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秘匿された南アフリカのどこか
ダリア・シュミットは黒色のボールチェアにもたれながら、欧州に轟く自分達の名に歓喜していた。横で鉄骨が背骨に通っているように立つ、側近のウングが耳元で囁く。
「ブレスト陥落。このまま北上します。今のところの補給線も、滞りなく。いいですね。ボス」
ダリアは、機械的な笑みを浮かべると、わかってはいたが、ボソリとつぶやいた。
「NATTO、それに連合国は」
ウングも笑みを浮かべ、用意していた言葉を差し出した。
「スポンサーがついておりますから」
ダリアは、空中に映し出された地図を見てつぶやく。
「マルセイユ、ダンケルク。そこで一度兵を止めろ」
ウングは、敢えて一度聞き直した。
「保険ですか」
ダリアは、ウングの顔を一瞥する。
「ヴェスプッチに倣うのだ」
ウングは、噛み砕いた。
「次は、我々が開拓者になるということですね」
ウングは、その指令を聞き歩き出した。ウングにとって、歩くという行為は無駄としか思えなかった。ウングに渡されたものは、人工的な知能と義体で、はなから人間ではないからだ。しかし、ウングは歩き出した。それは、彼が人間として扱われ、歩くことこそが、彼が人であることを示す世界へのメッセージだったからだ。
同時刻 トリカスタン原子力地区
打ち壊された柵の中で、機械化兵たちが黙々と3Dプリンターを組み立てている。
その10m後ろには、ゲルにも似た、樹脂で作られたテントがあった。1人の男がその中に入り告げる。
「パルチ中尉、全DEジャマー設営完了しました」
テントの明かりに照らされ、黙々と資料を読み続けるパルチ中尉は、顔も上げずに言う。
「そうか、そしたら生産工場建設へ移行だ」
男は続けて聞いた。
「民間人、捕虜はどうしますか」
パルチ中尉はようやく顔を上げ言う。
「人権だよ。トラックが出来次第、後続へ。ジブラルタルへの片道切符だ」
男がテントを出るのをみると、パルチ中尉は、司令へと通信した。
「こちらパルチ中尉。マルセイユはどうなってる」
指令は機械音声で答えた。
「マルセイユ、無事攻略。現在は、鉄道を掌握し、西部へ向け出発」
パルチ中尉は、そのまま通信を切ると、テントの外へ出た。辺りは暗く、原子力発電所の明かりだけが闇夜で点滅している。その闇に紛れながら、千以上の人影が蠢く。パルチ中尉は首を鳴らすと、人工眼球の暗視機能を点けた。機械化兵とそれによく似たヒューマノイドロボットが、黙々と機材を組み立てている。連絡の多くを体内通信へ切り替えているから音も出ない。
パルチ中尉は作業する部下たちを眺め耽る。DEジャマ―で、自爆ドローンは対策済み。後はこのまま、原子力発電所の一帯を生産拠点へと作り変える。核汚染物質も満載だ、容易に攻撃もできまい。




