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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
兎と盾
48/221

第46話 代価

46話です。良かったらみてやってください。

 小さく震える兎の獣人は、眠っているディードに対し、2度3度と唇を重ねた。

 時折緊張しているせいか、カチカチと歯が当たる音がした。


 ディードは住処を出ようとするがファグが離してくれず中々出れない状況だった。

「ぉぃ!ファグいい加減離せって、レミィちゃんの暴走を止めてくるんだから。」

「あれは酔っての暴走じゃない。それはお前も分かっているだろ?酔った勢いもあるが、あれは彼女の意思だ。いきなり止めに行くのは失礼じゃないか?。」

 ファグが珍しく真剣な口調でディードを止めようとしていたが、少々意味が分からなかった。


「本音は?。」

「面白そうだから。」

 殴りかかるディードに対し、軽く避けるファグ。後ろでは笑いを堪えきれずに噴き出すアイリス。

「おめーら!お菓子はしばらく禁止だからな!。」

 言い捨てるディードにショックを隠し切れないファグとアイリス。ファグはすかさずディードの拘束と解いた。そしてそのまま住処を出るのであった。


「あーお菓子がぁ・・・。」

 しょんぼりと項垂れるファグに対しアイリスは軽く笑う。

「その内作ってまた入れてくれるわよ。それにしてもあの娘でしょ?()()()?・・・・。」

「ああ、盾の子だ。素直でいい子だと思うがな、嫁にするならこっちの方がいいかもな。」

「あら私はリリアちゃんもいいと思うわよ。それに嫁は一人じゃなくてもいいんだし・・・。」

「まぁそれはディーが決める事だ。俺達ではないな・・・。」

「そうね・・・。そういえばファグあの子に何か伝える事あったんじゃないの?」

「・・・・・忘れてた。」

 再び項垂れるファグを見つめ、アイリスは一人笑っていた。




 ――――

「起きない・・・やっぱり疲れているのかな?・・・でも・・・。」

 起きないディードに対し、レミィは一人何かを決心していた。彼女はベットに登り、仰向けに寝ているディードを跨ぎ静かに呼吸を整えていた。  


 意を決した彼女は彼の腕を取りその手を自分の服の下に伸ばし胸へと導いていた。小さな双丘に触れた手はまだ反応がなかったが、彼女の方はそうもいかなく異性に自分の胸を初めて触られるという、恥ずかしさと緊張でどうにかなりそうだった。

 それでも彼女はさらに触れて貰おうと手に覆いかぶさる様に仕向ける。すると彼の手が反応し彼女の小さな胸を掴んだ。彼女の身体が反応し甘く切ない声が漏れる。そこで彼女は疲弊し彼に覆いかぶさる様に倒れ込む。


「・・!・・んっ!・・・・恥ずかしくてどうにかなりそう・・・・。」

「なら、こんな事はやめるんだ。」

 レミィはこの言葉を聞き瞬間的に仰け反った。


「いつ頃から起きられたんですが?。」

「君の声で起きた。そしてこの状況はなんだい?。」

 まさか最初から見ていたとは言えずにレミィに状況を求めるディードに対し、彼女は恥ずかしながら伝えた。

「あの・・その・・今日のお礼に、私の初めてを受け取ってもらおうと思って・・・・。」

 レミィは耳まで真っ赤になりながらも恥ずかしそうに説明する。潤んだ緑の目に白い髪、時折震えるその姿に思わず抱き着きたくなる程可愛らしさを受けるディードだったが心を鬼にしてグッと堪えた。


「魅力的な提案だけど遠慮しておくよ。レミィちゃん。」

「そんな!だったら私どうやってこの恩を返せばいいですか?。助けてもらった上に、耳まで治してもらってそれで仲間に入れて貰って・・・お金じゃ払いきれない位の物を貰ったのに、何も返せないじゃないですか?・・・そりゃ私の身体は貧相かも知れないですけどそれ以外に返す方法が思いつかないです。」

