石じじいの話・ささやく鳴き砂
石じじいの話です。
みなさんは、「鳴き砂」を知っていますか?
海岸を歩くと、浜の砂が「きゅっきゅっ」と音をたてる現象です。
これは、乾燥した、砂以外のまじり気のない、粒の揃った石英の粒が集まった砂でなければ音が出ないのだそうです。
石英の粒だけでできている砂浜は、近くの川の上流に石英をたくさん含む花崗岩があって、それが風化して、構成する鉱物の結晶が分離して川で運搬される過程で、石英だけが集積することで形成されるのだとか。
さらに、砂として海岸に運ばれて、浜で波の動きと海岸の風によって淘汰されて、同じような径の砂粒が集まる砂浜が形成されるのです。
さて、石探しのじじいが、ある砂浜を歩いていると、そこが鳴き砂の浜らしく、音がしました。
べつに、鳴き砂で有名な浜ではなかったのですが、じじいの一歩ごとに音がします。
「ほうほう、これは鳴き砂か」と地面を見つめながら、じじいはあるき続けましたが、よく聞くと、砂が発する音が「人の声」のように聞こえるのです。
歩を進めるごとに、「おい、おい、おい」、「はい、はい、はい」、「うっ、うっ、うっ」、「ひっ、ひっ、ひっ」と人の声のような音が聞こえてきました。
気のせいかと思って、注意深く聞いてみたのですが、やはり人の声のようです。
人の声が他から聞こえているのではないかと、立ち止まって、あたりを見渡して耳をすませても、そんな人はいないし声も聞こえませんでした。
やはり、砂が「声」を発しているのです。
これは、珍しいと興味を持ったじじいは、その砂をたくさん採集して持ち帰りました。
集めた砂を乾燥させて、ビール瓶にいれて木の棒でつついてみると、やはり人の声のような音がしたそうです。
何度ためしても、たしかに人の声のように聞こえました。
ただし、その砂を、すこしとって鍋で煎ってみると、人の声を発することはなくなったそうです。*1
その砂は、好事家の目の前で実演して、その人に高値で売り払ったそうです。
*1 加熱によって、砂が「死んだ」のでしょうか?




