石じじいの話・いくつかの短い話 9・雪の日に鶏をしめる
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
(1) 大雪の日、雪がどんどん降りしきっている時に、庭で鶏をしめている人がいたそうです。
首をナタで切断して、その鮮血が降り積もる雪に飛び散っていました。
その人は、ものすごく嬉しそうでした。
(2) 木に子どもが登っていました。
それを見ていた老婆が、あの木で、あの子の母親は首をつったのだ、と独り言のように話したそうです。
(3) 正月の餅が乾いてヒビが入ると、そのヒビから血が出ることがありました。
その時は、その家から死人が出るとか。
しばしば起きるわけではないが、それが起きると必ず葬式が出たそうです。
(4) 河原にある、犬の死体が腐敗し、体に蛆がたくさんわいていました。
その蛆の塊が、文字のように見えたそうです。
どのような文字だったかは、聞き書きメモにはありませんでした。
(5) 手紙がとどきましたが、「私は死にました」と書いてありました。
その手紙を出した人は、その手紙の投函の消印よりも、はるか前に死んでいたそうです。
これは、ありがちな話ですね。
いたずらと思われるのですが、その死んだ人には、ほかに親族はいなかったし、二人の付き合いを知っている人もいなかったのです。




