第2話 巻き添え
2話です、拙い文章ですがよろしくお願いします
「あのね、私達のケンカの巻き添えで、貴方は死んだらしいの。」
高樹はその言葉に、絶句した。 ケンカに巻き込まれて死んだだと・・。
しかも、落石とはいえ一瞬で命を落とした事に、動揺が隠せない。この2人(?)が起こしたケンカとは
どのようなレベルなのだろう。
思考がフリーズしつつも、高樹は冷静に対処しようと試みるが、なにせ実感すら沸かない。
「なんで、落石が起こったの?、それで俺は、俺の体はどーなったの?俺の車は?」
俺はアイリスの両肩を掴み激しく揺さぶる。さすがに、動揺が隠せないようだった。
「お~ち~つ~い~てぇぇぇ」 「これが落ち着いてられっかぁぁ!!」 様々な感情があふれ出てくる。
怒り、焦り、動揺、恐怖など。 何故自分は死ななければならなかったのか?、何故巻き込まれたのか、
何故、何故、何故と・・・・その内自分でも何をしているのかわからなくなってきた。
「やれやれ」 ファグが大きなため息をつく。一応自分も共犯なので止めに入ろうと試みる。
激しく揺さぶり、揺さぶられる2人の間の数歩前まで歩き、そこに座る。
ファグは2人の間に自分の両肩に浮いていた白い球体を間に差し込み、一瞬手のような物が出てきた。 そこから2人の額にデコピンをするかのような衝撃を送る。
「「痛!!」」 地味に痛かった。 思わずファグの方を振り向き、何か文句を言おうとしたが、
「鼻~~鼻がぁ~ファグひどいぃ~」という対面にいたアイリスの悶える姿に言葉を失った。
「落ち着いたか?ここからは私が話そう。やはり、アイリスに話させるのは無謀だったな」
ファグは大きくため息をつき、俺と視線を合わせる。「アイリスは放置でいいか」
アイリスはまだ地面に背を向けゴロゴロと悶えている。 その姿を見て少し冷静になれた。
「間接的にといえ、アイリスの言葉に偽りはない。ただ状況を説明する、いいか?」 「う・うん」
「まずは、間接的とはいえ、君の命が失ってしまった事は事実だ。ただ私達も完全に状況がわかるわけではない。 私達はある物を探している最中に時空振が起きたのだ。」
「時空振?」 「うむ。時空振とは、時間や場所をねじ曲げてしまう、災害でな。 私達はそれに巻き込まれないように魔法を放ったのだが、その余波でそっちの世界にも干渉を及ぼしてしまったようなのだ。そして、この世界とお主のいる世界を行くか否かで揉めてのぅ、アイリスとケンカになったのだ。その衝撃波での、不安定な所でケンカなんぞしてしまった為に、がけ崩れが起こって、そこへ、たまたまお主が通りかかったという訳だ。すまぬな。」
時空振、魔法、世界への干渉、・・・・頭が痛くなるようなワードだらけで逆に冷静になれた。
この人達(?)は意図的にやったんじゃないってことだけでは判った。
「少し聞きたいが、いいかい?ファグ」 「なんなりと」 「時空振は意図的に起きるものなのかい?」
「ほぼ無理だ」 「ほぼ?」 「うむ、やろうとするならば山を2つ3つ消滅させるぐらいの魔法と災害級の地震を起こさせる必要がある。それを起こしても、時間や場所が指定できるわけではないのだ」
「なるほど、それなら君達がわざとやった訳じゃないわな。落石も偶然が重なり合っただけなのかもしれないな。それと、こっちの世界でもなにか災害が起こったのかい?」 「その逆だ」 「逆?」
「そっちの世界で大きな地震が起こったらしいのだ、そのエネルギーが時空振を誘発させたようでの、
こっちの世界に干渉をしてしまったというのが私の展開だ。」
こっちの世界で大きな地震が起きたのか、車に乗って移動中だったから気が付かなかった。
「もう一つ、俺の身体は?」 「落石よって、お主が乗っていた箱の様な物ごと潰されしまったぞ。」 「そうか・・・」 そう答えると、力なく俯き視線を落とす。
まじか・・・どうあがいても無理ゲーじゃないか、まだまだ色々やりたい事もあった様な気がしたけど
今は動揺から醒めたとはいえ、考える力が湧かない。 夢じゃないよな、夢なら醒めてほしいけど・・・
ショックで茫然と立ち尽くす俺に、アイリスが鼻を抑えつつも立ち上がり近寄り伝える。
「これからこっちの世界に来て人生をやり直さない? 今なら特典もつけちゃうよ。」
あーあれかお決まりの転生ボーナスとやらか・・・・ わりと夢なら醒めろと願っていたけど、一応聞いておこうか。
「特典は?」 「まずは記憶を持って転生できるようにします。そしてこっちの世界で生き延びられるように私達の能力を授けます。能力は私からは2つ、アイテムボックスと、この女神の槌を授けます。」