 レミィは力強く胸にあるディードの手を抱きしめる。その柔らかい確かな感触を感じつつもディードは冷静に答える。



「恩を感じる必要はないよ。ダンジョンの時にも言ったけど、もう仲間なんだから貸し借りなんて気にしないで。一緒に旅してくれるだけでも嬉しい。それにね、今君を受け取ったらそれは、クラックとやってる事があんまり変わらないような気がする。」

「そんな!!私はそんなつもりじゃ!。」

「お金で君を縛っている訳じゃない。恩を売って縛っている訳じゃない。君は自由なんだ。無理に返す必要はないよ。それに君は強く、かなり魅力的だ。正直に言えばこのまま抱きたいとも思う。だけどね、それは今じゃない。わかってくるよね?。」


 優しく諭すディードに言葉が出ずにディードの手を離すレミィ。胸から解き放たれたディードの手は、彼女を優しく包み込んだ。


「分かってくれてありがとう。」

 そうディードが伝えるとレミィは俯き顔を赤く染めながらディードに抱き着いた。

「そんなに優しくされちゃうと、もっと好きになっちゃうじゃないですか。」

「それはありがたいかな。とても可愛い獣人の子に好きって言って貰えると男冥利に尽きるよ。」

「・・・・ずるいです。」

「そうかな・・・。」


 2人は少しの間お互いの温もりを、鼓動を、確かめ合う様に抱き合っていた。そして外ではいつの間にか小雨が降っていた。


『いい所悪いんだが、そこの兎娘を≪住処≫に連れてきてくれ。彼女に能力を授けると名目で・・』

 突如ディードの頭に思念が鳴り響きファグの声に少し苛立ちながらも返答する。


『また見てたのか、いくら精神的な親でもこれ以上の横暴は許さないぞ?』

『待て待て、今回は特別だ。その子に用があるんだ。今みたいな状態ならなんとか引っ張れるからやってみてくれ。獣人の子だが魔法の才がある。だからそれを伸ばすから連れてこい。』


 そう言うとファグからの思念が切れディードは深くため息とつく。レミィはそれに気づき彼に話しかける。

「何かあったんですか?少し殺気を感じましたけど?もしかして私が何かしました。」

「いや違う、少し疲れただけさ今日は色々あったから。」

 そう言うとディードは抱き合ったままベットに倒れ込んだ。


「きゃ!。」

「ああゴメンゴメンいきなり倒しちゃって・・・。」

「いえ少しびっくりしただけです。」

「今日はこのまま一緒に寝てくれるかな?。」

「はい・・・でも私はドキドキしてて眠れないかもですけど。」

 レミィはクスっと笑いディードに身を委ねる。彼の視界には彼女の耳が赤く染まっているのが見えていた。


「大丈夫良く寝れるように、おまじないするから。」

 ディードはそう呟くとそのまま呪文を唱えた。

『木の精霊よ安らぎの精霊よ、我らに安らかな眠りを与え給え』 『木の囁き(ウッドスリープ)

「え?それって呪文・・・・じゃ・・・?。」


 ディードが呪文を唱えると、どこからともなく優しい風が吹き2人を包んだ。その優しい風は木の香りを運び心を落ち着かせ眠りへと誘う。

 レミィは最後まで言いかける事無く、ディードの呪文による睡魔に抗えず眠りついた。

(これで≪住処≫に連れて行けなかったら本気でアイテムボックスに食べ物入れないからな。)

