第39話 ポーター
第39話です。良かったら見てってください。
翌日の朝、ディードとリリアは急いで宿を出る。しかも朝食を取り損ねる程寝坊してしまったのだ。
「久しぶりのベットだからってあんなに熟睡するとは思わなかったなぁ。」
「もうすぐ鐘が鳴るって宿に人に言われたから食事取れなかったし、もういっその事レミィちゃん見つけたら捕まえてそのままご飯食べれるとこ案内して貰う~!。」
ダンジョン入口に向かった途中で2の鐘が鳴る。鳴り響く最中に、下を向き俯き涙ぐむレミィを見つける2人。
「レミィちゃ~ん。ごめんね~寝過ごした~~~。」
「あ、リリアさんでぃーぐぇ・・・・」
リリアの声に反応し顔をこちらに向けるレミィ。しかしリリアは止まらずにレミィを走りながら抱きしめた。
不意にタックルを食ってしまったレミィは、言葉もままならないままリリアに振り回される。
「ごめんね~レミィちゃん、久しぶりのベットでそのまま2人共寝すぎちゃって、本当にごめんね~。」
「リリアリリア、ストップ!レミィちゃん苦しんでる。落ち着け。」
リリアは我に返りレミィを離す。彼女はタックルされ、振り回され目を回していた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
リリアが必死にレミィに向かって謝っている。当の彼女は恐縮し
「いや大丈夫ですから頭をあげてください。」とオロオロしていた。一通りの謝罪合戦を終えディードが話を切り食事に誘った。最初こそ断っていたが彼女も朝食を取らなかったらしく根負けし、彼女の案内で朝食を取る。
朝食は簡単にパン、スープに串焼きのセットだった。遠慮せず食べる2人に対し、やや遠慮しがちなレミィ。
「あの本当に私も頂いていいんですか?まだ仕事もしていないのに?」
「いいのよ、これから仕事するんだから。それに可愛い子2人と食事出来てディーも幸せでしょ?。」
突然の振りに色々突っ込みを入れたいディードだったが、反論すると面倒な事が起きそうなので流すことにした。
「そうだな。可愛い子と食事出来て幸せだよホント。毎日こーやって食事を取りたいくらいだ。」
「・・・・可愛い・・・・。」
やや棒読みで流したのにも関わらず、レミィはその人一言だけを拾い、顔を赤らめていた。
一人顔を赤らめて恥ずかしそうにする姿にディードは少し困惑するが、リリアは堪えきれずに抱き着く。
そうして少し騒がしい朝食が終わる。
3人は再びダンジョンに入る。今日の目標は5階より下を目指す。2人の戦闘力にも驚かされつつもレミィは案内し順当に下へ進む3人。 既に昨日到達した5階まで来ていた。
「お二人は10階のボスを倒したらどーするんですか?2人で11階以降はかなり厳しいですけど?。」
このダンジョンは10階以降、15階、20階と階層の主が現れるらしい。10階以降から罠も魔武器、レアスキルも出てくる。つまり10階までが初心者、それ以降が中級者向けになっている構造だ。
「そこはどーしようか考えている。他のパーティーに入れて貰うのもいいけど、正直そこまでしてダンジョン攻略とかしたい訳じゃないしね。目的はここで力をつける事で間違っては無いけど、うーん・・・・。」
頭を捻らせ唸っているディードに対しリリアが冗談交じりに問いかける。
「いっその事、レミィちゃん冒険者に戻って一緒にパーティー組む?」
何気ないその一言が彼女を暗くしてしまった。
「残念ですが、今の私には戦力になりません。足手まといになるだけです。もう少し強ければ良かったんですけどね。」
彼女は俯きながらポツリと呟くように、自分に言い聞かせる様に言葉を放つ。
「強い弱いだけじゃなく、一緒に学んだり成長して行くってのは誰にでもある権利だと思う。君にもその権利はあるんだよ。君が望むならね。あとはタイミングかな。」
彼女にその言葉がどう届いたかはわからない。
