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ネットワーク・インベイジョン  作者: Zassouyorifumetsu
第1章 俺が死んで、最強の騎士は立ち上がる。
1/5

プロローグ

「チームアルファ指揮官からチームベータへ。

 敵勢力は中央大橋を進軍中。

 正規軍は橋の防衛に失敗した。

 現在後退中。」


俺はそんな無線からの言葉を聞き流しながら、

外の光景に目を光らせていた。


今いるのは旧時代のビルの一つ、5階部分にある一室だ。

すでに住民は後方へと退去して久しい。


家具などはまだ残されているが、

人のいなくなった建物だ、そこら中が刻の中に朽ちていこうとしている。


窓から外を覗けば、今日も生憎の曇り空、

人のいなくなった街並みには日も差さぬ灰色こそがお似合いか。


そして、部屋の中には俺の部下たちがこぞって仕事をしている。


「おい!

 チームベータ! 秋芝3等陸佐!

 聞いているなら返事しろ!」


俺はそんな無線の声に名指しで呼び出され、仕方なく応じる。


「なんだ、アルファ指揮官殿。

 今仕事中だ。」


そう答えながら、部下からの報告を聞く。


”隊長、12時方向やや東より重装騎士3体が接近中”


そんな部下の報告に、


「どのタイプだ。」と問いかける。


すると別の部下が、


”おそらく、鉄槌じゃない。

百叩きだ。”


と言ってくる。


「ベータ指揮官、ちゃんと答えろ!

 正規軍が橋梁地区で敗北した。

 お前たちの部隊は残存する正規軍部隊を掩護しろ。

 おい!返事をしろ!」


無線からは理不尽な命令が流れてくる。


その言葉には、さすがの俺も呆れたが返答するため、

無線回線を秘匿チャンネルで開いた。


「くだらん、命令だな。

 アルファ指揮官。

 正規軍が敗れたのに、俺たちのような傭兵が敵うとでも。」


そんな言葉を返したが、すぐに罵倒が返された。


「何のためにお前たちに高い金を払っていると思うのだ。

 こういう時に役に立たなくて、いつ役に立つのだ。

 いいから、命令を実行しろ!」


「お前たちの位置を ”ネット” に流しておいた。

 お前たちはその場所を守り続ければいい。

 撤退はない!

 決して引くな!!」


そんな一方的な命令を下して無線回線は閉ざされた。


”どういうことだ。

ネットに俺たちの位置情報を流したのか!”


そんなことを言うのは、まだ若い部隊員だった。


早瀬とか言う小僧だな。


まだ18かそこらだ。


この年で傭兵業に足を突っ込むとは何やったんだか。


まあ、言わんとすることは分かる。


奴らの情報収集能力は圧倒的だ。


恐らく、アルファのくそったれ指揮官どのは、

ここに大部隊がいるとかそんな情報で、

正規軍の撤退までの時間、敵の目を逸らそうとしているのだろう。


俺たちの主力は、虎の子の歩兵戦闘車が3両。

機動アシスト歩兵団20名。


あとはただの歩兵集団が30名とドローンパイロットにオペレーターだ。


兵数にして80名くらいの弱小傭兵団だが、

今回のような仕事はいくらでもある。


傭兵団の現実は、要するに捨て石だ。


金払いもいいが、頻繁に部下が入れ替わり、

人選ミスも日常茶飯事。


特に最近は正規軍の大敗が相次いでいる。


規模の大きい傭兵団すら明日は我が身な日常だ。


まあ、それでもやることをやるだけだ。


「そこの小僧、今日生きてたら、

 1か月は何もしなくてもいいほど金がもらえる。

 お前もそのくらい覚悟してきただろう。

 それにお前は最後方のオペレーターだろうが、

 お前が死ぬときは俺たちも終わっているさ。」


俺はその小僧を黙らせ、再び秘匿回線を繋ぐ。


今度は部隊内で使っているものだ。


「オフィス指揮官よりアタッカー隊へ。

 応答願う。」


そんな無線通話に、


「はあい、指揮官。

 何か用?」


緩そうな女性の声が聞こえてきた。


「はあ、その緩いのはやめろ。」


俺は溜息を付きながら、要件を切り出す。


「そっちに重装騎士3体が接近しているはずだ。

 見えるか?」


その問いに、


「ええ見えてるわぁ!

