石じじいの話・おいら灯台守(ロシア)
石じじいの話です。
朝鮮に住んでいたときに、じじいが知り合いのロシア人から聞いた話です。
ロシアにも灯台守がいました。
おそらく、黒海沿岸の灯台の話です。
それは、孤島に建てられた灯台で、一人で勤務していたそうです。
冬は、寒く、荒波が押し寄せる厳しい環境でした。
海がしけると、食料や燃料を運んでくる船が来ず、飢えることもありました。
そんな、きつい仕事のわりに、給料は安かったということです。
しかも、任期は10年。
任期を満了できる灯台守はほとんどいなかったそうです。
灯台の内部は、湿度が高いため、呼吸器の病気や関節炎になりました。
風邪をひいて、それが原因で死亡することもありました。
事故も起きました。
仕事中に、大波にさらわれたり、落雷で死ぬことがありました。
補給船がやって来ても、灯台にはだれもいないこともありました。
船員たちは、「ああ、波にさらわれたのか?
それとも、自分から海に飛び込んだのか?」と納得したそうです。
退屈と孤独を紛らわせるために飲酒に走る者も多く、アルコール中毒で廃人になる灯台守もいました。
このような殉職者が多い場所なので、「灯台守の幽霊」が、その灯台や周辺海域に出没するという怪談話が多かったそうです。
この話を語った知り合いのロシア人は、オデッサで、黒海の灯台守を勤め上げたという男と知りあったそうです。
その男は、タタール人で、十年間の任期を無事に終えていました。
イスラム教徒で飲酒をしなかったので、アル中になるのを免れたと。
孤独は、信仰の力で耐えたということでした。
しかし、やはり、幽霊はやって来たそうです。
冬の荒れた深夜でも、穏やかな夏の夕暮れでも、幽霊は来ました。
そして、ドアを叩くのだそうです。
「おい、起きているか?あけてくれ。食いものと酒を持ってきたぞ。お前の女房からの差し入れだ。」
などと話しかけてきて、幽霊が灯台守と交渉を持とうとするのです。
「そういうときは、ドアを絶対に開けてはいけない!自分も海に飛び込むはめになるからな。」




