ep.1魔法が生まれたら都市が壊れた。
『もしも』世界に魔法が生まれたら、本当に素敵な世の中になると思う?
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袋菓子が床に散らばり、蛍光灯も所々割れたコンビニから青年が出てくる。と言っても、瓦礫で潰れた自動ドアではなくその横の割れた窓ガラスからである。
さらりとした猫っ毛の金髪で、色の暗いパーカーを着ている。身長は170無いくらいだろうか。見た目こそあどけなさを感じるものの、その顔つきは街頭アンケートで100人中90人が『自分はこの人に嫌われていると感じる』と回答するような偏屈っぷりである。
「ニコ、なんか見つけたー?」
外から青年 ― ニコを呼ぶ声がする。そう呼びかけられた途端ニコの仏頂面が少し解れたように見えた。
「ん、こんなのあったよ。」
たった今パクってきたであろうカップ麺を掲げて見せ、そのまま投げる。
「うわっ、ちょ、っと、もう投げないでよ、、、」
一度受け止めそびれてそのままカップ麺が地面に到達する直前、手を伸ばしてキャッチする。
「ごめん、ごめんアイド、お前なら取れるかと思って?」
ニコが少し茶化すように笑ったのを見て、アイドが不機嫌そうに、毛先がはねた濡れ羽色の髪をカップ麺を持っていない方の手で弄る。
美人と呼ぶのが適切であろう顔がほっそりとした身体に乗っかっている。ショートヘアと170半ばの身長のおかげで辛うじて男であると直感で理解できる。
「ところでニコ、このカップ麺賞味期限いつ?」
「、、、2026 . 9. 18って書いてあるわ。」
「50年前じゃんおなか壊しちゃうよ」
「もういいっていつものノリ!どうせ食うもん無いんだから我慢しなさい、お坊ちゃま!」
呆れて投げやりに応えるニコを見て、何が嬉しいのか目を細めて口角を上げる。
「はー、、、て言ってもお湯が無ぇな。仕方ない基地戻ってから食うか。」
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大通りの方角から伸びた咆哮が響いたのを聞いて、裏路地に進む。鼠に混じって地面を這うのは、角が伸びた小動物。蝿の代わりに地面を飛ぶのは四肢が退化した発光体だ。
80年前に突如、科学的に解明不可能な未知の元素が地上に発生してから、生命はその元素無しでは生存不可能になった。個体差があるものの全ての生き物は血管やら維管束やらに当たり前にその元素を流すようになった。
さらに、この元素の発生と並行して、生物全体の一部個体に突然変異が確認される。より多くの魔素を保持するため、身体の形状が変化したのである。
生存に不可欠な量を超えた分は、いわゆる『魔法』のような形で出力することができると発見された。この性質から、当該元素は『魔素』と定義される。
人間たちは魔法を使えるようになった。人間がかねてより空想していた幻獣やモンスターが実在するようになった。
最初こそ世界は混乱と歓喜に『夢にまで見た世界だ』と宣った。
その世界の歓喜は実際のところ10年も持たなかったのだが。




