#7
アーチャーは、後頭部に冷たく固い銃口が当たるのを感じた。そして、ゆっくりとウィングストンへ言った。
「ウィングストン。お前もわかっているはずだ。こうしているうちにも、南アフリカ連合はこちらへ向かってきている」
ウィングストンは、怒りか恐怖か震えた声で答えた。
「いや、あんたは何もわかっちゃいない。13年前から、俺たちは何も進んじゃいないんだ」
遅れをとった護衛部隊だが、その銃口はすでに目標を捉えていた。護衛隊長が、アーチャーへと目配せし、反撃の機会を窺っている。
アーチャーは一度、護衛隊長へ目を向けると、銃口を下げさせた。そして、無線のスイッチを押すと、命令を下した。
「メガ・チャーチル。規定通り起動せよ」
ウィングストンの怒声が響く。
「おい、何をやってる。死にたいのか」
アーチャーは、冷淡に、押し付けるように答えた。
「さぁ、これで私を殺すほかなくなったな。どうする」
ウィングストンは、脅迫が効かないとわかると指揮系統の装置をひたすらに撃ち始めた。いくつもの銃弾が発射され、その一つが、アーチャーの頬を掠めた。
銃の弾を撃ち尽くす寸前で、ウィングストンは、もう一丁を取り出しまたアーチャーの頭へと押しつけ、もう一度アーチャーへと声を掛ける。
「あんたもわかっているはずだ。俺たちに残された道は、二つに一つ。メガ・チャーチルを起動させ、よければ終身刑。メガ・チャーチルを起動せず、このまま南アフリカ連合にやられる。助かる道なんてないんだ。だったら俺は、後者を選ぶ」
アーチャーは、天を見上げ、深く息を吸うと答えた。
「だが、国民は助かる」
心の片隅で、ウィングストンはその意図の全てを理解していた。だが、失った107人の顔を思い出すたびに、そのような考えは追いやられていった。
銃を持つウィングストンの手は、少しばかり震えていた。ウィングストンは、その震えを自分ではなく、107人分の恐怖や失意なのだと思った。
ウィングストンの構えた銃が、小石を散らすような音をたて、揺れる。その揺らぎをアーチャーは逃さない。
アーチャーは、デスクチェアで勢いよく回転すると、銃を持つウィングストンの腕を左手で押さえた。そのまま床に押し倒すと、右手に握った銃を向け、呟いた。
「すまない」
アーチャーは、銃底でウィングストンを殴りつけ、気絶させた。
メガチャーチル起動まで、あと5分




