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【★迷ったらコレ!】ぱちぱちMIX甘酸っぱチェリーサンデー…… B$5.25

 よいしょ、と袋を抱え直し、事務所の中へと戻る。すると、いち早く、すん、とジムの鼻が鳴った。


「美味そうなもん持ってんな」

「ちょっとジム、カツアゲみたいな言い方はやめてあげなよ」

「まだ何もしてねえだろ」


 ジムの肘鉄を脇腹に食らって静かに悶えているグレイを横目に、リオードは袋の中身を取り出す。ちょうど時計の針が天辺を目指して動き出した頃合いだった。


「わ、ほんとに結構な量だ……全員で食べてもだいぶありますけど」

「あー、おじさんはホットドッグ一つと、コーヒーだけもらえればいいから。後は若い子たちで好きにして」

「わかりました。デオさんはまだ遅くなりそうですよね。何とっておこうかな……」

「んなもん、悩まなくたって、残ってたやつ食わせりゃいいだろ。後から来るやつがツイてなかったってだけなんだから」

「ええ……」


 リオードが引いているのを無視して、舌なめずりをすると、ジムは早速山積みの料理の中からお目当てのものを探し始めた。そして彼女の前に陣取られたのは、オリジナルソースが溢れるほど入ったダブルバーガーと細切りのポテト、コーラが並々注がれたドリンクカップ、そして辛味ソースだった。

 舌がひりつく癖になりそうな感覚を思い出し、リオードは「あ」と洩らした。それを抗議の声と思ったのか、ジムはじと、とリオードを睨みつけた。


「……んだよ。好きなもん食ったっていいだろ? 文句あっかよ」

「ないです! ……あの」

「あ?」

「それ、お好きなんですか? 辛味ソース」

「……食ってんの見りゃわかるだろ」


 ジムはぺりぺりと蓋をはがしてから、ポテトで真っ赤なソースを攫い、それをあんぐり開いた口の中へ運んだ。


「それ、僕も食べてみたいです」

「許可なんぞとらなくても、好きにしろよ」


 ジムは両手でバーガーを持ったまま、右手の小指で白い容器を押し出し、気持ちばかりリオードの方へ寄せてやった。


「……ありがとうございます!」

「何にやにやしてんだよ。気持ち悪いな」

「このソース、美味しいですよね。僕も好きです」

「当たり前だろ? つーか、私が選んでる店なんだから、全部美味いに決まってる」

「好きな食べ物がジャンクフードっていうのはいただけないですけど、ジムさんの味覚って結構しっかりしてますよね」

「なんか失礼じゃねえか?」

「褒めてますって!」


 包装紙がこすれる音、レタスを噛み切る音、肉汁と混ざり合うソースを啜る音、溶けた氷がカップの中でずり落ちる音。その合間にテンポよく会話が飛び交う。それにはまるで、あのダイナーのBGMを彷彿とさせる軽快さがあった。

 ダイナーの音は、時にがさつで、不協和音で、物騒なものも多々混じってはいたが、何故だかそんな食卓が愛おしかった。それは、この街の縮図とも言えるのかもしれない。何事もお上品にとはいかないが、なんだかんだ言って、結局、この物騒がしい街が好きなのだ。

 そんな思いを噛みしめながら、リオードは、この街の日常にも似たその刺激的な味を飲み込んだのだった。

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