを注ぐ。
これに関しては有人店と一緒だけど。
指定された部屋へ向かう。
部屋は個室だが、扉にはプライバシーを配慮して(?)外から見えないよう“すりガラス”っぽくなっていた。
というか、そういうシールか……?
ともかく――。
部屋はちょっと古臭いし、カラオケの機器も妙に旧型。なんだろう、この平成初期感っ。これはこれで妙に懐かしいような。
そや、俺は昔に親父に連れて来られたことがあったな。
「……やれやれ」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと幼少期を思い出してな」
「お兄ちゃんの子供の頃か~」
「ああ。親父が強引にな。ちなみに、昔のカラオケ店はこんな便利なタッチパネル端末はなくて、電話帳みたいな分厚い本で選曲していたんだぞ」
「そうなの!?」
ゲームの攻略本以上に分厚いヤツな。
とはいえ、俺はもう断片的にしか覚えていないけど。
アレは確か、四歳とか五歳とか……だったか。
そんな頃の記憶がある俺も凄いな。
それもそのはずだ。
親父がアニソンを無限ループしていたから、印象深かった。
おかげで俺の持ち歌も、親父由来が多い。
過去話を興味深そうに聞きつつも、歩花は端末で曲を検索。すぐに送信していた。
「おぉ、新曲か」
「うん。最近のアニソンだけどねっ」
そうそう、歩花も俺の(親父も少し)影響でアニソンばかり聴いているんだよな。
しかも、これは最近、二期が始まったばかりの人気作。
これを歩花の歌声で聞けるとは……!
神曲が流れはじめていく。
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