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ヒロインの座、奪われました。  作者: 荒川きな
2章 孤独と希望
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9.逡巡と希望

(どうしよう・・・・・。私は、どうしたらいいの‥‥‥)


 アーノルドが聖花の元を去って数時間が経過した。


 彼女は長い間、その場に膝をついて佇んでいた。

 石で出来た床は冷ややかでザラッとしている。



(転生して、‥‥‥正直、初めは混乱してた。

周りが何かも全然分からなくて。

でも、今は・・・・・・。)


 アーノルドと会うまで、聖花は何もかもがどうでも良くなっていた。


 彼女を慈しんでくれた父親(ダンドール)母親ルアンナ

 手を焼いて可愛がってくれた(フィリーネ)

 彼女を少し気に掛けている(ギルガルド)

 そして、ここで初めて出来た温かい友人たち‥‥‥。


 短い間ではあったものの、彼らは聖花に数え切れない程の思い出を与えてくれた。

 元々打たれ弱かった彼女も、彼らのお陰で自身の致命的な弱点を忘れることができた。 


 けれど、そんな彼らはここにはいない。


 まさかこんなことになるとは、聖花は想像さえしなかった。

 『魂の入れ代わり』が起こるなど、一体誰が予想できただろうか。


 故意にも引き起こされた事件。

 ダンドール達から向けられた敵意の籠もった眼差しや殺意。


 余りのショックに耐えきれず、友人や家族、自分の気持ちに至るまで、全てを投げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。


 聖花は、アーノルドの言葉を思い出す。

 目の前に垂らされた一縷の希望。


 何者かに居場所を奪われ、傷つけられて、すっかり心がズタボロになっていた彼女には、彼の囁きが不思議と胸の奥底に突き刺さったのだ。

 それは何故だか、彼女を救ってくれるようにさえ感じた。


 息を潜めるように、呼吸を整える。

 聖花は段々と気持ちが安定していくのを感じた。


 そして、思考を巡らせる。

 


(何故、こんなことになったのか?

 ‥‥そんなこと考えても無駄、ね・・・・。


 そう言えば、本来の彼女(マリアンナ)は何処に行ってしまったのかしら。

 もし私と入れ替わっているのだとしたら、今頃彼女は、私の代わりに事故で亡くなっている‥‥‥?他のところにいるのかも。


 『カナデ』、確か(アーノルド)はそう言っていた。

 どこか引っ掛かる名前。彼女は一体何者?

 彼は、街で知り合ったと言っていたし、彼女の身分も知らないようだから其処まで深い関係じゃないのかも。


・・彼がどうして私を助けようとするのかが理解できない。

 でも、たとえ何か彼に考えがあったとしても・・・、


 ‥‥‥‥私は、私のことをする)


 彼女は、頭の中で一通り考えを整理する。

 すっかり静まり返った牢の中、ゆっくりと顔を上げた。


 そんな彼女の瞳は生気を取り戻したように輝いている。

 決心が着いたのである。


 彼女は考えた。


 外に出たらまた、別の人間としてやり直せるのかもしれない。

 外に出たら、『カナデ』と会って決着がつけられるかもしれない。 

 外に出たら、元に戻る方法が見つかるかもしれない。

 外に出たら、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 もしそうであるなら、先ずはここから脱出しなければならない。

 そして、彼女の欠点も克服する必要がある。


 一見、強くなったように見える。

 しかし今の彼女は、希望と言う名の原動力に突き動かされているに過ぎない。

 根本的な性質自体は何ら変わっていないのだ。


 ただ脱出出来ただけにしても、直ぐに()()にまた何時か捕われてしまうことだろう。

 そんな状態で、アーノルドが用意した『居場所』でも上手くやっていけるかどうか。


 あの事件をキッパリと切り捨てる程の衝動や気持ちを生み出すようなモノが必要になってくる。


 

「ーーーーーー」


「‥?」


 丁度その時、何かの気配が彼女のすぐ側で感じられた。

 聖花は思わず、その()()を探すかのように、辺りをキョロキョロと見渡した。


 しかし、誰もいない。



(誰か、‥‥‥いた?)


 懐かしいような、どこか不思議な雰囲気を彼女は感じ取った。


 他の人が先程まで、すぐ近くで見ていた。

 普通は有り得ないことであるが、聖花は直感的にそう感じた。

 しかも、聖花が入っている牢屋の中から。

 

 その時、彼女は古びた鏡に目が行った。

 その鏡の辺りには薄暗い靄のようなものがほんの一瞬だけ掛かっているように見えた。



(あ・・・・・、鏡が‥‥)


 聖花は鏡の中をチラ、と視線が吸い込まれるかのように見た。



「おにい、さま・・・・・?」


 下からな上に薄暗い空間であったから、全ては見えなかったし、其れがはっきりと誰かは彼女には分からなかった。

 が、何故か考える前に彼女の口からは、()()告げていた。


 気配が消えてしまったのか、それとも彼女の幻影か。

 その言葉に対する返事は勿論なく、彼女の台詞は虚空の中に虚しく消え去った。


 それでも彼女は、ギルガルドに再び会って、このことを話したい、そう強く思った。


 もう一つ、彼女が思い出したことがある。


 ()()()()の時、彼はその場に居なかった。

 彼の性格のこともあるだろう。

 しかしもしかしたら、何かを知っているのかもしれない。

 

 聖花はギルガルドのことを思い、一種の期待を胸に抱いた。




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