6.夜間調査
真剣十代!
噂の鬼とやらは夜の公園内にて目撃されていたそうだ。
月のか細い光の下、薄らと影を作り額に角を生やした鬼が池の畔で佇んでいた。目撃者があっと驚いて声を上げると、鬼は風のように公園内を走り抜けどこかへと去っていったのだと言う。
「なので鬼を確認するためには我々も夜間の公園へと赴かねばならないという訳だ。ついでに目撃者に会えたら都合がいいな」
翌日日暮れ過ぎ。先輩の要請に応えることとなった俺たち四人はまたも明ヶ池自然公園へと集まっていた。目的は先輩が語った通り、直接鬼を目撃せんがためだ。
現在公園出入り口前にて待機中。太陽は西の果てに消えて赤い光線が僅かに空に残っている程度、空の大部分はもう夜空と言って差し支えないほど暗く星だって瞬いている。
すっかりと闇が自分たちを包み込む中、点灯した街灯の落とす真っ白な光線が歩道と、そして公園内からもぽつぽつと見えた。
「予定時刻は二十時。それまで公園内に待機して鬼らしきものが現れないか観察する。尚、調査方法の関係から補導される可能性も高いために、待機場所は林の中に限定し各自周囲からの視線には充分注意して調査に臨んで欲しい」
続けて調査内容についても先輩は説明をするが、聞かされた話の酷さに思わず閉口してしまう。完全に不審者ムーブですけどそれ。
「……他にやりようってないんですか?」
「カメラ設置等は駒津先生にも相談してみたが芳しいお答えは頂けなかった。日中であればまだ許可が下りる可能性はあるのだが、やはり夜間ともなれば難しいらしいのだ。個人がスマホなどで撮影することは問題ないから、君たちにも手伝ってもらわなければならなくなった」
呆れた様子で訊ねる美樹本にも先輩の返答は揺るがない。許可下りないならそこで諦めろよと思うのは根性がない返答なのだろうか。少なくとも黒に近いグレーな領域を突くのは拙いと思うんだけど。
譲らない先輩の決意によってそのまま作戦会議に移行する。先輩の考えは池を中心に四方に待機し動画撮影を行うというもの。丁度池の四方向には隠れ易そうな林が広がっている。夜ともなればまず人に見付からないだろうとそんな考えであるらしい。
「鬼が現れたのは池の畔。池を中心に撮影を行えば姿を捉えることも可能ではと考える。あと一人は公園の出入り口を見張り、それらしいものが通らないかの確認と一般人並びに警官などが立ち寄った際には瞬時に連絡を回すことを主任務としたい」
準備したデジカメを取り出しながら語られる内容にドン引いてしまっても俺は悪くないと思う。根回しが完全に犯罪のそれだぞ。盗撮か単なる撮影かのラインも正直微妙なために今直ぐ回れ右して帰りたい。
話し合いの結果、男四人が池の撮影を担当し蘆屋先輩が見張りを担当することとなった。もしもの時のためにと連絡先も交換した。美人との連絡先交換なのにこんなにも心躍らないのも珍しいことだろう。
「本日は先駆けであるから上手く調査が進まなくても気にしなくていいぞ。もしもの場合にはまず己の身の安全を優先して欲しい。鬼と出会しても決して深追いはせず、身を隠してやり過ごすことを優先してくれ。相手は『鬼』だ、その正体がどんなものであれ警戒するに越して不足はないだろう」
最後に真剣な顔でそう釘を刺された。鬼の正体も知りたくはあるが、俺たちの安全を優先して考えてくれてはいるようだな。
こういった配慮があるからこそ、先輩を程度の酷いオカルト趣味の人間だと断じて交流を完全に絶つ気にもなれないんだよなぁ。
「追わないんですか? 正体は知りたいでしょうに」
「真相以上に君たちの身の安全の方が重要だよ。怪我など負わせられないからね」
「嵩原、変に煽るのは止めて。ひょっとしたら変質者の可能性だってあるんだよ。深追いなんてしたらそれこそ警察案件になっちゃうよ」
「ああ、そのパターンもあるか。単なる人間の狂気って言うなら確かにこちらの興味の向く対象でもないしねぇ」
興味ないと言わんばかりに嵩原はすっと横を向く。不審者かもしれない鬼の正体を探るために、夜間の公園に法への抵触も疑われる方策によって張り込みを行う俺らという図式か。
あれ? 俺らもある種狂気染みていると言われてもおかしくない状況なんじゃないの、これ? 駄目だ、冷静に立ち返るとちょっと死にたくなってくる。今は出来るだけ心を無にして事務的に事に当たろう。