もしかしたら、ただ聞き流されていたのかも知れない。呆れられたのかも知れない。だが彼女がこの場所で生きるの事を望み、前向きに歩いているならディードは口を挟む事は無かったのだろう。
「私が望む・・・・?。」彼女はディードの呟いた言葉を反芻し始める。まるで自分に言い聞かせるように。
「私は・・・それなら私は・・・・。」
彼女が言葉を続けようとしたその時、遠くから集団の足音が近づいてくる。彼女はそれに警戒し、怯えリリアの後ろに回っていた。
「どしたの?レミィちゃん・・・?。」
「すみません、知り合いが来ますが手を出さないでください。」
レミィは警戒しリリアに伝える。
「あれ~?どっかで見たと思ったら、ウサギのポーターじゃねーの?ちゃんと仕事してっか~?。」
「昨日ぶりですね。クラックさん・・・。」
クラックと呼ばれる男のパーティー総勢7名がこちらに向かって来た。
「昨日~?なんだっけ?・・・・ああ酒代を奢って貰ったっけか?ありがとなギャハハハ。」
「アレは利子じゃ?。」
「そんな事言ったっけ?酔ってて覚えてねーわ。」
「うぅぅ・・・。」
拳を握りしめ唇を噛みしめるレミィ。
「俺達は先に10階のボスに行かせてもらうぜ。前みたいに臆病なウサギに邪魔される事は無くなったからな。」
「それは貴方達が私達ポーターを盾にしてボスを油断させるなどと言う馬鹿げた作戦をするからです。私は死にたくありません。違約金も期日までにお支払いしますので、私達の事は構わずどうぞ先の階層へ進んでください。」
レミィの言葉にクラックのパーティーのポーター達は驚き困惑した。今の事は本当なのか問い詰めようとしたその時、クラックがポーター達に鋭い眼光を向ける。
「ポーターなんぞ荷物運びと盾にしかならないんだから使ってやるんだよ、金で雇われているんだから主人に口答えするんじゃねーぞ。」
クラックの一声にポーターは怯え俯きながら後ろをついていく。
「じゃーな、うさぎ。期日までに守れなかったら娼館か奴隷に売り飛ばすからな。精々頑張りな。」
彼は悪態をつきながら先に進んで行った。
「何よあいつ、ムカツクわねー!後ろから真っ二つにしてやろうかしら。」
リリアの威勢に、緊張が取れたのかその場にへたり込むレミィ。
「ちょっと大丈夫?レミィちゃん?」
「・・・怖かったです。腰が抜けそうでした・・・・。」
力無く笑うレミィに、リリアは優しく抱きしめる。それは母のようであり姉のようであるような優しい抱擁だった。2人はしばらく抱き合い互いを落ち着かせていた。
「少し休憩しようか。」
ディードは少し離れた所にある広い場所を見つけその場で火を起こし、飲み物を温めていた。
洞窟の中は少し肌寒く、温かい飲み物は最適だった。
ディードから渡された飲み物は、ホットミルクだ。中にハチミツが入っている。
「あったかくて甘い・・・」レミィはその温かい飲み物を大事そうに少しづつ飲んでいた。
「落ち着いたかい?それでさっきの話は本当かい?」
ディードはレミィが落ち着いた様子を見て話しを切り出した。彼女は苦い思い出だったのだろう、少し間を置いてから語り始めた。
「はい。10階の階層主を倒す時に彼はそう言いました。その時の階層の主は【女王蟻】で沢山の【兵士蟻】を引き連れていました。最初は押していましたが、【女王蟻】がどんどん【兵士蟻】を生み出し、やがて押し返され始めたんです。その時に・・・私達ポーターも戦えと指示してきました。その時の目的は兵隊蟻の注意をこちらに向けその間に一気に女王を叩く作戦でした。だけどもう一人のポーターさんが先に逃げ出し、それから冒険者さんが一人倒され、私達は10階から9階へと逃げました。
そして先に逃げたポーターさんは9階の魔物にやられ、私はその分まで荷物を持たされ、何とか地上に帰って来ました。その時に命令違反として罰金が課せられたのです。」
レミィは、当時を思い出しながら話してくれた。その時の恐怖が蘇ったのか時折震えていた。
