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第3話 王子の生い立ち



さっきりんごをかじった時に感じた苦味、酸味、そして少しの体の痺れ、あれは毒特有の現象だ。

つまり、あのりんごは毒入りりんご。

なぜ白雪があんなものを持っていたのかは分からないが、何か危険な香りがする。

白雪に危険が及ばないように見ていないと。

白雪に何かあったら俺は……



小人たちと白雪姫の寝室に向かいながら思考を巡らせていた王子は、ふと気が付きました。

「俺はいつの間にかこんなにも白雪のことを大事だと思っていたのか」と。


つい先程初めて会ったばかりなのに、白雪が笑っている姿が見たい、白雪に危険が迫っているなら守ってあげたい、なんていう感情が俺の中で増幅して留まることを知らない。

これが一目惚れというやつなのだろうか。




王子は時期王になることを生まれた時から定められていて、幼い頃から国の歴史、政治、経済、語学、剣術、色々なことを教えられてきました。

だけれどそんな中で、王子が18歳の成人になるまで禁止されていたことがありました。

それは、他人との馴れ合い、異性との交流。

つまり、友人を作ることも恋人を作ることも、それどころか好きな人を作ることさえ禁止されていたのです。


王子には下に2人の弟と一番末っ子の妹がいましたが、成人するまで直接会ったことはありませんでした。

いつも部屋の窓から楽しそうに遊んでいる弟達を見ているだけ。

だけどそれは仕方のないことだと自分に言い聞かせて時が経つのを日々耐えるばかりでした。


そして、成人を迎えた王子は城外へ出ることを1日数時間だけ許されるようになり、禁止されていたこともできるようになりました。


しかし、王子には他人との馴れ合いや異性との交流にはほとんど興味がありませんでした。

確かに興味があった時期もありましたが、18年間それがなくとも何の苦労もせずに生きてこれたのだから、絶対的に必要なものではなかったのではないか、と思えてきたのです。


とはいえ、城外は城内のように安全ではないので、初めて会った人の機嫌を最初から損ねてしまうような危険は回避するために、社交辞令はしっかりと学びました。

そして場外で初めて会った人、白雪姫と出会いました。



最初は綺麗な人だけど何を考えているのか分からなくて、いや、今もまだ全然分からない事だらけなのだけれども。

それでも、りんごが嫌いなこと、白雪の母親がりんごを喉につまらせて亡くなったことを知った。

そしてあの噂、この国の新しい妃となった女性は自分よりも美しい者がこの世にいるのが許せなくて、殺そうと企んでいること、そしてそれが前の妃との子どもの白雪だということが事実なのだということが分かった。

