14.ラストシーンのために人物設定を変更しました、ほか(27~31話)
【第27話「お知らせ」を書いてみました】
【書いても書いても……】
第27話から最終エピソードです。別の宇宙人がテーマパークに攻めてきて、遂にはショウ一行と対面し、ショウは自分がゲーム遊びに巻き込まれていたことを知る、という程度のプロットを元に、書いていきました。
筆は進みました。しかし書いても書いても、話は進みません。当初から前後2話構成、もしかしたら3話構成になるかなとは思っていたのですが、5話構成になるとは思ってもいませんでした。ざっくり列挙しても、襲撃者サイド、プレイヤーの月面サイド、地上サイド、ショウ一行サイドと、4つの場面が同時に進行していきます。頭の中に浮かぶ情景を片っ端からキーボードに叩き込んでも追いつきません。第31話まで1週間で2万文字以上、マシンガンを連射するような感覚で書きました。
なお第27話のタイトルは当初、「襲撃」としていました。しかしこれでは第26話後半のネタバレになることに気づき、投稿直前で「お知らせ」に変更しました。一挙に緊迫感のない脱力系のタイトルになりましたが、ほかを思いつきませんでした。
【SFは怖いです】
以前スランプ脱却のために書いた最終エピソードの冒頭は第26話の終盤に移動させ、第27話は静止衛星軌道の襲撃から始まります。当初この軌道上の敵宇宙船から上陸部隊を発進させていたのですが、添削時に念の為調べてみて、静止衛星軌道は地表からずいぶん距離があることを知ります。そこで大気圏近くに敵宇宙船をもう1隻追加し、上陸部隊はそこから発進させることに。
おかしな点は他にもあるのでしょうが。超科学文明といえど、SFっぽい世界はちょっと油断するとらしさを失うので、書いていて怖いです。
【敵宇宙人にキャラ語尾を付けました】
大気圏外から地上へ強襲するのは、ヘビ型宇宙人にしました。ネットでG(加速度)に強い生物を調べたら、ヘビが上がっていたのが理由です。私はヘビは苦手なのですが、その特徴をキャラの表現に活かそうと動画を頑張って何本も見て、舌をチロチロと出している様子を採用することに。そうしてヘビ型宇宙人の台詞の語尾には、「シャアア」を付けることにしました。
敵宇宙人にも襲撃する理由がそれなりにあって、怖い印象を持たせたくなく、むしろ愛着を持ってほしいくらいだったからです。コミカルでギャグっぽいですが、ちょうど良いと思っています。
【余談:シダサの由来】
第27話では、シダサという民間警備団体が登場します。このネーミングの由来は、霊長類最強で国民栄誉賞を受賞された女性です。ちょうどこの体験談を書いているときに引退を表明されました。お疲れさまでした。
【文字は読めるか?】
敵宇宙人が軌道エレベーターの光学迷彩を利用して文字を映し出すのですが、これ、地上から読めるような大きさになるのでしょうか? 当初、エレベーターの基部の人工島は沖に10キロメートル離れていることにしていたのですが、5キロメートルに近づけておきました。
それでも苦しい気がしますが、光学迷彩の出力を上げてエレベーター周辺の広範囲に映像を投影することが可能なのでしょう。「FWO」ではこのような桁外れの存在や行為が、いくつか話に現れます。こういう想像し難いものを想像して文章に表すのは、どれも骨が折れました。
【第28話「集い、逢う」を書いてみました】
【文明関与類型の列挙に苦しみました】
第28話で、銀河連邦が新たに加入した文明にどのように関与するのか、その類型を列挙しています。保護主義、干渉主義、自然主義…… こういうところにそれらしい主義を列挙できると話のもっともらしさが上がると思うのですが、如何せん私にはそんな教養がありません。史実やゲームでの政治形態などを調べて、なんとか3つの主義を並べました。
執筆していてずっと感じていたことですが、不明点をいちいち調べていると時間がどんどん過ぎていきます。宇宙の大きさ、緯度と季節と日没時刻、とりもち、乗馬の仕方、船室の種類、香水、漁法、陸路での出入国手続き、虹の見える方角、蚊の生態、衛星の高度、警備会社の待機体制、などなど、「FWO」を書くにあたっても様々なことを調べました。小説を書いている方には当たり前のことなのでしょうが、いろいろな知識を蓄えておかないと小説を書くのは辛いなあと思います。
【タイトルについて】