「……よし。それでは調査開始だ。皆、頼んだぞ」
公園内の物影に隠れて作戦会議をすること十数分。一部赤色に染まっていた空は完全な夜空へと変わり、薄く白く光る半分の月もその存在感を増して黒い空に浮かんでいる。
今日はよく晴れているから月光も真っ直ぐ落ちてきているな。薄らと白くぼやけるようにして夜の中に浮き上がる木々を遠巻きにし、先輩が開始の合図を告げた。
人目に付かないようにするためには迅速な行動が求められる。誰も一言も喋らずにさっと物影から出るなり瞬時に待機場所へ向かう。
先輩は出入り口の監視、俺たち男四人は動画撮影を担当することになった。先輩とは早々に別れて、ぽつぽつとした街灯が灯るだけの薄暗い公園内を、木々の影に身を潜めながら素早く移動する。
確認した限りでは人影は見えない。夜の公園なんて好き好んで立ち寄る人間もいないだろうと、ブーメランとして刺さりそうなことを考えつつも足は黙って動かす。
池を囲む林地帯に辿り着けば一先ず安心だ。ここからは四手に別れて池の四方から動画を回すことになる。俺と美樹本は池手前側、嵩原と桧山は奥側に待機する。二人とも一旦お別れだ。
「それじゃ、バレないよう気を付けてね。お化けと思われるか、不審者と思われるかは五分五分な賭けだから、まず見付からないようにした方が手間はないよ」
「それはそっちにも言えることだろうが。そっちも充分気を付けろよ」
別れ際に嵩原からからかい半分の忠告を寄越されるのに悪態で返す。「まぁ、それも俺たちだけに当て嵌まることじゃないけど」なんて意味深な台詞を残して嵩原と桧山は更に先へと木立の間を縫うように進んでいった。
木々の影の中に溶け込むように遠ざかっていく背中を黙って見送る。正確には二つ並ぶ、その片方の背中だが。
今日こうして夜間の検証に踏み切ったのだが、ここに来る間も桧山はずっと沈黙を保ったままだった。普段なら積極的に検証内容やら調査対象への感想など自由に己の意見を口にしていただろうに、昨日今日と検証している最中は本当にあの桧山かと疑問に感じるほどに口数が少なかった。
気の所為かとは思っていた。偶々元気がないのかと。でもそんなどこか逃避した考えは去り際の桧山の顔を見て間違いだったと確信した。気付かれないよう窺い見たその顔は、何かに耐えるように酷く不安げな表情を浮かべていた。
自分の気持ちを発露させるでもなく、ただ黙って耐え忍んでいる様子は短い付き合いながらも見慣れない。それこそ夏休みの時に見たくらいだ。
まだ引き摺ってるのか? でももう吹っ切れてはいるはずなのに。
「ねぇ、永野……」
じっともう見えない背中を追っていれば、隣から極小さな囁きでもって話し掛けられた。見れば美樹本が困ったといった顔でこちらを見ている。
「なんだ? どうかしたか?」
「あのさ、桧山のことなんだけど……」
気まずげに切り出される。桧山の背中を目で追っていたのがバレたか。
「ああ、うん」
「永野から見てもさ、桧山、おかしく見える?」
確かめるように慎重な口調で訊ねられる。何を確認したいのか、恐らくは悩みを抱えているだろうことを指しているとは思うけど、でもそんな改めて訊ねてくるのも変な気がする。とっくに桧山の調子の変化は共有していたはずだし。
「それはどんな意味でだ?」
「えっと、思い悩んでいる、感じする?」
問い返したらますます要領の得ない答えが返ってきた。そんなのは見れば分かるだろうに。
不審な目を向けたことを察知したか、おどおどと挙動不審気味になりながらも美樹本は本音を漸く口にした。
「……昨日の会長の話はさ、桧山のことを言いたかったのかなって、思って」
ぽそりと落とされた囁きに瞬時に昨日の記憶が蘇る。それと同時に憂いたような先輩の顔も。
「昨日……」
口に出しながら先輩の話を思い出す。相談出来る相手に関する先輩の提言。素直に胸襟を開ける相手がいることの幸せと、それと同時に自身も誰かにとってのそんな相手であるべきだと言う論調。
その時にはあまりしっくりとは来なかったが、でも今、苦しげな表情を浮かべる桧山を脳裏に描けば確かにそうかもなとすとんと納得がいった。
「……かもな」
だから素直に肯定する。そして同時に桧山のことも思い浮かべた。あいつから相談と言うか、本当に困った時に頼りにされたことって今まであっただろうか?
