05.名前の付け方について吹っ切れました、ほか(6話)
【第6話「姉弟」を書いてみました】
【「FWO」のエッセンスが詰まった回です】
この回で「大怪獣」と「宇宙人プレイヤー姉弟」が登場し、「FWO」の主要な要素が出揃います。この第6話をお読みいただいてつまらないと感じられたら、この作品はお好みに合わないと判断していただいて構わないくらい、文章の巧拙は別にして、物語のエッセンスが含まれている回になっています。
【音速突破の表現に苦労しました】
第6話の冒頭から、空の大怪獣が急降下攻撃で宇宙人プレイヤー姉弟を襲います。大怪獣は海、空の順に登場させる予定だったのですが、ショウと姉弟を引き合わせるために、空の大怪獣に順番を繰り上げて登場してもらいました。そしてこの空の大怪獣は、急降下の際に音速を突破します。別に突破しなくても物語上支障はないのですが、大怪獣の凄さを示す分かりやすい演出として、音速超えをさせようと思いました。
さすがに「空の大怪獣は急降下をしかけ、その速さは音速を突破する!」などと書くのは芸がなく、その表現を工夫したくなります。でも音速突破すると何が起こるのか、それとも何も起こらないのか、知識がありません。ネットで動画など調べてもこれはという情報は見つかりませんでしたが、霧が生じる見栄えの良い現象があったので、それを元に文字に起こしてみました。結果でき上がったのは50文字の文章、これだけを書くのに小1時間を費やしました。
なお大怪獣は魔法を併用して音速を突破しているという設定なのですが、この説明については話の中に挟み込むことができませんでした。
【説得力に欠ける展開をカバーしてみました】
ショウはこの大怪獣との戦いに途中から参戦するのですが、第5話までの展開から考えるとやや現実味の欠ける行動になっていました。つい数日前に野獣を怖がっていたので、音速を超えて飛ぶ大怪獣に向かっていくのは不自然でしょう。
ここでは、どこかで拾い読みしたテクニックを使ってみました。「説得力がない展開になったら、作中の人物にそのことを指摘させる」というテクです。こうすると不自然さが薄まる、でも多用するな、という話だったと思います。この点に留意してアニメなどを見てみると、確かによく使われていることに気づきます。
本作では妖精モールに、初戦が大怪獣とか無理がありすぎるだろうと、頭を抱えさせました。私は書いた当事者なので客観的な判断が難しいですが、説得力の弱い展開をカバーできたと思っています。
【異種姉弟を登場させました】
大怪獣と戦っているのは、ショウと旅を共にすることになる宇宙人プレイヤーたちです。この第6話執筆の段階で、このプレイヤーたちの設定に取り掛かりました。
まずパーティー上の役割は、以前仮決めした戦士系と魔法使い系の2人にします。次に種族。原生人側に様々なヒト種がいることにしたので、プレイヤー側もプレイ開始時に選べるという設定を設けました。戦士と魔法使いは異なる種族にします。そしてこの2人は、リアルでは姉弟であるとしました。この設定は物語に大きく影響することになります。
なぜ姉弟にしたのか? 宇宙人たちは月からロボットを遠隔操作しているのですが、かなり親しくないと、長期間、足並みをそろえてログイン・ログアウトすることは想定し難いでしょう。そこで2人は家族であることにしました。この点では親子でも良いことにはなりますが、ここでは「きょうだい」としました。次は性別をどう組み合わせるかですが、ショウが慎重な性格になりつつあったので、無鉄砲なボケ役の姉と理知的なツッコミ役の弟とし、ショウは弟と一緒にツッコミに回る、というのが収まりが良いように感じました。
そして更に、姉のほうを廃課金プレイヤーとしました。これはその方がいろいろなアイテムを登場させやすく、話を作りやすいからです。となると今度はその資金力の背景を考える必要が出てきますが、第6話執筆の時点では後回しにしました。
なおプレイヤーたちが月に居ることにしたのは、ショウとリアルに対面する機会を作れるようにするためです。技術的には数万光年離れていようとこのゲームを遊ぶことは可能なのですが、そのような回線はとても料金が高い、という設定にしています。
【戦いの結末をひねり出してみました】
大怪獣はとても強く、奇跡が起きようとも宇宙人プレイヤーたちには絶対に勝てない存在と設定しています。プロット上はこのような大怪獣と引き分けになることにしていたのですが、具体的にどう引き分けるのかは、決めていませんでした。
ショウの初陣なので、大激戦の上に引き分け、というわけにもいきません。作者的な保険としては、モールが超常の力を発揮して何とかするという展開があるのですが、これは極力使いたくありませんでした。
自分で用意した展開なのですが話の収め方に困ってしまい、ネットで何か無いかと調べたところ、トリモチに行き当たりました。なんとなくトリモチというものの存在は知っていましたが、現在は法律で鳥類の捕獲に使用するのは禁止されているようです。ちょっと白けそうな気もしましたが、ショウに魔法でトリモチを生成させて大怪獣の動きを拘束し引き分けになる、という決着にしました。場の雰囲気もシリアスは合わないので、コミカルなものにします。宇宙人プレイヤー姉弟はあくまでゲームとして戦っており、そうした事情とも合った展開にできたと思っています。
こうした戦闘シーンには小説の最後まで苦労することになります。曲がりなりにもMMORPGを題材にした作品なので、戦闘を避けることはできません。何らかの新ギミックを登場させたり、単純な勝ち負け以外の展開にさせたりするなどして、どの戦闘も単調にならないように腐心しました。
【大怪獣をペットにしてみました】
これも書き始めたときには、まったく構想していなかった展開なのですが。
先のコミカルな雰囲気づくりにヒロインも加わらせたのですが、その流れで、このヒロインなら、超常の力で大怪獣をペットにしたがるのではないのかなと思いました。
物語終盤にはペットになった大怪獣たちが議論を交わすようにすらなるのですが、この第6話を書いているときにはそのような展開になるとは思ってもいませんでした。
【名前の付け方について吹っ切れました】
登場人物や地名の命名には悩み、第6話を書いている頃は、頻繁に付けては変えてを繰り返していました。別宇宙の惑星上の名前なので、地球に無い、でも、馴染める名前にしたいと思っていました。
そんなときに、ふと、「ユーラシア」大陸の名前の由来が気になり。調べてみると、「ヨーロッパ」と「アジア」の混成語のようです。「これだ!」と思いました。
それから名前は全て、実在する名詞を合成するか、加工するかして、付けていきました。それまで試行錯誤していたのが嘘のように、決められるようになりました。例えば「大きな港町」なら「Large harber」からの「ラジハバ市」、「キツツキ」のような鳥なら1文字ずらしての「クテテカ」、「耳がうさぎのようなヒト種」なら「ウサミー種」などなど。
聞いたことのない名前でありながら、耳馴染みのよい名前を揃えることができたと思っています。
【基本的な描写が抜けていました】
以下は、この第6話の体験談を書いていて気づいたことです。
改めて第6話を読み返してみると、空の大怪獣の外見をほとんど説明していないことに気づきました。飛ぶ鳥であることしか分かりません。大きさすら記述していない。大怪獣の名前を「ワタカシ」としたことで、ワシかタカのような鳥であることは分かるだろうと、潜在的に考えてしまったためのように思います。
宇宙人プレイヤー姉弟、特に姉の描写も、不足気味です。年齢がショウと同じかやや上のように見えることは、書いておいたほうが良さそう。
次作を書くなら、執筆中にこうした改善点に気づくことができるようなチェックリストを用意したいところです。