 ディードも自分の呪文にかかり、ウトウトしながらも眠りについた。



 ――――――

≪住処≫に着いたディードはレミィの姿を探す。しかしまたこちらには辿り着いておらず、ファグに問いかける。

「まだ来てないのか?。」

「ああ、もう少しだ。さすがに意図的に引き寄せるのは難しいな・・・来たぞ。」

 ファグが指し示す方向に姿は見えているが、所々ノイズがかかっているような少し希薄なレミィがそこに立っていた。


「ディードさん?ここは・・・?」

 レミィは少し不安そうにディードに近づいてきた。ディードは彼女の手を握り説明をした。


「ここは俺の世界とも言うべきかな、通称≪住処≫(バックヤード)って呼んでいる。俺のアイテムボックスを通じて少し違う世界にくる事が出来るんだ。

 ディードはそう簡単に説明をした。彼女は初めて来る世界に少し怯えつつもディードの手を強く握りしめた。

「ここにリリアさんも来た事あるんですか?。」

「偶然来た事あるけどすぐいなくなった。ちゃんと招待出来たのはこれが初めてかな?。」

「初めて・・・・そうなんですか。」

 レミィはそう言うと少し嬉しそうに呟いた。彼女にとって何か嬉しい事なのだろう。だがそれも一瞬で消え去る事になった。 レミィは正面からくる巨大な影を見て驚き恐怖する。すぐさまディードの手を強く握り逃げようと促す。