「……よく考えたらさ、桧山から相談ってあんまりされたことないんだよね。そりゃ、テストどうしようとか、宿題どうしようとか、直近でまずいものなんかはよくヘルプされたりしてたんだけど、でも本当に悩んでるって話は桧山からされたこと、なかったなって」
美樹本も似たような思考に至ったらしい。ぽそぽそ小さく胸の内を明かされる。
先輩に言われてこれまでのことでも思い返したのか、自分の中の記憶を整理するように語る美樹本からはどこか途方に暮れた様子が感じられた。
「……会長は、もっと気に掛けてやれって言いたかったのかな?」
こちらを見ずに美樹本はそう溢す。視線は地面に落ちていた。暗くて何も見えないだろう地面をじっと逸らさずに見つめる姿は、怒られるのを待つ子供のようにも見えた。
桧山は思い悩んでいる様子だった。暗い表情でいることがよく見られ、会話もぎこちなく途切れることだってあった。何よりも最近は元気がない。
ここの所見受けられる桧山の様子を挙げていけば、これは分かり易く桧山に何かがあったことを示唆しているとは思えた。それこそ、簡単には口には出せない、重大な悩みでも抱え込んでいる可能性があると推測するのは簡単だ。
気付いていて、何もしない。先輩にはそう見えたのだろうか。昨日の言い淀んでいた桧山の態度からしても様子のおかしさに気付くのは充分であったと思う。
なのに、俺たちの態度はそう変わらない。客観的な視点からは、まるで俺たちが桧山を全く気にしてないようにも見えたのかもな。だって桧山は俺たちに何も言おうとしなかった。寄り添えてないと、そんな判定がなされたって不思議ではなかったのかもと今なら思えた。
先輩は誰かから胸襟を開いてもらえる存在であれと言った。桧山から悩みを打ち明けられずにいる俺たちへの発破ないしは糾弾だったりするのだろうか。
でも、それって確かに自分も精進はするべきだろうけど、相手も覚悟を相応に問われることなんじゃないか?
結局心を開くかどうかは本人が決めることだろう。どれだけ大丈夫、自分は味方だと繰り返し主張した所で、そう言葉を掛けられた当人が信じて行動しないことにはどうにもならない。言葉を掛けられた方も相手を信じる覚悟が必要だと思う。
一方だけに望むことではない、なんて主張は逃げと受け止められるだろうか。特に今は実際に悩んでいるらしい桧山もいることだし。
個人の主張など無視してまずは寄り添うのが正解だと大多数の人間は答えるかもしれないな。それもその通りと思う自分も確かに居はするが。
それが、無理矢理に誰かの心に踏み入るような行動だとしても、それでも聞き出すことが正解なのだろうか? 本人の気持ちを無視して心情を詳らかにし、でも可哀相にと寄り添えたらそれでいいのか?