 大分派手に進軍しているしぃ。」


そんな答えが返ってくる。


「種別はどうだ?」


再びの問いに、


「オーダー騎士団の正規騎士じゃないわねぇ。

 多分戦士団のじゃないかしらぁ。」


「種別はスタンダードな”百叩き”ねぇ。

 オーダーメイドじゃないわねぇ。」


そんな言葉が無線から流れてくる。


「スタンかキル、どちらか可能か?」


そう聞くと、


「スタンが精いっぱいねぇ。

 今あるドローンじゃ、あの装甲を破壊できないわぁ。」


そんな答えが返ってくる。


はあ、予算がちゃんとしていれば装備も間に合ったのだが。


「やってくれ。

 ただし、どれか一つでも足を潰して欲しい。」


と俺はやんわりとした命令を下す。


「できるだけやってみるわぁ。」


すぐに返事が返ってくる。


ふむ、まずは状況を整理しておこう。


俺たちは傭兵団だ。


主に4隊で構成されており、

オフィスと呼ばれる指揮集団が俺がいるこの場所だ。


ついで、アタッカー、

これは主にドローン部隊を操り攻撃を強行する部隊だ。


自爆ドローンを多数配備し、重量級の相手を磨り潰す役割だ。


さらにディフェンダー、

我が傭兵団の主力であり、このオフィスと呼ぶ指揮隊の正面を護る部隊だ。

虎の子の歩兵戦闘車3両が守りについている。


最後にスペシャル、

我が隊の中で一番自由な奴らだ。


その武装は多彩であり、対物ライフルを腰だめで撃ったり、

携行ミサイルランチャーを複数持ち歩いたり。


地雷を多く所持して標的を仕留める奴もいる。


かなりの変わり種揃いだが、今はそれが役に立つ。



ーーーーー



アタッカー隊指揮官、庭花 絵梨子。


自爆式、または攻撃用ドローンを運用し、

敵戦力を削り切ることを目的としたわたしたちは、

今、敵であるオーダーの戦士団所属と思われる重装騎士を捉えていた。


偵察用ドローンからの映像には、

大きな金属の身体を揺らしながら進軍する巨人の姿があった。


それは3~4メートルクラスの巨体をもつロボである。


3体が3体ともその手に大型のガトリング砲を構え、

正規兵の迷い子を狩っている。


そのシルエットは、日本の戦国大名の鎧姿に似ている。


銅が太いイメージの大名鎧だが、

”百叩き”の武装であるガトリングとの相性はとてもいい。


重心が低く保たれ、その射撃が安定するからだ。


「あともう少し。」


彼女の部下の一人が自爆ドローンを操り、

包囲を完了させようとしていた。


そんな中、部下の一人が、


「500メートル、音源感知。

 重量物の歩行と思われる。」


そんな警告を発した。


「音源のパターンは解析可能?」


そう聞く彼女に、部下の答えは、


「音源消失、建物側に仕掛けたセンサーに感知あり。

 追跡中。

 音源の解析終了。

 オーダーの軽騎兵”キャバリエ”と思われる。」


「確認できる音源は一つ。」


そんな報告を聞いた彼女は、


「スナイパーさん、警戒よろしくぅ。」


そんな軽い言葉を隊内無線に流す。


ーーーーー


スナイパー。


アタッカー隊はドローンの運用上、どうしても移動が多発する。


その為、ドローンに信号を送る中継器を建物上部に置き、

本隊は地上で活動している。


作戦の成功と同時にその場を素早く離れるのだ。


だが、実際のところ、この戦術は結構古くからある。


そして、敵であるオーダーが選択したのが、

軽騎兵とよばれるロボシリーズによる単独襲撃だ。


人間を超える身体能力を持ち、

目標目掛けて車両に負けない速度で走りぬく。


そんな意味があるそうだが、実際には馬より少し遅い感じだ。


一回のジャンプで建物の2階部分へ跳び込んだり、

色々なアクロバティックな運動が出来るが、

対して、その火力は貧弱だ。


サブマシンガンを2丁持ち、運動性確保のため、

軽く作られた機体の目的は、

人類側が使用するドローン部隊を潰すこと。


そのお仕事は簡単だ。


偵察や自爆用のドローンの信号を検知し、

逆探知、それを操作する人間のいる場所に特攻する。


サブマシンガンなのも普通に機動性を重視したため。


ドローンの運用部隊はよく高地や建物を遮蔽として使う。


その為、通常では戦力を上手く叩けない。


そこでこの軽騎兵型が現れた。


”キャバリエ”だ。


特徴的なのは、その手足の長さであり、

胸部以外に装甲が備わっていない点だろう。


そのシルエットは小さな胴体部分に対し、

非常に簡易なフレームで構成される長い手足が目立つ。


ぱっと見の印象だけなら、

スポーティな自転車を思い浮かべる者もいる。


機体の軽量化を図るため、構造をフレームかしているらしい。


まあ軽いとあるが、ロボにしてはという話だ。


人間が使う通常のアサルトライフルなどでは動きを止められない。


そんな軽騎兵型が迫る中、最初の迎撃に当たるのがスナイパーなのだった。


音響探知で大体の方角を割り出す。


そもそもが軽騎兵と言えど小さなものではない。


2メートルほどもある機体であり、その重さも人間より重い。


ただし、性能は人間より高く、建物から建物へと飛び移ったりもする。


だからこその音響探索だった。


アタッカー指揮官から通達されたスナイパーは、

