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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
兎と盾
43/221

第41話 生贄

第41話です。良かったら見て行ってください。

 

「それを踏んじゃだめーーーー!!。」

 レミィの必死の大声も虚しく、クラックのパーティーメンバーはそれを踏んでしまった。


 そしてそれは起こってしまった。突如それを踏んでしまった所からレミィが倒れている位置まで足元が崩れ落ちたのだ。 落とし穴のトラップだった。


「んな!なんでだ?ここは5階層だぞ。なんで落とし穴がぁぁぁ~」

「ばかな~~。」

 それぞれがあり得ない事が起こったと驚愕し落とし穴に飲み込まれていく。

 レミィもまた逃げようとしたが、魔剣の追加効果である激痛がまだ身体を支配しており、動くに動けずそのまま落とし穴に落ちて行った。


 レミィは幸い背負っていた荷物が先に下に落ちクッションになり、落下の大きなダメージは免れる。だが魔剣の追加効果が切れることなく更なる激痛が彼女を襲う。

「きゃぁぁぁあああ!!!。」

 痛みに堪えきれずに声を出すレミィ。

 周囲は落とし穴による落下物により周囲一面、土埃が充満していた。


 数分が経過し徐々に開ける視界。そして魔剣の追加効果が切れたレミィは、身体をなんとか起こし、バックを外し壁の方へと這う様に引きずって行った。

(この階で落とし穴なんてトラップは今まで無かった。そしてさっきの嫌な予感、もしかしてここは・・・)




 そして視界が晴れた先に待ち受けていたものは、大量の魔物だった。

「も、モンスターハウスだぁぁあああ!!!。」クラックのメンバーの一人が大声で叫ぶ、落とされたその場所には、魔物がびっしりと詰まっていた。


「慌てるな!ここは5階層だ。今まで落とし穴が無かったが所詮5階6階の魔物だ。俺達の力であれば切り抜けられる。武器を取れ!。」 

 指示を出したのはクラック。メンバーも立ち上がり周囲の魔物に応戦しようとする。

 だが、立ち上がったのはクラックも含め3人だった。


「おい!早く立ち上がれ!やられるぞ!。」

 クラックの声に反応し武器を取り戦う者はおらず皆残った者は後ずさりを始める。


 前方の方、つまり落とし穴の仕掛けを踏んだ方からは、短い悲鳴と何かを砕く鈍い音が鳴り響く。その音は普段聞くことの無い音であった。


 その音を聞き、想像をするメンバー・・・その想像は正解を導くには時間がかからなかった。

 仲間が殺されて、引き裂かれ、そして喰われていく。やがて思考は恐怖に支配され身体が震え出した。



「あ、あああに、逃げないと・・・」震えだしに逃げようとするメンバーの身体には1本の槍が腹部から生えていた。

「はえ?・・・ぐ・・・ぎ!!。」悲鳴を上げきることなく次々と彼の身体に槍や剣が刺しかかる。

 槍を持つ魔物はアンデットのスケルトン、それにオーク、ゴブリンなどだ。

 やがて槍で貫かれた仲間も、助けを求める声を上げる事も出来ず力無く項垂れ事切れる。



 その姿を見たクラックは、恐怖し立っていたフォールに話しかける。

「フ、フォールさん。ここはやばいです一旦立て直しましょう。そこに出口があります。」

 クラックの指し示す方向には出口が見えていた。しかし魔物に出口までの道のりを阻まれている。

 フォールに助力を求め共に脱出する作戦であった。

 しかし・・・・


 フォールは先程から立ったまで動こうとしない。聞こえなかったのか、それとも恐怖で動けないのかわからない。

「フォールさん、急ぎましょう!貴方の魔剣と私の力があれば、ここは乗り切れます。兎に角ここは逃げましょう。」 しかし彼からの反応は無く、クラックは彼の肩を掴もうとした。しかしその時、彼の魔剣が手から離され地面に落ちる。


「え?。」

 乾いた金属音と共に前の目に倒れ込むフォール。クラックは倒れ込んだフォールの顔を覗き込む。彼の顔は紫色になっており既に事切れている。正面から何か攻撃を受けていたのだろうか?もしくは毒を受けていたのだろうか?それは彼のみが知る。


「まさか毒にやられて・・・・? チクショウ!なんだこのモンスターハウスは!10層までの魔物が1つに集まっているとでもいうのか?。い、嫌だ俺はここで死にたくない、死ぬ器じゃねぇえ!。」


 クラックはフォールの持っていた魔剣を拾い、その場で切り抜けよう考える。

 魔物の数は多く、出口まで一人で向かうには心許ない。仮に無理して一人で突っ込めばすぐ囲まれ他のメンバーと同じ道を歩むとなるだろう。何かないかと必死に考えるクラック。