先輩の求める、心を開いてもらえる人間ってのはそんな強引な手段を是とする人間を指していたりするのだろうか。そんなの、俺は嫌なんだがな。
考えても分からない。こうも誰かの心情に踏み込むような真似なんてしてこなかったからなんとも言えない。俺みたいなコミュ障患ってるような人間が正しい友人との距離感なんて探るのがそもそも間違いな気はする。
まぁ、いい。今は人間的な正しさなんて求めちゃいないんだ。極身近な問題へと向き合えばそれで充分なはずだ。
「……桧山、元気ないままだしな。昨日もぎこちない所を見せたから、それで気にされたのかもな」
「うん……」
「先輩からはもどかしく見えたのかもな。友だちならもっと踏み込めよって。桧山が言い淀んで、それで俺たちもそこで退いただろ。もっと腹割って話して欲しかったのかもな。だから心を開いて云々なんて説教染みたことも言ったのかもな」
昨日の言葉の真意はお節介だったのではと思える。立て板に水と論理を整然と並べて論破も出来るだろう先輩のことだ、本気で非難するつもりならもっと直接的に俺たちを糾弾していたはずだ。
それをしないと言うことは俺たち自身に考えさせる思惑があったのだと思う。もしくは予め釘を刺しておきたかったか。
「先輩も気になってるからつい口を挟んだんだと思う。別に俺たちを不甲斐ないとかなっちゃいないとか責めたい訳じゃなくて、多分大丈夫か?って遠回しに聞いてきたんじゃないか? あの人だって後輩の人間関係は気にするだろ。特に唯一の部員と一番仲の良い相手ならな」
先輩は情には厚い方だろう。面倒見も良くて後輩への配慮だって欠かさない。だから今の桧山のことも気になってるのかもな。ついつい説教のような忠告のような言葉が飛び出るくらいには。
「そう、なのかな? でも、桧山何も言ってくれないよ? 僕にだって悩みを打ち明けてくれないんだよ? それって僕にも遠慮というか、心閉ざしてるからなんじゃ……」
しゅんと項垂れてしまう。しまった、一番仲の良いとか地雷だったか。
美樹本だって桧山と一番付き合い長いって自負はあるはずだ。それなのに一向に何も言ってもらえないってそりゃ気になるよな。仲が良いと思ってるなら尚更、開けられた距離は気に掛かりもするだろう。
「あー……、非難とか、つまりはお前自身、自分のこと不甲斐ないって思ったからそう感じたのか?」
問えばこくりと頷かれる。うん、凹んでる。これあれか、美樹本的には反抗期迎えられた気分なんだろうか。いや茶化す気は全くないけど、余程秘密にされてるのが堪えたっぽい?
仲の良い友だちに距離置かれてショックなんだろうな。その寂しさ、悲しさはまぁ、理解出来ないこともない。少々利己的な思考な気もするが、だが同時に自分の力不足だって美樹本は嘆いてる。桧山の力になりたいって気持ちが先にあることの証明だな。今は、それが上手く桧山に刺さらないで空回りしているだけで、だ。
友だち想いだよ、美樹本は本当に。言葉濁されることに自分に問題あるって真っ直ぐに思えるんだもんな。俺とは違う。
「……別に、嫌いだからとか親しくないからって理由だけで悩みを口にしない訳でもないだろ。桧山には桧山で事情があんだろ。お前にだって言い難い類の悩みとかさ」
「そう……、なのかな?」
「お前だってなんでも桧山に胸の内とか明かしてる訳じゃないだろ? 秘密の一つや二つ抱えてたりするもんだ。自分の全てを明かす奴ってそっちの方が珍しいと俺は思うね」
「それは、それはまた別の話じゃん。本当に辛い時は誰かに助けを求めたくなるものだよ。自分だけで抱えていこうなんて、そんなの思えない……」
「そうでもないだろ」
断言すれば「え?」と美樹本が顔上げた。あ、ちょっと言葉に力入ってたか? ポカンとこちらを見上げてくる顔を見下ろして慌てて取り繕う。
