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06.世界構築に有用な資料に遭遇しました

【世界観の枠組みのようなものを探していました】

 始めの頃は物語の執筆と並行して、世界観の設定も詰めていました。そんな中で漠然と探していたのが、世界観の枠組みのようなものです。設定が不足していると気づく分野は考えていけば良いのですが、そもそも考える必要があるのに見落としている分野がありそうな気がして、不安だったのです。そしてようやく世界観を網羅的に検討するのに役立ちそうな資料を見つけました。それがPatricia C. Wrede(2009)「Fantasy Worldbuilding Questions」です。

 直訳すると「ファンタジー世界構築質問集」になるのでしょうか。英語ですが、アメリカSFファンタジー作家協会(SFWA)のWebサイトに全文が掲載されています。先のタイトルをコピペして検索すれば、見つけられると思います。この質問集には7つの大項目、44の小項目に分類された、多数の質問が掲載されています。私は英語は不得手なのですが、大項目、小項目は訳して、気になる項目の質問については機械翻訳の力を借りながら読み取っていきました。



【厳しい質問に音を上げました】

 しかし良いことばかりではありません。この資料の質問は、かなり厳しいのです。「どうなっているのか?」と問うて来るだけにとどまらず、ときには「なぜそうなっているのか?」と詰め寄ってくるのです。例えば、魔術師の人数が限られているとしたら、それはどういう制限で、どういう理由によるものなのか、といった具合。

 この質問集自体は、各種設定を詰めたり膨らませたりするのに、とても役に立ちました。一方でこのような質問に何十と責め立てられていると、そのうち、「そんなこと、どうだって良いじゃないか!」と逆ギレしたくなってきます。

 ……そうしてこの資料の利用は、考察が足りていない分野を見つけたり、面白いと思った項目をエピソードのネタにする程度に留まるようになりました。



【複雑な設定を単純にしました】

 こうして設定を補強したのですが、話を書く段階になってシンプルにしたものもあります。


 例えば言語。当初は次のように設定していました。

 宇宙人は母星語と、銀河連邦の共通言語を習得している。

 惑星に住む原生人側は、各国で言語が異なっている。

 宇宙人はフルダイブ装置により脳の思考を読み取られているので、原生人の各言語を時間差無く話すことができる。しかし聞くほうは原生人がある程度話しきるまで翻訳ができないので、時間差が生じる。


 そしてショウは宇宙人プレイヤーたちが聞くほうに時間差があることに気づき、それが戦闘中では致命傷になりかねないので、自分が銀河連邦共通言語を話せるようになろうとする、といったエピソードを用意していました。しかしこのような複雑な内容を作品内で説明するのは難しいし、物語が面白くなるようなものでもありません。結局、宇宙人たちはかなり昔からこの惑星に接触しており、全世界の原生人は銀河連邦共通言語を習得している、という設定にしました。

 世界構築質問集に答えるのも大変ですが、矛盾無く単純な設定を用意するのも難度が高いです。質問集の冒頭には「役に立つなら使って、そうでなければ止めて」と記載されています。妥協点を見極めることも重要そうです。



【設定することと作中で使うことは区別しました】

 設定を用意して、全く使っていないものもあります。代表的なのが親族関係。

 例えば商人。開戦直前なのに敵国に出かけて自国に戻ろうとしています。これは彼が国際商会一族の分家の出身なのにその才を見込まれ代表に就くことになり、その挨拶のために本家のいる敵国側に出向いていた、という設定にしています。

 例えばプレイヤー姉弟。月に長期滞在してゲームをしているのに、親が登場しません。この姉弟の属する宇宙人文明は婚姻制度がなく、気ままに雌雄が合意して性行為や体外受精で子を設ける、子は社会全体で育てる、父母が同一の姉弟は稀ではないが当たり前でもない、といった設定にしています。

 ですが親族関係、特に親子関係は人間関係の中でもその繋がりが重いので、作中に出すのは物語に深く関わる場合だけにしようと思いました。「FWO」の人間ドラマ的な要素は、「ショウと宇宙人姉弟」、「宇宙人の姉と弟」の2つに絞りたかったこともあり、その他の親族関係の話題には基本的に触れないようにしました。



【生かせない設定もありました】

 ショウは惑星の南半球に転移していることにしました。これが大失敗。北に向かうと暑くなることでショウに違和感を感じさせたり、国際商人が違和感を感じているショウの正体を怪しんだりするエピソードを考えていたのですが、宇宙人プレイヤーたちの登場を早めるために使わずじまい。一方すでに、地図、国名、都市名なども設定済みで、南北を逆にして北半球を舞台にするのも容易ではない。ただ南北の扱いに、筆者や、おそらく読者も混乱するだけの設定になってしまいました。

 これに懲りて、舞台である惑星の大きさ、地軸の傾きや回転方向、自転周期・公転周期は地球とほぼ同じ、時間や距離の単位もほぼ同じ、月の自転周期・公転周期は同じで月裏は常に見えない、という設定にしました。こういうところはご都合設定であっても、凝ったところで「FWO」では得るものは無いと判断しました。



【設定は難しいです】

 以上のように世界構築質問集などを用いて、様々な設定を用意したわけですが。

 緻密に考えて整合性が取れても、それが複雑だと使い難いです。作中に使うなら、ご都合設定になろうと、単純にしたほうが良いように思いました。

 また、一生懸命に構築した設定は、特にご都合設定だと思われたくない場合などは、披露したくなります。しかしそれが話の上で不要ならば、我慢すべきでしょう。

 整合性、単純性、必要性、……設定の構築と、読者に説明するか否かの取捨選択は、私には難しい作業でした。

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