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二人の男の恋物語
突然吹いた風に思わず顔を背けた。風がやみ、顔を上げて辺りを見渡すと一箇所だけ開け放たれた窓が視界に入る。誰かが開けたまま閉め忘れたのだろうか。開いた窓から、春の訪れを感じさせる暖かな風がカフェの室内いっぱいに広がり、居座っていたコーヒーの香りと混ざり合う。突然の風は春の陽気だけでなく、眠気まで連れてきたようで走の瞼は沈むように重くなる。(窓を閉めなくては.....)半分以上閉じられた目を無理やり開き、机に手をかけ一気に立ち上がる。なんとか誘惑を振り切り窓の傍まで歩いた走は、レバーを手に取り窓を閉めた。ふと窓の奥を見ると、そこには女性が一人、髪を押さえ立っていた。(彼女は何をしているのだろうか)五秒ほど真剣に考えていると再び眠気が意識の真ん中に陣取り始める。完全に眠気に押し出され居場所を失くした先程までの疑問は、バックスペースを押されたように消え去り、走はゆっくりとした足取りで自分の席へと戻った。座ると眠気は加速するように走を包み込み、走は一度は抵抗した眠気に全身を預けると、静かに瞼を閉じた。