「つまりは、だ。桧山は桧山で言い難い事情があるってことだろ。そう開けっ広げで相談するには躊躇うような理由とか。あいつだって秘密にしたいことの一つや二つはあるだろうし」
「……あるのかな? 桧山だよ?」
「あいつのことなんだと思ってるんだお前。……まぁ、それは置いといて、お前相談されないと力になるつもりもないのか?」
酷い評価を口にする美樹本にツッコミつつも訊ねてみたら、だ。問われた美樹本は大きく目を見開いた。
「別によ、相談されたとかされてないとか、それは大して意味はない気はするんだよな。詰まる所は困ってるなら力を貸すかどうか。大切なのは寄り添う覚悟とかそんなんな気がする」
相談されたから力を貸す。相談されなかったから何も手伝わない。お役所はそんな感じだろうけど、でも友だち関係ってそんなドライなもんじゃないと思うんだよな。
求められたら応えようなんてそんな。受け身なだけが助ける側の体勢でもないだろ。少なくとも桧山は俺が何が言うでもなく助けになればと駆け付けたことがあった。日暮れ間近の帰り道で。
「心開いた、開いてもらえたってのも大切ではあるだろうけど、周りの奴らが本当に気にしなきゃならないことって困った時に直ぐ駆け付けることなんじゃないか? 傍に寄るくらい、事前相談がなくたってやれるだろ」
ただ寄り添ってもらえるだけでも力になることはままある。一人じゃないと思えることが救いになることもある。誰かの力になるって本当些細なことで達成されたりするもんじゃないか? 悩みを丸っと解決させるってのだけが助けではないと、俺は思うな。
「もし桧山が退っ引きならない状況に追い込まれたりしたら、お前助けずに放置するか?」
「……ううん。助けるよ。助けるに決まってる。僕は桧山には何度も助けられてるんだ。自分だけ何もしないなんてそんな薄情なことしない」
「ならその覚悟だけでも上等だろ。むしろなんの話も通してないのに助けると確約するなんて、桧山は頼もしい友だち持ってるよ」
茶化しつつそれでいいと話を締める。美樹本が過保護なのはとっくの昔に知ってる。助けになればと動く所だって何度も見てきた。だから美樹本はそれでいいと思う。動くべきと思える所でちゃんと動けるならそれで充分だろ。
話は終わりだと顔を上げる。のんびり話し込んでいたが今は噂の調査の最中だ。嵩原たちの移動時間もあるから出遅れる、てことはないだろうけどそんな悠長にもしてられない。
桧山のことは継続して考えていかなきゃならないが、一先ず今気にするべきは『鬼』のことだ。
「大分時間を掛けたな。直ぐにでも配置に付かないと。美樹本も急げ。先輩にどやされるぞ」
「あ……、う、うん!」
急かせば美樹本も慌てて意識を切り換える。本番はここからだ。鬼なんてもう幻想とかそんな存在でしかないものが本当に現代にいるのか。これから盗撮で以てそれを確かめる。補導される危険も覚悟して!
本当何やってるんだろ、なんで世間一般には非行と後ろ指指されるような真似までして調査なんてしなくちゃいかんのか。考え出すとどんどんやる気が目減りしていく。あまり現状は認識しない方向で頑張ろ。
「よ、よし、それじゃ早く配置に付こう」
美樹本の号令によって俺たちも北と南で別れた。池を望めるベストポジション。木々の影に隠れながらこれから見付け出さないと。
思考はさっきまでの青春真っ盛りな語り合いから、未知の調査へとしっかりと移行はされてる。冷静に振り返れば大分小っ恥ずかしいこと語ってたような気がしてきた。今日の夜辺り布団でゴロンゴロンするかもしれない。
慣れないことはするもんじゃない。心の底からそう思う。
まぁ、いろいろと明け透けに口にしたりもしてきたが。美樹本と話し合って自覚したことは一つ。
俺はきっと傍観者的立ち位置からは動けない。そんな自身への諦めだった。