「ちょっとそれはおかしいでしょ!?そんな罰金払う必要無いって!あいつらが弱くて招いた結果なのになんでレミィちゃんが罰金払う事になっているの?。」
リリアの言う事はもっともだ。話がおかしい、どう考えても彼等の力量不足であり、その場しのぎの浅はかな知恵だ。だが・・・
「私もそう思って抗議しましたが、先に逃げたのが悪いといって聞かず、他の冒険者さん達からも攻め立てられ罰金に応じる事になったんです。この都市のポーターは数が多く、一度変な噂が流れると次に雇ってもらえないから応じるしかなかったです。」
レミィは涙を浮かべながら語った。数と力で屈してしまった彼女は悔しそうに語っていた。それでもこの仕事を止めなかったのは、彼女がこの仕事しかないと思ったからだ。長い事貯めていたストレスを放出するかのように彼女は自分の事を語り出した。
それはこの世界で成人とは言え16歳には過酷な物語だった。
成人を迎えた数日後、彼女は魔物に村を襲われ逃げ回るも、谷から落とされるような形で生き延びた。谷底の川に落ち、流れ着いた先の村で数日動けるまで助けてもらったが、そこは人間以外は好まれない村だったらしく少しの食料を渡され村を追い出される。そして数日彷徨いこの都市に辿り着いたのだという・・・これを幸運と言うべきか不運と言うべきはわからない。しかしこの都市に来てからも、苦労の連続であり現在に至ると言う・・・
彼女があの時2人に声をかけたのは、もしかすると助けを求めたのかも知れない。
「それで、その罰金は払えそうなのかい?」
ディードは優しく問いかける、リリアもその問いかけに真剣に見つめている。
「はい、もう少しで目標の金額に貯まります。それを払い終わったらまたお金を貯めて少しづつ生活出来る様に頑張ります。」
彼女は自分を鼓舞するように、いつの間にか流していた涙を拭い小さくガッツポーズを取る。
それを見たリリアが感極まり、レミィに抱き着き騒ぎ立てる。
こうして彼女との2日目が終了し地上に戻る。その日の階層は6階までに留まる。
それから数日、彼女との待ち合わせは2の鐘が鳴る前にダンジョン前に待ち合わせ一緒に入り夕方には一緒に出るという日が続いた、階層も9階層まで辿りつき、徐々にだが力も付き余裕が出来てきた。
ディードは彼女のいくつかの変化を見ていた。一つは彼女の表情だ。前の時よりも明るく元気ななっていた。
もう1つは肉体的な変化だ。食事を一緒に取る様になってからは、ふらつく事も少なくなりしっかり荷物を背負っていた。時々彼女がコケそうになったりもするが、元々バランスが悪い子なのだろうか?
ディードはそれが気になっていた。兎の獣人なのにわざわざ耳を帽子で隠す事にも、違和感を持っていた。
数日後の早朝
レミィは1の鐘が鳴った後少し経ってから待ち合わせ場所に来ていた。
(今日もあの2人と一緒に入って昨日と同じ金額を稼げれば罰金を完済できる。そうしたらあの人達と一緒に・・・・)
彼女はそんな考えをしつつ2の鐘が鳴るのを待っていた。
「よう、うさぎのポーター奇遇だな。」
彼女はその声に即座に反応し警戒をする。声の主はクラックだった。
やがて2の鐘が鳴る頃、ディード達は待ち合わせに来ていた。
「あれ~?珍しいね。いつもレミィちゃんが先に来てるのに・・・?。」
「まぁまだ鐘も鳴ってないし待ってみよう。」
「そうだね~。ここの所彼女随分明るくなったね。もう様子見る必要ないんじゃないかな?ディー?」
「そうだな、彼女となら一緒に旅してもよさそうだな。今日ダンジョンを出たら誘ってみるか」
「うん!。」
しかし2の鐘が鳴っても3の鐘が鳴っても、彼女は待ち合わせに現れなかった・・・・
梅雨明けしてから毎日が暑いですね。
クーラーが手放せません。
最後まで見てくださってありがとうございます。
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