「ど、どうすれば・・・何か切り抜けるアイテムがあれば・・・・・。そ、そうだ!。」

 クラックはレミィが置いたバックに近寄り物色する。余程慌てている様で手に取った物が目当ての物じゃないと分かるとすぐさま投げ手当たり次第に漁っていく。


 壁に寄りかかっていたレミィはクラックの物色する様を見ていた。

 レミィは落とし穴による大きなダメージこそは無かったが足を痛めている。歩けない程ではないが走れる程ではない。この状況からすると走れないのは致命的な状況だ。



 背後では魔物が食事を終え、次の獲物へと歩み出そうとしていた。背後から伝わる死への恐怖に焦るクラック。

「あ!あったこれだ!。」

 クラックはお目当てのアイテムを見つけ、振り向きざま壁に投げつける。

「これでも喰らえ!。」

 投げつけられた物は壁に当たると、強い光を放つ。

 眩い光に包まれスケルトンは光の中に消え去り、他の魔物は視界を奪われ後退りする。


 アイテムの名前は閃光玉、光結晶と魔石を合わせられた魔道具。魔力を注ぎ壁や地面に当てると強い光を放つ魔道具だ。 元々はアンデット用だが敵の視界を奪うには持ってこいのアイテムだ。


「どうだ閃光玉の威力は!これで切り抜けられる。」

 クラックはレミィに近寄る。彼女は合図もなしに使われた閃光玉に視界を奪われ目を手で覆っていた。


「うさぎ・・・お前はここで、お留守番だ。俺の脱出の為に生贄になってもらうぜ。」

「え・・・・?」

「全てはお前のせいだ。黙ってついてくれば良いものの、一人で騒ぎフォールにも抵抗し騒ぎやがる。荷物しか運べない役立たずなんぞ助ける価値も無い。騒ぐのが好きなら、好きなだけ騒がしてやるよ。」


 クラックはレミィの両足を魔剣で切りつける。彼女は最初は軽い痛みが走ったがすぐに魔剣の追加効果が表れ悲鳴を上げる。

「いっ・・・いや・・・ああああ~~~きゃぁぁぁあああああああ!!!。」


 悲鳴をあげ悶絶するレミィ。彼女のあげる悲鳴を聞くとクラックは出口に向い走り去る。

「俺が逃げるまで精々いい声上げて魔物の注意を引いてくれや。じゃあな。」



 彼の行動は異常とも思える行動だった。もうすぐ閃光玉により視界を奪われた魔物達が回復し、再び獲物を探し始める。見つけやすい様に彼女を痛めつけ注意をそちらに送る行動は、まさに狂気とも言える行動であった。


 魔物達の視界が回復しはじめた時、レミィは一人取り残され絶望する。周囲は誰も助けてくれる者はおらず魔物に囲まれ始めている。逃げようにも出口は魔物に覆われており、逃げ道はどこにもない。

(あああ、逃げなきゃ・・・・逃げなきゃ・・・・)


 魔物達の瞳に映ったレミィはどの様に見えたのだろう。

 閃光玉を喰らい視界が遮られ回復して最初に視界に飛び込んできたのが、怪我をして満足に動けない恐怖で震えている兎獣人。 人間側だったらこれは罠か?と疑うだろう。 


 だが彼等は魔物だ。目の前に食べてくれ言わんばかりの餌が置いてあるなら喰わない理由はないだろう。

 じりじりと迫るくる魔物にレミィは恐怖で動けない。すぐ届く位置に先程まで背負っていたバックがあるが、それすら取りに行く勇気が出ない。動いたら殺される、声を出しても、動かなくても、声を出しても殺される。目が合っても合わなくても、どうする事も出来ない。


(だ、だれか・・助けて・・・・もう嫌・・なんで・・・こんな目に・・・)


 迫りくる絶対的な”死”を前にした彼女に、もう一つ絶対避けたい衝動が訪れる。魔物の群れから一足先に飛び出してきたのは、ゴブリンとオークだった。


 嗜虐性の高い2つの魔物はこれから行おうとする事は2つ。・・・・嗜虐と凌辱だ。

 彼女を嗜虐と凌辱を繰り返し、死へと誘う行為はまさに悪魔の所業とも言うべきだろう。


 彼女はこれから行われるであろう事に更なる恐怖を生み出す。

(お願い・・・誰か・・・誰か・・・・助けて!)

 彼女の脳裏に浮かんだのは、生死不明の両親と兄弟。それとこの迷宮都市にきて初めて優しくされた二人の姿だった。


 やがてゴブリンが目の前に迫り、棍棒を振るいかかろうとする。

 彼女は恐怖の中、必死にその声を張り上げた。


「助けて!助けて!!ディードさん!リリアさーん!!。」


 張り上げた声は目の前のゴブリン達を少しだけ怯ませただけで、返事は戻って来なかった。

 そして再び振り下ろされた棍棒は、レミィの側頭部に直撃し意識を奪い取ろうとしていた。


(ああ・・・私はここまでなのかな・・?・・・・嫌だ。死にたくない、死にたくないよぅ。・・・)

 薄れゆく意識の中で彼女の瞳映ったのはゴブリンが手をこちらに向けてくる姿と、何かが遠くから飛び込んでくる絵だった。


 一撃で意識を失った彼女を目にしてゴブリンは笑い出し、そして凌辱しようと彼女の斬り割かれていた布の部分に手を伸ばす。彼女の周囲にはゴブリンとオークが数匹、それを今か今かと待ち受けていた。





 だが、オーク2匹は興奮し発情させてままこの世を去ることになる。

 彼等は頭上から降ってきた2人の剣に刺されこの世を去ることになる。


「「レミィ~~~~!!!」」


 2人は彼女を救出する為だけに自ら落とし穴に落ち、この絶対不利な状況下に飛び込んできたのだ。



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