22話 アドーレ・ジョルケッラ(アデーレ・ジオルケラー)という女 ジオ父
我が家は、代々騎士の家系である。
聖地奪回の戦いである「聖壁十字軍」にならって開始された、異教徒折伏の戦い、北東方面への十字軍である「極星十字軍」に参加したことが、この地に根を張るきっかけとなった。故郷イタレリではジョルケッラと名乗っていたが、いつしか独特の転訛を起こし、ジオルケラー卿と昨今では呼ばれておる。
ジ・オル・ケラー!
力強い名乗りであり、元よりも数段豪気さを感じさせる漢の姓である。そうした家であることは先刻承知の上でやってきた妻であるはずなのに、アドーレ・ジョルケッラと名乗り、アデーレ・ジオルケラーの名を拒む。親戚一同、故郷の血があまりに薄くなることを恐れ、名家の娘を迎えたが、あまりに我儘が過ぎるのではないか。
歩み寄る気がなかろうと、義務を果たしてもらわねば家が絶える。冷え切った仲ではあったが、ワシは頑張った。その甲斐あってついに妻は懐妊した。腹が大きくなると共に半狂乱になっていく妻には、非常に辟易した。何故抵抗なく普通の家庭のように、すんなりと母親になれないのか。
この女は頭がおかしいのだ。出産後その思いは確信に変わった。
ワシの大事な跡継ぎを、私のジョカトーレ、私のジョカトーレと振り回す。意味は、「おもちゃ」だ。あてつけに命名してしまった。我が子の名はジオカトロ。豪気発音はジオルケラー家の誇りである。
ジオカトロ・ジオルケラー!実に健康そうな響きである。母親に壊されなければ、しっかりとした男児に育つであろう。おもちゃと名付けたのは母親だ。あまり良くない意味かも知れんが、おもちゃは子供にとって最も大切にすべきもの。そうごまかすしかあるまい。
ジオカトロは乳母に預けた。ワシの妻アデーレは、癇癪を起して実家から連れてきたぬいぐるみをみな粉砕してしまった。教育が足りない。母性が足りない。取り上げて正解であった。ぬいぐるみという少女趣味を寛容にも許したのが間違いだったか。
ワシと乳母により、教育は厳格に行われた。息子は正義感あふれる青年に育った。赤ん坊の時に頭をゆすられ過ぎたせいで知能は高くないが、誠実さがそれを補うであろう。アデーレはこの間、ますます狂っていった。幽閉せざるを得ない程に。
修行に旅立つ日だけは会わせてやろうと思った。母の愛が薄かったジオカトロだが、それを励みに頑張るであろう。だがそれはまたも間違いだった。
アデーレは嫁入りの時持参した、「聖壁十字軍」時代の貴重な財宝で息子を祝福しようとしたようである。だが、取り出した聖灰とやらは何だったのか。危うく息子の左目は失明するところであった。この女がやることは全て悪い方に傾く。引き離しておいた方が全員が幸せになれる。
ワシが注いだ愛は、ことごとく撥ね付けられた。そんなにワシが嫌いならば、もう実家に帰ってはどうか。だが、乳母を恨んで、帰らないという。ああそうか。一度も手をつけていなかったのに。ワシは貞淑に生きて来たのに。事実が無くても恨まれるならば、望み通り事実を作ろう。
乳母は、ジオカトロを愛情で育ててくれた。ワシの愛も受け入れてくれた。なんと心安らかな日々。親戚一同の意見など無視すればよかった。騎士の義務とはなんだったのか。すべてむなしい。
皆から祝福されたイタレリからの花嫁のあでやかな姿は、もうワシの記憶からは消す。
アデーレ、もはや好きに名乗れ。もう、アデーレとは呼ばぬ。
アドーレ・ジョルケッラという女。
教義により離婚は出来ぬが、もはや妻でもなく母でもない。
箱庭で半狂乱に暴れる魔女である。
かわいそうなキャラを作って
虐待する方が自己弁護するマッチポンプ回
読後感悪いですな