白雪を守らなくては。

そのためにはまず、白雪と話をしなければならないな。



王子は意を決した表情で白雪姫のいる部屋のドアをノックしました。






王子は何も悪くはないわ。

人は1つや2つくらい間違うものだもの。

これは私の心の問題。

お義母様に嫌われているのもきっと私の問題。



白雪姫は寝室に籠もってからこんな事ばかり考えていました。

そんな時、部屋のドアがノックされて、王子の声が部屋の外、ドアのすぐ側から聞こえてきました。



「白雪、さっきは助けてくれてありがとう。話がしたいんだ。ドアを開けてもいいかな」



王子の声がどことなく弱々しく感じて、白雪姫は自分からドアを開けに立ち上がりました。

そしてドアを開けると王子は申し訳なさそうな顔をしていて、白雪姫はなんだか王子が親に怒られて謝りに来た子どもの様に見えて、気が付いたら王子を抱きしめていました。



「えっ!?し、白雪!?」


「……生きてる」



赤面しながら困惑する王子を他所に白雪姫はポツリと一言言いました。



「……ごめん、二度も目の前でりんごを喉につまらせられたらトラウマになっちゃうよな」



そんな白雪姫を見た王子は、両腕で白雪姫を包み込もうとゆっくりと白雪姫の方へと腕を伸ばし、あともう少しのところで抱きしめられる、というところで制止しました。

なぜなら白雪姫が言葉を発したからです。



「……ねぇ、王子」


「は、はいっ!」


「王子は私のこと好き?」


「……!?そ、それはもちろん!」


「ふふっ、ありがとう。……私の新しいお義母様はね、私のことが嫌いなの」


「……なんだ、白雪は全部知っていたんだね。自分が殺されそうになっていることも、あの毒りんごのことも」



白雪姫は聞き覚えのない単語を聞いて、王子に抱きついたまま埋めていた顔だけ上げました。



「私殺されるの?それに毒りんごって?」


「……え。あ、あれ?知っていたわけでは……。ごめん、今の忘れて!」


「ダメ。教えてくれるまで離さないから」



白雪姫と王子の身長差に加え、王子に抱きついている白雪姫の顔は絶対的に上を向いている訳であり、それはつまり王子にとっては上目遣い状態の白雪姫に見つめられている状況で、そんな白雪姫の姿に王子は言葉を詰まらせ顔を真っ赤にしました。



「……っ!あ、えっと、あ、あのりんごは現王妃からもらったものなんだろ?」


「……いいえ、違うわ。あれは今朝黒いマントを羽織ったお婆さんがくれたものよ」



白雪姫はもしかしたら……と、王子の言葉に少しずつ心がざわつき始めました。



「その人は多分、お婆さんに成りすまして白雪に毒りんごを食べさせようとした王妃だよ」



白雪姫はやっぱりそうだったのかと思いました。

心のどこかでは本当は分かっていたのです。



「……嫌われていることは知っていたけれど、殺そうとする程嫌われていたなんて思わなかったわ……。」



白雪姫は少し悲しそうな顔をしながら王子に抱きついていた手を緩め、一歩後ろに下がりました。



「白雪が城に居ないでここに居るのは殺されそうになったから逃げてきたとかじゃないのか?」



王子は白雪姫の言動に疑問を抱き質問しました。



「そ、それは……っ!……だって、信じたくないじゃない。血は繋がってないけれど家族になった人だもの」



白雪姫は王妃に直接手を掛けられたことはないものの、猟師によって王妃の企んでいることは聞いていました。

最初はショックで悲しかったけれど、小人たちと生活を共にするとともに傷は癒え、もしかしたら和解できるチャンスはまだあるかもしれないとすら思っていた矢先にこんなことが起きてしまったのです。



「白雪……。白雪は今でも王妃と和解したいと思ってる?」


「それはもちろんよ!」


「そっか、それなら王妃のことを少し知っておいた方が良いかも知れないな」


「……王子はなんでも知っているのね」


「いや、王妃のことは俺も聞いた話だから詳しいことは知らないけどね」


「いいえ、それでも私よりも知っているし、私よりも先に気付いているもの。あの毒りんごだって……」



白雪姫は自分の発言にハッと気付きました。



「そう、そうよ。あのりんご、毒りんごだったのでしょう?毒は大丈夫なの、王子」


「ああ、りんごは喉に詰まらせて吐き出したし、確かに少し果汁は飲み込んだけれど毒には耐性があるんだ」


「そう、なら良かったわ」


「白雪、心配してくれてありがとう」


「別に。死なれたら後味悪いなって思っただけよ」


「そ、そっか……。」



王子は少し期待した分、白雪姫の言葉にショックを隠しきれずにいました。

そして白雪姫と王子は話をする為に、もしかしたら何か知っているかもしれない小人たちのいるリビングへと向かいました。




成人を迎えた皆様方、おめでとうございます!

本当は昨日の朝か今日の朝には投稿しようと思っていたのですが、間に合いませんでした……(´・ω・ `)

「りんごと白雪姫と王子と」の第3話「王子の生い立ち」です!

もうそろそろ終わると思います。というか、そろそろ終わらないと期限的にアウトですね(笑)

最後まで読んで頂けたら嬉しいです(ˊ˘ˋ*)

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