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ヒロインの座、奪われました。  作者: 荒川きな
3章 気勢と待望
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11.その後のこと

 聖花はギルドから離れた後、辺を散々彷徨った挙げ句に意識を失った。その場に倒れ込む形でだ。

 体力の限界をとうに超えていたのだろう。


 勿論、小さな騒ぎにはなった。人気の多い大通りで突然倒れたのだから。

 が、殆どの人は見ているだけで動こうともしなかった。遠巻きに心配しつつも、その場を通り過ぎていくだけだ。


 そうして、騷ぎを聞きつけたアデルたちが駆け付けた時には、既に聖花が道の真ん中で横たわっていたのだ。衛兵たちも聖花を保護しようとしていた。


 何とか衛兵たちに事情を説明して聖花を回収した後、アデルたちはダンドール伯爵家へと直帰した。

 意識のない聖花をメイド達が部屋へと運んで行く。


 そうしている途中で、アデルに招集がかかった。ヴィンセントが執務室で待っている、と。当然、理由は明白だ。


 アデルは血の気が引くのを感じた。だがしかし、行かないという選択肢など端から存在しない。

 重い足を引きずるようにして、彼女は執務室へと向かった。


 すると、アデルは護衛騎士と偶然にも合流することになった。どうやら彼も呼び出されたらしく、向かう場所はアデルと同じである。


 執務室の扉を開ける。

 するとすぐに、正面にいるヴィンセントが2人の目に入った。顔の前で手を組んで椅子に腰掛けている。

 心なしか空気が重い。


 片割れが扉を締め終わるのを確認して、ヴィンセントが口を開いた。



「一体何があった?」


 彼は2人を一瞥して、相変わらず威厳のある声で()()言い放つ。表情をいちいち確認せずとも、相当苛立っているのが見て取れる。


 アデルは無言のまま俯き、対する護衛騎士は真っ直ぐにヴィンセントを見ている。何とも対象的な光景である。



「セイカ様が露店街で突如として離脱され、行方不明となられました。その後、…………………」


「もう良い。続きは言わずとも分かる」


 アデルの様子を勘づいたのか、護衛騎士が少し間を置いてから説明し出した。が、直ぐにヴィンセントに止められる。

 今聞いているのはお前ではない、と言わんばかりに。


 続いて、ヴィンセントの視線はアデルへと向いた。それでもアデルはじっと黙って俯いている。

 視線には気が付いているのか、小さく震え出した。



「アデル、お前はセイカの側にいた筈だが」


 そんなアデルの様子を意にも介さず、ヴィンセントは彼女に言葉の圧をかけた。

 皆まで言わずとも、彼の言いたいことは即座に理解できる。


 そのせいかアデルは顔面蒼白になり、依然として口を閉ざしている。当然だが、完全に怯えている。


 

「何を黙っておるのだ。早う話せ。

 話さねば、、、、。()()()()()()()?」


 その瞬間、アデルの目の色が変った。伏せた顔を上げ、ヴィンセントと視線を合わせる。

 ただならぬ恐怖で震えは引き、一気に声を上げた。



「申し訳ございませんでした!!!」


 初めにアデルから飛び出したのは、単なる謝罪だ。


 ヴィンセントが続きを促すように顎を小さく動かした。


「ほう?」 


「私が、私が…………、純粋に買付を楽しんでしまったのです。

 次の時には、絶対に絶対に、セイカ様から一時も目を離しません…!見逃して下さいなどは言いません。

 ですが今回だけは、どうか罰を軽くして下さい!!」


 そこまでアデルが言い切った。目をギュッと瞑ってヴィンセントの言葉を待つ。



「………生ぬるいな」


「そんな‥‥‥‥!」


 しかし、ヴィンセントから返ってきたのは無慈悲極まりない一言だ。


 情状の余地はないのか、と、アデルは今にも泣き崩れそうな顔になる。

 横でそれを聞いている護衛騎士はいたたまれない気持ちになった。同時に、何故アデルがこんなにも必死なのかが理解できなかった。



「お願いです!罰を先延ばしにして下さるだけでも構いません。挽回の機会を下さい!!」


 アデルは滅気ずに懇願を続ける。


 ヴィンセントは少し考える仕草をした。損得勘定をしている、そんな所だ。

 勿論、アデルの懇願など今は聞いちゃいない。右から左へと流れていく。



「………良いだろう。が、次はない」


 暫く考えた後に、ヴィンセントが言い放つ。少しの間は何とか救われたのだ。


 アデルは安堵と不安が混じり合った溜息を漏らした。



 『面白い』『今後の展開も読みたい』などと

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