第28話のタイトルは当初、「遭遇」としていました。何度も似た話で恐縮ですが、これも投稿直前に調べてみると、「偶然に」会うという意味でした。半ば必然的に会う話なので、内容にそぐいません。よく使われるカッコいい熟語、「邂逅」も同様。
「会うべくして会う」というニュアンスの熟語を見つけられず、「集い、逢う」としました。
【第29話「告白」を書いてみました】
【敵宇宙人の小芝居を複雑にしすぎました】
敵宇宙人のうち3人がショウ一行と対面します。敵宇宙人については階級を誤認させる二重の小芝居をさせました。その内容は次のようなもの。
本来の指揮系統はA>B>C。それを表向きはB>A>Cと振る舞いながら、実はC>B>Aであるかのように小芝居をしている。
この設定によって何か面白いエピソードを作れるのではないかと仕掛けたのですが、最終エピソードは盛りだくさんになりすぎて、使えずに終わってしまいました。大物宇宙人の伏線を扱いきれなかったのと同様です。
最終エピソードは盛り上げようと気負いすぎて、空回りしているところがあります。こういうものは推敲でバッサリ削除すべきなのでしょうが、ある程度の字数を割いた文章を削ることはなかなかできませんでした。
【第30話「地球」を書いてみました】
【そもそも異言語世界で「言葉」をネタにするのは……】
第30話では、ショウが「『地球』から来た」と説明して、宇宙人科学者に「母星を『一般名詞』で呼んでいるとは、未開文明の出身だ」と推測されるくだりがあります。日本語「地球」を銀河連邦標準語にどう訳したのかなどツッコミはあると思いますが、それはともかく。
我々の世界でも国名について同様の状況はあるはずで、その国での意味と発音を尊重して翻訳しているように思います。「FWO」では話の面白さを優先させて、母星の呼称から文明度合いを推し量るというエピソードにしました。
もっとも今では、第26話「在りし日々」の訛り言葉もそうでしたが、異言語世界を舞台にした話で「言葉」にまつわるエピソードを扱うのは、筋が悪いように感じています。
【第31話「大妖精」を書いてみました】
【ショウの行末】
第31話は、本編の最終話となります。翔一はヒロインら異空間の住人たちに囲まれて、ショウの行末を超常の力でごまかすことができなくなって、焦ることになります。これは作者も同様。最終話を書き始めた時点で、どのように決着を付けさせるのかを、決めていませんでした。
しかし筆はすんなり進みます。この状態で各登場人物がどういう行動を取るのか、簡単に「予想」できました。
あと、話の中で、ある大怪獣の子どもたちの将来のエピソードを加えたのですが、そうするともう一匹の別の大怪獣の子どもの将来についても触れておきたくなりました。そうして第30話の後半含めて、ちょっと下品になりましたがエピソードを追加し、ガールフレンドの登場をほのめかしておきました。
私は物語の後日談が好きなので、この「FWO」でも少しやってみた、というところです。
【ラストシーンのために人物設定を変更しました】
最後にショウは宇宙人プレイヤー姉弟のリアルの姿を目にし、笑顔で終わります。最初にこのエンディングシーンを書き終えたとき、ショウが最後に笑顔になるには説得力が弱いなと感じました。いくら最後の別れとはいえ、ゲーム遊びに付き合わされていたことを知ったあとで、心底から笑えるようにはならない気がしました。
そこで、一旦一通り書き終えたこの時点で、プレイヤー姉弟の年齢を変更することにしました。それまで姉弟はショウと同年代として書いてきたのですが、小学校高学年相当にまで引き下げることにしたのです。2人の初登場は第6話、そこまでさかのぼって、姉弟や関係者のセリフや行動を見直していきます。もともと姉のほうは精神年齢が低かったので、あまり修正するところがなかったのには苦笑い。弟のほうも超先進文明の教育を受けている子どもだと見れば、それほど修正を要しませんでした。もっとも最初から2人を子どもだとしていれば、各場面で取らせる行動は別のものになっていたでしょう。その点は、さすがに取り返しはつきませんでした。
ともかくこうしてラストシーンは、文章の巧拙は別にして、作者としては満足のいくものに仕上げることができました。
6月に着手したこの「FWO」、その後も物語後半を中心に推敲を重ね、12月を迎えます。
次回は投稿編です。