「ディードさん!あれは!危険です。私達じゃとても敵わない相手です!」

「大丈夫。・・・・あれ一応俺の親にあたるやつ。」

「・・・・・へ?親?。」

 レミィは気の抜けた返事をしつつも、巨大な影に怯えディードの背に隠れる様に動いた。


「なんでそんなにでっかくなっているんだ?ファグ?。レミィちゃんが怯えているだろ。いつものサイズに戻ってくれ。」

「親として威厳のある姿を見せようとしたんだがな。仕方がない。」


 そう言うとファグは先程の3メートルはあろうかという姿からいつもディードが見慣れたサイズに縮んでいった。 ファグはレミィの前に座り改めて挨拶をする。


「初めまして、兎の娘よ。我が名はファグ。ディーの精神的な親にあたる者だ。以後よろしく頼む。」

「げ・・・幻獣神ファグ・・・・?。」

 レミィはファグを知っているらしく、その場でぺたんと座り込んでしまった。そしてディードに振り向き何かを言いたかったようだが言葉が出ずにいた。


「・・・・なん・・で?。・・え?エフのヒトなのに、ファぐ・・・え・?。」

「レミィちゃん落ち着いて。後で説明するから、今は少しファグの話を聞いてくれる?。」

 ディードにそう促されると、レミィは無言で頷きファグの方を恐れながらも見つめる。


「時間が無いので簡単に説明する。レミィよ其方に獣神の加護と技を授ける。これからもディードと共によろしく頼む。」

 ファグの言葉にレミィは土下座をするように頭を下げ、途切れ途切れで言葉を口にする。


「勿体・い、お言葉・・・ありが・・・ございます・。か・・ずディード・・・をお守り・・す。」

 レミィはこの世界では時間切れに近いののか、ノイズが大きくなり存在も消えかかっていた。

「うむ。それでは力を授ける。そのスキルは【兎の盾(ラビットシールド)】だ!。心して受け取るがいい。また会おう可愛い娘よ。」

 そう言うとファグは両肩に浮いている精霊から一つの光玉をレミィに送り彼女の身体の中に消えて行った。それとほぼ同時に彼女は、≪住処≫から姿を消していた。


「おい!彼女に何を仕込んだんだ?場合に寄っちゃタダじゃ済まさないぞ。」

「あれはただの演出だ。本人が既に使える力の手助け・・・まぁ説明書みたいな物を渡しただけだ。」

「本当か?」

「インディアン嘘つかない。」

「絶対食い物アイテムボックスに入れないからな!。」

「すみません冗談です。まぁ戻ればわかるはずだ。最初の内は魔力切れに気を付ける様に見張っとけ。」

 ディードはファグに不信感を抱きながらも≪住処≫を後にする。




「余計な事言うから不信がられちゃって・・・不器用ねアンタも・・。」

 アイリスはため息交じりにファグに近づく。その姿を見て彼もため息交じりに言葉を交わす。


「素直じゃないのはお互い様だしな。もう少し素直に育ってくれれば良かったんだがな。だれに似たんだが。」

「あら?それ私って言いたいの?そうねここは素直になろうかしら。ファグ少し運動したいんだけど付き合ってくれる?」

 アイリスは笑顔でアイテムボックスから銀色の槍が飛び出し、ファグを突き刺そうした。

「おー怖い怖い、俺も【兎の盾】を使って逃げるか。」

 ファグは彼女の攻撃を避け、空間にいくつもの魔法陣を出現させそれに次々と飛び移り移動し始めた。


「こらまてー!。」

 アイリスは追いかけるべく、ファグの残した魔法陣を次々と飛び移って追いかけるのであった。


 ――――――


 ディードが目を覚ます頃には薄日が差し、朝を迎えていた。小雨が上がったのか外では小鳥の囀る声が聞こえてくる。目の前には抱きしめて一緒に眠りについたレミィが小さな寝息を立てていた。

(朝か・・・)

 ディードはレミィが起きないようにゆっくりとその場から離れようとしたが、その動きで彼女も起きてしまう。

「あれ・・・・?ここは・・?・・・!!!そうだディードさんに。」

 彼女はすぐさま覚醒しベットから飛び起きようとした。だが目の前にディードがおり、奇しくも彼の顎にヘットバットをしてしまった。 ごちんと鳴り響くその音は2人を起こし、悶絶させる。

「~~~~~!!!!(またこれか!)。」

 お互い痛がりのたうち回る。痛みが引く頃にはどちらからも吹き出し笑いあっていた。


「おはようレミィちゃん。」

「おはようございますディードさん。不思議な夢を見ました。ディードさんの親が幻獣神であって・・それから・・・」

「あー・・・【兎の盾】ってスキル使ってごらん。」

「・・・・え!!なんでそれを知っているんですか?。アレは夢じゃ?」

「説明は今度ちゃんとするから、今はそのスキルを見せてくれると嬉しいな。」

「えっと・・・わかりました。それじゃ使ってみますね。」

 レミィは戸惑いながらもディードに促されスキルを使ってみる事にした。

 彼女はそのスキルを知っており、いつも当たり前の様に使っている気がする錯覚さえ覚えていた。そして手を前に出しそのスキルを唱えてみた。


「【兎の盾】。」

 そう唱えると前方に白い魔法陣が現れ50cm位の魔法の盾が現れた。

「ええ!これは・・・?。」

「それが君の新たな力だね。おめでとう。」そう言うとディードは笑顔でレミィに問いかけた。


「こんな凄いスキル・・・・ってディードさんの親って・・え?ええ!?。」

 レミィは混乱している、無理もないだろう。彼の見た目は髪が黒以外はエルフそのものだ。どこにも獣人の印象を受けない。それでいて、獣人の間で崇められている幻獣神を親に持つなど、考えられないのだ。




「ああ・・訳がわかりません。ディードさん貴方は凄すぎます。私にこんなスキルまで与えてくださってもう、離れられないじゃないですか。」

「いやそれ俺じゃないんだけど?」

「それでもです!こうなったら・・・意地でもこれは受け取ってもらいます!。」

 

そう言うとレミィはディードに近づき、背伸びをしつつも彼に唇を重ねた。

 プルプルと背伸びをしつつも彼女はディードの顔を捕らえキスをしていた。


 やがて互いの顔は離れ、お互い頬を染め上げる。

「これは純粋に貴方への好きという表現です。今は無理かもしれないけど、いつか振り向かせてみますね。」

 そういうと彼女は自分の積極的な行動を思い出したのか、恥ずかしそうに走り出し部屋を出て行った。


 ディードはベットに再び仰向けになり目を瞑った。

「参ったなぁ~絶対アイツ等見て笑っているよ・・・。1日で美女2人からキスされてるとか言って・・」

 そう言うとディードは微笑みながら再び眠りにつこうとしていた。

 彼女の柔らかい唇と顎に受けた衝撃を残し、外は晴れ上がり虹か架かっていた。


最後まで見てくださってありがとうございます。

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