「私からは魔法を。身体強化と、とっておきの魔法だ。この魔法は使い勝手は悪いが、君に役立つはずだ。それと、転生先も紹介しておこうか?」 「少し考えさせてくれ」
ファグの提案を制止し、考えを整理する、こっちの世界では多少やり残した事はあるが、両親も既にいなく友人も結婚し家庭を築いてる。仕事は、やりがいはあったが別に拘りはない。 身体はそろそろガタがきてもおかしくない年だったし。家庭をもった友人が眩しく、少し羨ましいとおもった事も、正直あるだが、自分には家庭を持つ、支えるなどの感情や覚悟がなかった為に独身だった。 要するにヘタレだったわけだ。
そうこう考えていると、どー考えても異世界に行かないメリットが見当たらない。つか2人(?)の提案も蹴る意味がないしな。 万が一提案を断って変な生き物に転生なものなら、後悔しかないや。
ここは2人(?)の提案に乗ったほうがいいな。「判った、異世界に転生するよ。」
そう2人に向かって言うと、ホッと胸をなで下したような雰囲気だった。
「一応確認だけど、こっちの世界と違いは?」「えーっと、少し君の記憶を見せてもらっていいかな?」
そう言うとアイリスはこちらに近づき、額と額を合わせて何やら呟く、少しこの距離は恥ずかしい。
「まるで、違うね。まずこっちの世界には無い、魔法やモンスターがいる。こっちの世界は随分文明が進んでるだね。車だっけ?貴方が乗ってた箱みたいな物は、私達の世界にはないわよ。」
「死が常に隣り合わせの世界よ、もっとも、強くなれば問題ないけどね。」
「「無茶な・・・」」 俺とファグが口を揃えて答える。 お互いの考えは違えど、アイリスが無茶を言っているのがわかる。その後ファグから簡単ながらも説明が入る。
「沢山の種類の種族がいる世界だ。自然も豊だが、モンスターも多い。文明はこっちの世界よりは低いが不憫になることはないずだ。転生先は私の故郷とも言える場所であるエルフの集落だ。」
「うん、問題ないよ、ありがとう。後は何かすることはあるのかい?。」
「後は、こちらでやっておくよ。君の精神体を転生先に送り込んだり、色々やることはあるんだが、その為には君の意識が少し邪魔になってしまう。少し眠ってもらうよ。次に目覚めるときは、転生した身体が動かせるようになってるはずだ。」
「そうか、色々とありがとう。それで転生先でも君達に会えるのかな?」 「「君が望むのなら」」
なんだかんだでこの2人(?)はいい人達だと思う。 人・・・なのかわからないけど。
まぁでもこれ位は言ってもいいだろう。 「ありがとう、ファグ父さん、アイリス母さん。」
「「な!!」」 二人はその場で硬直する。そんな事を言われると思ってもいなかったようだ。
俺は少し悪戯が出来たとばかりに、笑顔で
「あははは、まぁ少しびっくりさせたかっただけだ。精神的な両親だと思う事にするからそっちの世界でもよろしく頼むよ。もちろん肉体的な両親にも感謝をしつつ生活させてもらうよ。覚悟は決めたのでそろそろ送ってくれないかな。」
「ええ判ったわ、それじゃまたね。」アイリスが両手をかざすと俺の意識が遠く離れていった。
ファグもそれに連なり呪文をとなえる、やがて詠唱が終わり高樹の精神体はそっちの世界に飛ばされて行った。
「まさか親呼ばわれされると思っていなかったな。」 「そうね、面白いね彼。」
一仕事終わった彼らは少しの間、高樹を送って行ったその先を眺めていた。
それは、これからの彼の人生に祝福があるようにと祈って・・・
「さて、うち等はもう一仕事しますかファグお父さん」 「そうするかの、アイリス婆さんや」
「それって酷くない?」 「キノセイダロ」 ファグがアイリスに視線を戻し、呟く。
「これでよかったのか?」
「よかったんじゃないかな?ってかこれしか方法思いつかなかったもん。まぁバレたらバレたで2人して謝ろうか。」 「・・・・そうだな。それまでは彼の人生に祝福があらんことを・・」
「それじゃ私達はやる事をやっちゃいますか。終わったら、彼から借りた物で遊びましょ。」
アイリスはそうファグに伝えると、いつの間にか右手に持っていた、長方形の小さな無機物をひらひらと躍らせる。
「それはなんだ?」 「仕事が終わったら教えてあげますよ。ファグ爺さん。」 「やれやれ」
この彼等の作業よりも、高樹から借りた(?)物で遊ぶ時間の方が遥かに長かった。
彼等からもすれば、長い1日の様だった。
そして、この日から16年の歳月が流れる。
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