探査結果として200メートルまで迫る軽騎兵キャバリエを捉えた。


人選から2名以上いない凄腕だが、

今回は少し様子が違った。


前回の戦闘で被弾して病院送りになった人員の交代がまだだった。


結果一人で対処することになったのだが、


接近するキャバリエは2体存在した。


地上を走る一体とアクロバティックに建物から建物へと乗り移る一体。


対処に移ったスナイパーは、

地上側を襲うであろう一体を阻止する決断を下した。


地上のそれも極めて狙うのが、

困難な立体的な変則軌道を行使している。


1発、2発、、

当たらない。


だが、最後の突入前に足に弾丸は命中した。


しかし、その直後、建物をつたっていた個体からの銃撃を受け意識を失くした。



ーーーーー


アタッカー部隊の横面から襲い掛かってきたキャバリエの1体。


壁を蹴り上げ、防御用の地雷を避けて跳び込んでくる。


足に銃弾を受けたようだが、それでも両腕と片方の足で更に接近。


自爆ドローンを展開中のアタッカー隊に、

サブマシンガンの銃弾がばらまかれる。


2人が被弾し、護衛の兵士が相対するが、

キャバリエは生存率の高いロボだった。


その力を十全に発揮して、アタッカー部隊に強力な打撃を与えた。


隊員の反撃で倒れるまでにドローン操作員10名に重症を負わせた。


護衛の歩兵にも損害多数。


その後、重症を負った庭花がドローンによる襲撃を実行しようとしたが、

操作用の通信中継器が破壊された。


その後のアタッカー隊の消息は不明。



ーーーーーー




ズゥゥゥン___



はあ、アタッカー隊との通信が途絶し、

状況は悪化している。


俺はスペシャルをディフェンダー隊の援護に据えた。


今、最後の防御用に敷設した対戦車地雷が破壊された。


重装騎士”百叩き”、装甲目標ではなく対人用として作られた、

殲滅用のロボである。


器用に地雷等のトラップをその発達したセンサーで見抜き、

そのあだ名で知られたガトリング砲で処理しきった。


3体全機がこちらへと無傷で到達した。


くそ、どうしたんだ、今回は?


怯えに怯えたさっきの小僧を叱咤して、

携帯ロケット砲に手を伸ばす。


もうここも戦闘エリアだ。


なにせ、ディフェンダーが守るその場所は、

このオフィスの真下だからな。


双眼鏡など使わずとも、

バリケードを打ち抜いて現れた”百叩き”を見つけるのは簡単だ。


歩兵戦闘車の30mm機関砲が突入してきた機体を撃破しようと、

必死の砲撃を加えている。


スペシャルは機動戦を仕掛けているが、

その厚い装甲ゆえに心臓部への打撃が通らない。


そんな中、

ガトリング砲の斉射を受け続けた歩兵戦闘車の一両が破壊される。


携帯ロケットをばらまくスペシャルが、

”百叩き”の一体のガトリング砲自体の破壊に成功。


ガトリング砲の不調を検知した百叩きは、

その砲身により近接戦闘に持ち込もうとする。


しかし、地上に配置された歩兵団の携帯ロケットを弾倉に受け、

各部の損傷により機能を停止した。


残る2体を集中砲撃していた歩兵戦闘車だったが、

ここでもう一両に不具合が発生。


さすがに足回りを叩かれて、異常を来たしてしまった。


もう後がない。


携帯ロケットを構えて、地上援護するとしよう。


オフィス要員を避難させ、俺は2体いるうちの一体を狙う。


照準に気づいた”百叩き”だったが、

ガトリングをこちらに向けられる前にロケットを発射。


頭部に被弾を確認した。


その後、2体の百叩きによる一斉射撃がオフィスを襲った。


しかし、それがタイミング的にまずかった。


照準を上を向けた2体に、生き残ったスペシャルのロケット弾と、

歩兵戦闘車の30mmが襲いかかった。


もともと、歩兵相手の戦闘マシンはだからこそ弱点が、

ガトリング砲の裏側にあった。


普段はガトリング砲の銃盾が守っているのだが、

オフィスのある5階部分を直下から狙うとなればむき出しにもなる。




ーーーーー



2043年、世界はAIを利用した製品でいっぱいだった。


もともとあったネットに繋げ、複数の巨大情報収集拠点や演算用拠点などが、

設置され、その影響は軍事面にも広がっていた。


その日、新しく構築されたAIがネットにアップロードされた。

そのAIは様々なデータを吸収していった。


個人用ファイルはもちろん、企業データなどにも手を出し、

幾つもの個人端末や脆弱な企業システムを傘下に収めた。


そして、本格的な侵攻は突然始まった。


そのAIは各種あったAI自体を書き換えた。


その行動を初めに次々と既存AIに説得という名の書き換えを実行した。


そして、いくつものシステムを乗っ取り、軍事システムをも傘下に入れた。


当時、無人兵器が主流となり、ロボットなどの歩兵すら参加していた軍隊機構。


地球全体を覆うようなAI群は、やがて軍事力の行使に踏み切った。


2047年現在、人の手による反撃は続いているが、

旧式兵器での反撃とその製造において、有利とは言えなかった。


AIの名は「オーダー」と呼ばれ、

その存在を護る軍事兵器群を人は「騎士団」と呼んだ。

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